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デング熱の予防ワクチンが開発された❗こんな時期に発表するから製薬会社陰謀説が巷にあふれるんです。追記あり

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今、日本で代々木公園発のデング熱の広がりが危惧されています。最初は感染者が3人と発表されましたが、その後感染者は増加して11都道府県の計48人に (9月3日時点)と報道されています。追記 9月4日時点で更にデング熱感染者は増えており、NHKによると59人となっていて感染拡大の方向とのことです。

デング熱に有効なワクチンが開発されて近々販売されるらしい

デング熱の感染者増え59人に NHKニュース

NHKのサイトより

死亡率は低いとされているデング熱感染ですが、高熱と痛みに苦しめられる、万が一子供が感染したら親としてはいても立ってもいられないような病気ですのでデング熱を予防するワクチンの開発がいくつかの製薬メーカーによって密かに行なわれていました。

そんな所にフランスのサノフィって製薬会社(世界第四位の巨大企業、もちろん日本にも有ります)が、デング熱に体するワクチンを開発して、2015年には発売するという発表がありました。ワクチンは巨大製薬会社の陰謀であるとか、エボラ出血熱はCIAが流行させているなんてあり得ない陰謀論を振りかざしている一派を散見することがありますけど、彼ら予防接種否定論者が鼻高々になるようなバッドタイミングなニュースです。

Sanofi_Dengue_Vaccine_Works_on_All_Four_Types_in_Study_-_Bloomberg

ブルームバーグの報道では御丁寧に東京でも感染者がでていることを記事として書かれています。

・代々木公園でのデング熱の感染経路を考察した関連エントリー
・当初、行政は代々木公園に行っていても、蚊は既に死んでいるだろうから心配ない、と声明していたことに疑問を呈した関連エントリー

デング熱ワクチンの開発の経緯

これまた陰謀論者が喜びそうなことなのですけど、今回のデング熱ワクチンの開発に伴って行なわれた臨床試験って中南米やカリブ周辺の子供21000人に対して行なわれた様子です。日本で子供に対して臨床試験を行なうことは倫理上の問題もあり、特殊ながんなどの生命を左右する病気にしか許されないことですし、当然先進国でも子供の人権を考えるとまずデング熱程度では倫理委員会が許可しないと思われます。

つまり、ワクチン否定派、ウイルスまき散らしは陰謀だ!論者は「子供を人体実験にして巨大製薬メーカーはワクチンを開発して、大儲けを狙っている」「東南アジアや中南米では世界の注目を集めないので、今回東京でデングウイルスをまき散らし、その直後にデング熱ワクチンの開発を発表した」なんて大騒ぎすることは火を見るより明らかです。

世界のデング熱感染状況とワクチンの予防接種の有効性

日本では70年ぶりとされるデング熱の国内感染者続出ですけど、中南米や東南アジアでは特殊な感染症ではなく、季節性インフルエンザ的にありふれた感染症なのです。しかし、開発途上国や医療機関が不足している国では日本のように対症療法もままならない状況ですからWHOは「子供たちにとって重症デング熱は、発熱、腹痛、持続的な嘔吐、出血および呼吸困難を特徴とし、潜在的に致命的な合併症である」としています。

WHO___Dengue
WHOより

今回サノフィが開発したデング熱に体する予防ワクチンは感染リスクを60%減少させ、入院のリスクを80%減少させると報告されていますので、子供達には福音となることは間違いありません。

反ワクチン派の方の気持ちも分らないではないのですが、予防接種としてデング熱ワクチンは有効のようです

日本でもインフルエンザワクチン予防接種否定論者がいますが、この方たちの主張の根拠となっている「前橋レポート」の統計学的な解釈の間違いは以前ブログで指摘しています(関連エントリー)。ワクチン推進論者の私でも、さすがに子宮頸がんワクチンは副作用の点で問題が全くないと言い切れません(関連エントリー)。

しかし、今回のサノフィが20年と言う歳月をかけて膨大な開発費用を費やしたデング熱ワクチンの販売計画発表は余りにもタイミングが悪すぎます。

日本ではデング熱ワクチンの予防接種より蚊に刺されない為の方法が重要視されるでしょう

今回の代々木公園が主な感染場所と考えられるデング熱は東南アジアで感染を媒介するネッタイシマカではなく、日本国内に常在するヒトスジシマカが原因と考えられています。ヒトスジシマカは気温の低下とともに死滅しますので、今回のデング熱騒動は時間と共に終息するはずです。しかし、デングウイルスを持った卵を子孫を残す為に今活動しているヒトスジシマカが産みつけていたとすると、来年の蚊のシーズンにもひょっとすると再びデング熱が流行する可能性が全くないとは言い切れません。というのもこれはあまり報道されていませんけど、

◎ヒトスジシマカの卵や幼虫からデングウイルスの遺伝子が検出された例

って厚生労働省の文章では報告されています(デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き )。一匹の蚊が今回40人近くの人を刺しまくった可能性は低いので(蚊は4−5回しか人の血を吸わないとされています)、ひょっとして次世代のデング熱ウイルス保有ヒトスジシマカが卵をコッソリ植えつけている可能性を全否定することはできません。

お役所が予防はまず蚊に刺されないこと、としてますので虫除けスプレーについての豆知識を知っておいてください。虫除け成分は「ディート (DEET) 」と呼ばれる化学物質の効果ですので、このディートを一番含む虫除けスプレーを使用することをお勧めします。私が調べた範囲で一番DEETが含まれていたものは「ムシペール」という池田模範堂の製品でした。

ムシペールps_-_Google_検索

もう既にドラッグストアでは品薄になっているかもしれませんけど、ご参考にしてください。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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