強引なイベルメクチン推しで悪夢のディオバン事件を思い出してしまった。

世界中を混乱に陥れている感染症を予防する、あるいは治療する騒がれていたイベルメクチンという薬があります。

残念ながらイベルメクチンの効果に関しては論文のデータ捏造が指摘され現在では撤回されています。

イベルメクチンについて色々な情報に目を通したところ、本来の治療効果以外の効果を捏造した悪夢の黒歴史ディオバン事件を思い出してしまいました。

尾崎東京都医師会長のFacebook

ところで尾崎東京都医師会長は何故こんなにイベルメクチンに固執するんでしょうか?

高血圧治療以外の効果が捏造されたディオバン事件

血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」という物質を体内で作らないように働きかける選択的AT1受容体ブロッカーであるディオバンという高血圧の薬があります。このディオバンには暗い過去がありディオバン事件として医療関係者以外にも記憶があるのではないでしょうか?

ディオバン事件とは高血圧治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)に関わる 5 つの臨床研究論文不正事件をいう。その中でも 2009 年に論文化された京都ハート研究(KHS)は製薬会社元社員が 2014 年 6 月に論文作成に不正に関与したことで、薬事法違反疑いで逮捕され、裁判となった。

https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/h12.html

高血圧治療薬であるディオバンを服用していると心血管系の病気を発症するリスクが低くなるとの結果を伝えた論文のデータが捏造された事件です。

つまり、本来は高血圧の薬であるディオバンが他の病気にも効果がるということを示した論文のデータが操作されたものあったことが明るみになりました。

イベルメクチン(商品名ストロメクトール錠)は日本では腸管糞線虫症や疥癬に対して効果が認められている薬であり、他の感染症に効果があることは認められていません。

イベルメクチンという薬本来の効果以外の効果を求める風潮に、私はついついディオバン事件を思い出してしまったのです。

イベルメクチンの効果を報じた論文は捏造のため撤回

イベルメクチンが本来の目的以外の感染症に効果を有ることを伝えた論文はこれです。

撤回されたイベルメクチンの論文

しかし、この論文は査読されていないプレプリントと呼ばれるものであり、その後に撤回されたことが明らかになっています。

論文撤回

https://www.researchsquare.com/article/rs-100956/v3

EDITORIAL NOTEにかかれていることをグーグル翻訳すると

Research Square withdrew this preprint on 14 July, 2021 due to an expression of concern communicated directly to our staff. These concerns are now under formal investigation.(リサーチスクエアは、スタッフに直接伝えられた懸念の表明により、2021年7月14日にこのプレプリントを撤回しました。これらの懸念は現在正式に調査中です。)

DOI: 10.21203/rs.3.rs-100956/v3

この論文はイベルメクチンを投与すると回復が早まったことを伝えていたのですが、他の論文のコピペが多い、同一患者のデータの使い回し、イベルメクチンを投与していないグループのデータが改竄されているなど多数の問題点をNick Brown氏が2021年7月15日のブログ投稿で指摘したことよって撤回という処分になってしまいました。

さらにイベルメクチンは全く何の効果もないよ!と報じている海外のメディアさえあります。

イベルメクチンは何も効果なし

Los Angeles Times

イベルメクチンの研究結果は「何も効果が無いことを発見」と辛辣な見出しになっています。

イベルメクチンを製造している製薬会社が効果を否定

北里大学で特別栄誉教授の大村智博士がイベルメクチンの開発に貢献して、その栄誉をたたえてノーベル賞を受賞されたことは多くの人々が記憶していると思います。

大村博士はイベルメクチンが現在世界中で拡がっている感染症の治療に役立つとの思いからイベルメクチンの製造元である米国のメルクの日本法人であるMSDにも強く訴えかけていまます。しかし、MSDの回答は以下のようになっています。

  • 治療効果を示す科学的な根拠は示されていない
  • 臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない
  • 大半の臨床試験において安全性に関するデータが不足している

参照:MSDのウェブサイト(PDF)

さらにMSDは米国のFDAのサイトのページまで参考情報として併記しています。そのFDAのページには以下のようなことを伝えています。

  • イベルメクチンは抗ウイルス薬ではありません
  • 大量に服用すると深刻な副作用を起こす可能性があります
  • 動物向けのイベルメクチンを絶対に使用しないでください

参照:FDAのウェブサイト

利益がないからイベルメクチンの効果を認めない?

こんな記事を見かけました。

デイリー新潮「イベルメクチン」

メルクは大村先生の言葉を借りれば、イベルメクチンを世に出したくないのではないか。いまの社長になって功利主義に傾いたとの噂も聞くし、大村先生もメルクと縁を切りたいようなご様子でした

https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03201059/?all=1

デイリー新潮の記事ですから盛った表現の可能性もあるけどね。※この記事中で「功利主義」という言葉が使われていますが、明らかに間違いです。功利主義とは「幸福と利益を価値の標準、人生の主たる目的とする倫理思想。」とグーグル日本語辞書には書かれていまので「利益主義」あるいは「利己主義」と記者さんは混同しているようですね。

陰謀論まで飛び出しそうなイベルメクチンを巡るせめぎ合いです。

イベルメクチンに関しては厚労省は安易な服用を控えるように伝えています。

イベルメクチンの安易な服用に警告

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021022000375&g=soc

結論:興和の治験の結果を待ちましょう!

日本の研究者が開発の貢献したイベルメクチンが世界を恐怖とパニックに陥れている感染症に対して予防効果や治療効果があったら素晴らしいことだと素直に感じています。

多くの雑音にも動じなくイベルメクチンの治験を興和が開始しています。

イベルメクチンの臨床試験開始

https://digital.asahi.com/articles/ASP716D2CP71ULBJ002.html

記事によればイベルメクチンの治験は北里大学から興和に持ちかけられたとのこと。

個人的には興和の社長の英断に男気を感じてしまうのですが、治験前に東京都医師会長がヘンテコな推奨のしかたをしてしまうと治験にバイアスがかかったり、研究に携わった人たちにプレッシャーを掛けてしまいディオバンのようなことにならないかと心配でしかたがありません。

おまけ:尾崎東京都医師会長、これはマズいですよ

尾崎東京都医師会長のFacebook(2021年8月13日 17:19 )にこのようなやり取りがあります。

イベルメクチンを通販で見つけて購入しました。自衛が大事

それに対して尾崎東京都医師会長は次のように返信しています。

こう言うデータを見ると、かかってからではなく、予防的に一回服用しておく(用量の検討は必要ですが)のも、有効かもしれませんね。

東京都医師会長という立場の方がSNSでカジュアルにこんな回答をしてはさすがにマズいと思いますよ。

だってこの方は

1週間に1錠飲んでいます。これで感染予防が計れます。危険極まりないワクチンなど一切打ちません。

※一部省略

なんてこと言っているんのですから・・・。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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