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無症状感染者がいるから定期的な検査が必要とする主張は正しいのか?

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緊急事態宣言が解除され世間の新型コロナ感染症の話題は夏のマスクによる熱中症対策や第2波、夜の街対策になりつつありますが依然として、PCR検査・抗体検査を煽る主張も一定の支持を得ているようです。

ですが、インフルエンザの場合、無症状でもワクチンを打っておくのと、新型コロナ感染症で無症状で検査しておくのは意味が全然違います。

新型コロナ感染症には、まだワクチンもなければ治療薬もありません。定期的な検査の意味について少し考えてみましょう。

乱暴な議論がまかり通るワイドショーの弊害

新型コロナ感染症関連でワイドショーにおけるコメンテーターの発言が物議を醸しているのが日常茶飯事となってしまっている2020年の日本。

つい先日、あるワイドショー系モーニングショーの音声を通勤途中で聴いていたら、「無症状感染者もいるので、感染拡大を抑えるためには定期的にPCRをする必要がありますっ❗」っと言い切るコメンテーター(女性であり、10チャンネルだったので、たぶんあのなんちゃら大学の医師では無い自称感染症の専門家の教授)の景気のよい発言が聞こえてきました。視聴者の不安を煽るだけ煽り、解決策としてPCR検査を薦めるという健康食品のCMまんまの手法ですね。それはさておき確かに無症状感染者の件は問題になっています。

ワシントンポストの記事

無症状感染者に関してはあまり大きな問題ではないと、当初考えていたWHOも、無症状感染者についての判断は複雑であると考えを変えていることが報じられています。

武漢では全市民1100万人を対象にPCR検査をしたけど、その結果は⋯

今回の新型コロナ感染症感染騒動のそもそもの始まりと考えられている中国・武漢市では全市民1100万人を対象にPCR検査が行われています。

PCR検査を990万人に施行しての途中経過で無症状であるのに検査では陽性と判定された、無症状感染者は300人だったそうです。

画像

ニューズウィーク日本版 中国・武漢市、新型コロナ感染症無症状感染300人確認 全市民対象の検査で(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/300-10.php)より

無症状感染者が第三者に知らず識らずのうちに感染させてしまうことが問題となっています。

でも本当に無症状感染者は感染源となりうるのでしょうか?

さらっと「無症状感染者が感染を広めるリスクはないよ」と中国当局

症状が出ていない、自分が感染していることに気が付かない、そのような無症状感染者が次から次と第三者に感染を広げてしまう、これは想像するとかなり怖いです。

前傾のニューズウィークでは次ののように述べています。

当局は、無症状だった感染者のマスク、歯ブラシ、携帯電話などの所有物のほか、こうした人たちが触れたドアノブやエレベーターのボタンなどからウイルスは検出されず、無症状感染者が感染を広めるリスクはないとしている。

中国・武漢市、新型コロナ感染症無症状感染300人確認

あれあれっ、無症状感染者による第三者への感染拡大リスクに関して中国の研究者が論文にしていたんじゃなかったっけ?

無症状感染者の対策、これは新型コロナ感染症対策の要かも?

新型コロナ感染症の感染拡大の一つの原因として無症状感染者による第三者への感染が現時点では考えられています。

例えば「Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of へんてこな感染症」(JAMA. 2020;323 (14) :1406-1407.)によれば、武漢の20歳の女性が他の都市に住む家族5人に会いに行ったところ全家族がその後になって発熱や呼吸器症状が出て、5人全員が新型コロナ感染症であると確定診断されています。武漢の20歳の女性は当初PCR検査では陰性判定されていました。

こんな論文もあります。

「ヘンテコなウイルス Viral Load in Upper Respiratory Specimens of Infected Patients」(N Engl J Med 2020; 382:1177-1179)では広東省の症例を紹介しています。

新型コロナ感染症濃厚接触者18人に対してPCR検査を行いました。そのうち1人は無症状であったにもかかわらず、検出された新型コロナ量は症状のあった他の17人と同等だったとのことです。

以上の2つの論文を根拠として、新型コロナ感染症は無症状感染者であっても第三者へ感染をうつしてしまう可能性がある、と考えられるようになっています。

上記の論文はかなり信頼性の高い質の高い医学専門誌に掲載されているものであるのに、今回の武漢全市民を対象としたPCR検査に関しては何故か、「無症状感染者が感染を広めるリスクはない」と中国当局と。

無症状感染者のチェック、これって無理じゃないの?

話はワイドショー系モーニングショーの発言に戻ります。

新型コロナ感染症感染と診断された人にうつされた可能性のある人は症状があろうがなかろうが濃厚接触者と考えられ、PCR検査を受けるかあるいは自宅でしばらくの間は様子を見るように指示されるのが一般的な流れでした。

そのような対策が取られていたのは、クラスターの確認であり、クラスター潰しのためです。

岡田晴恵さん

ナビの画像で失礼します。本日は抗体検査についてヘンテコな意見を述べていた模様です(詳細は不明)。

一方で私が耳にしたワイドショーのコメンテーターの発言は無症状感染者のチェックが新型コロナ感染症感染の第二波を抑えるためのポイントであり、「無症状感染者が感染拡大をしているとの論文も出ました」とあたかも新しい論文がでたかのように伝えていました。

無症状感染者による感染拡大を報じた前掲の医学論文は2020年2月と同年3月に公開されています。まあ、その後さらに無症状感染者関連の論文が出ている可能性もあるでしょうけど、ニューズウィークで報じられた「無症状感染者は感染拡大させるリスクは無いよ」発言はどのように捉えているのか、かなり気になります。

無症状感染者を見つけるために定期的にPCR検査をするのは無駄だし、意味ないと考えます

豪快な中国武漢の全市民PCR検査、1100万人中990万人の検査が終了した時点で新型コロナ感染症感染患者と判断されたのは、たったの300人❗

感染陽性率は0.003%、約3万人に1人です❗

モーニングショーの話題は夜の街における新型コロナ感染症対策であったことが後日確認できています。

例えば今日PCR検査をしたとします。翌日に出た結果は陰性でした。でも、検査結果が出たその日に新型コロナに感染してしまう可能性もありますよね。

無症状感染者の取り扱いに関してはまだまだ議論されて、明確な対処方法の答えがでていません。

効果不明なアビガンをイチオシだった某モーニングショーのコメンテーターもいましたね。

アビガン、アビガンと有効性が明確になっていない薬を押しまくるモーニングショー。

アビガン、アビガンと有効性が明確になっていない薬を押しまくるモーニングショー。

抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)が新型コロナウイルス治療薬として期待できるとメディアを賑わせていますが、懐疑的な見方をする専門家も多数です。午前中のワイドショーではぶっちぎりの視聴率を誇る番組におけるアビガン推しに対して、医師として疑問に思う点をあげておきますね。

無症状感染者を見つけるために「定期的にPCR検査をっ❗」って強く語っていた某大学教授はどのような間隔でPCR検査を行えば新型コロナ感染症の感染拡大を防ぐことが可能なのか、具体的な数字を教えていただけると幸いに存じます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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