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代々木公園の蚊が今回のデング熱騒ぎの原因、そこで湧き出て来るデング熱の感染経路への素朴な疑問 追記あり

更新日:

デング熱は東南アジアやハワイでは一般的な感染症です。デング熱=重症化と考えるのは考えものです。

70年間ぶりに、日本にいる蚊が原因と考えられる発症者がでたために大きく取り上げられていると解釈してください(実は一昨年日本でデング熱に感染したというドイツ人女性がいたのですが、今回はそのことについてはあまり報道されていませんね。関連エントリー)。

まず、デング熱を発症した場合の死亡率

デング熱

感染経路を考えるとデング熱が一気に日本中に拡散して多数の犠牲者が出現するということは非常に考えにくいのです。ワクチンが無い、と騒いでいる人もいるようですが死に至る可能性が低い蚊が感染を拡げるウイルス性の感染症と考えて間違いありません。症状としては高熱・関節痛・頭痛、まれに皮膚に斑点ができます。

問題となるのは高熱でありデング熱に特異的に効果を発揮する薬がないために、治療は根治的ではなく対症療法ですからタミフル登場前のインフルエンザと同じように考えていただいて構いません。極稀にショックと出血傾向が出現して致死的な状態になることもありますが、日本は対症療法でも開発途上国と比べても対症療法も普及していますし、重篤な状態に陥っても世界的に高いレベルの治療を受けることが可能ですから

デング熱の死亡率は1%をかなり下回る

と考て間違いありません。もちろん一週間程度高熱に伴う苦痛に苦しめられるのですが、デング熱を死の病、死の感染症的に捉える必要性は全くありません。

代々木公園発のデング熱の感染経路として考えられる事

亜熱帯地域でデング熱ウイルスをまき散らしている蚊はネッタイシマカです。このネッタイシマカは日本では常在していない蚊なので、今回のデング熱騒ぎの原因がこのネッタイシマカであった場合は亜熱帯から飛んできた飛行機、或いは船舶、または輸送物に紛れ込んでいた可能性があります。しかし、日本に常在するヒトスジシマカもデングウイルスを媒介(まき散らす)する能力をもっていますので、デング熱に感染した人をこのヒトスジシマカがさして、他の人に刺した場合、デングウイルスを持った蚊によって複数の人がデング熱を発症する感染経路の可能性も否定できません。エボラ出血熱とは違って人から人へは直接感染は広がりません(関連エントリー)。代々木公園のデング熱の感染経路としては次の2つが考えられます。

海外から紛れ込んだネッタイシマカによってデングウイルスが日本で人をさして感染する

ネッタイシマカによって国内感染した場合、考えられるのは海外から交通手段または輸送物に紛れ込んでいたという仮定によって成り立ちますが、成田・羽田・東京近郊の港を出発点として代々木公園まで飛んでくる必要があります。種類によってかなり差がありますが、蚊の1日最大の飛行距離は1キロから5キロくらいとされていますので、成田と代々木公園の距離は直線距離で40キロ以上あるので、ネッタイシマカがドサクサに紛れて成田に到着したとしても代々木公園までたどり着く可能性は低いと考えられます。

羽田の場合は直線距離は短くなりますが、自力で飛んでくるには途中で栄養を補給する必要があるために経路に住んでいる人から血を頂きながら転々とやってきた可能性は否定はできませんけど、代々木公園を訪れた人以外で現時点では発症者がでていませんので、この経路も考えにくいのです。となると、代々木公園近隣に亜熱帯から荷物が届いてその中にネッタイシマカ(もちろんデングウイルスを持っていた)が運ばれてきて、感染者の3名を刺した、との可能性がでてきます。初期の感染経路はこれが一番可能性として高いと思われます。

しかし、国内でこれ以上デングウイルスの感染者が増えていくことが有れば次のような感染経路が考えられます。

デング熱に感染した人を日本にいるヒトスジシマカが刺して、その蚊が他の人を刺して感染が広がる

亜熱帯、東南アジアやハワイなどに旅行にいってデング熱に感染した人が日本に常在するヒトスジシマカによってたまたま刺されて血を吸われたとします。当然、そのヒトスジシマカはデングウイルスを体内に保持しながら、さらに生命を維持するために血を吸わなければなりませんので、他の人を刺します。するとデングウイルスがこの刺された人の体内に注入されることによって新たなデング熱患者さんがでてしまうという流れです。

デングウイルスに感染していても派手な症状が出ない人(不顕性感染)もパーセンテージは明確にはなっていませんが、思ったよりは多いと考えられていますので、自分では気づかないうちにヒトスジシマカに刺されて、他のひとに感染を拡大させている可能性もあります。ヒトスジシマカの行動範囲は50mから100mと専門家は考えていますので、今回代々木公園でデング熱に感染した3名が数日間に渡ってダンスの練習をしている間に刺された可能性が大きいので、

海外でデング熱になった人を刺したヒトスジシマカが代々木公園にいて、今回の感染者の集団を刺して三名が発症した

という感染経路が一番説得力があります。刺されたけど症状が出ていな不顕性感染の人がいるとしたら、その方から感染が拡大することを考慮するなら精密な血液検査であるPCR法による病原体遺伝子の検出などを行なう必要性がありますが、今得られる情報としてはそこまで施行されているかは判明していません。

デング熱の今後、流行する可能性はあるのか?

一番気になる点は今後日本でもデング熱は一般化するのか?ということです。旅行先でデング熱に感染した人は思いのほか多く、このように報告されています。

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デング熱の流行地域 厚生省検疫所より

デング熱を日本国内で流行させない方法は二つです。

  1. 海外でデング熱に感染した人がデングウイルスを媒介するヒトスジシマカに刺されないようにする
  2. とにかく蚊に刺されないようにする

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これが一番ですかね?

なんで、こんなにデング熱の件について、シツコク書いたかというと、私が非常に蚊に刺されやすい体質であり、夏の夜に庭先で花火などしようものなら、蚊が私に集中する為に他の人は蚊取り線香を必要としないで快適に過ごすことが出来るくらいなのです。

で蚊の餌食として人身御供の役割を果たすゴキブリホイホイならぬ「カトリホイホイ」と友人・家族には重宝がられています。血液型で性格を占うことは全く科学的・医学的に否定されています(関連エントリー)。一部の医学論文で血液型がO型の人が刺されやすいと報告されていますが、私はO型ではないんですけどね 泣。

追記 フランスの製薬会社サノフィがデング熱のワクチンの開発に成功した模様です(関連エントリー)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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