fbpx

東アジア諸国は新型コロナ感染症に感染しにくく、死亡者数が少ない理由。

更新日:

新型コロナが世界中に拡散して、約半年が経過します。世界の国々が多種多様の対策を施しています。結果的に感染者数・重症患者数・死亡者数に大きな差がでてしまっていることはご存知だと思います。

なぜか理由は明確になってはいないけど、なんとなく傾向として掴めているのが、東アジア圏内の国々は欧米各国と比較して、感染拡大も抑え込めるているし、死亡者数も少ない、では無いでしょうか?

その理由について、様々な説が唱えられていますが、ひとつずつ考察していきます。

今わかっていることから日本をはじめ東アジア諸国が新型コロナ感染症に強い理由を予想してみた。

日本を始め東アジアの各国の新型コロナ感染症感染状況が自国の状況と比較して「東アジア諸国の新型コロナ感染症対策を見習え」「日本って凄い」との風潮が無くは無いようです。

現時点でわかっていることを踏まえて、今後の新しい生活様式をどのように日本は工夫していき、第二波・第三波に備えていくべきかを考えてみました。

なお、私は感染症の専門家ではないし、疫学の専門家でもないので、誰でも再検証が可能であるデータを利用します。

ストップCOVID-19ジャパン

3月下旬から4月中旬は真っ赤に色つけられた都道府県が多かったこの新型コロナ感染状況も現在では落ち着いています。

新型コロナ感染症、感染者数・死亡者数の違いの要因はこれ

他にも欧米各国と比較して東アジア諸国が新型コロナ感染症対策として、現時点で良好な結果を得ていると評価されているポイントは5つだと考えました。

医療環境の違い

国の対策の違い

もともとの免疫状態の違い

人種の違い

習慣の違い

東アジア諸国に分類されていても、感染者数や死亡者数がhttps://www.worldometers.info/によって明らかになっていない国は除外しました。

画像
上記は2020年6月8日付けのworldometersの数字

日本がずば抜けて新型コロナ感染症感染拡大を抑え込んでいる、とは言い難いような気がします。某国は感染者数も死亡者数も正確に報告していない❗とのご意見もあるでしょう、でもそれでは話が進まないので。

人口100万人あたりの死亡者数が一番少ないのはミャンマー、次が台湾、その次がタイです。

上記の国々のなかで日本はインドネシアと同じく7人であり、東アジア諸国中で優れた結果であるとは言い難いですね。

東アジアの国々はなぜ世界的に見て、特に欧米諸国と比較して感染者数も死亡者数も100万人あたりの死亡者数も少ないのか、果たして先程仮定した5つの理由のどれが新型コロナ感染症を抑え込んだポイントであるかを明らかにしたいと思います。

医療環境の違いが新型コロナ感染症対策のポイントであるか?

国民を新型コロナ感染症感染で死なせないか、の指標を100万人あたりの死亡者数と仮定して場合、100万人あたりの死亡者数はその国の医療環境の充実度を予想する一つの目安だと考えられます。

私が訪れたことのある国のなかでシンガポールの医療体制は眼を見張るものがありました。また、意外と思われるかもしれませんが、タイの医療体制も優れています。

圧倒的に100万人あたりの死亡者数が少ないミャンマーの医療体制について非常に高度である、国民が誰でも気軽に受診できる体制になっている、との話は聞いたことがないです。

画像

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_Myanmar.pdfより

ミャンマーの医師数は35,792人であり、人口を5371万とすると100万人あたりの医師数は665人。

日本の医師数は319480人であり、日本の人口を1.265億人で計算すると100万に当たり2525人。(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/kekka_1.pdf)

患者さん一人に対して、治療に携われる医師の数はミャンマーは日本の4分の1程度です。医療設備が日本よりミャンマーが優れていたら、少ない医師で抜群の救命体制が取れるとは思います。でも、ミャンマーの医療設備が日本より充実していることを示すデータは見当たりません。

ちなみに米国は人口あたりの医師数は日本と大差が有りません 

画像

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_comparison_basicdate_JUE.pdfより

人口あたりの医師数を指標として医療環境の良し悪しを判断すると、新型コロナ感染症の死亡者数に大きな影響をあたえるとの考え方はハズレです。

前掲のデータを疑うことをしないとのルール下で、考えを進める場合、医療制度の違いは死亡者数に大きな利点とはなっていないと判断できます。

結論:医療環境の良し悪しは死亡者数に影響を及ぼしているとは言い切れない

国の対策の違いが新型コロナ感染症抑え込みの秘訣なのか?

日本の場合、諸外国と比較して圧倒的に検査数が少ない、と批判をガンガン受けました。

東アジア諸国の検査数の詳細を把握することは出来ません。しかし、上記の元データの新型コロナ感染症を診断に際しての検査数は知ることができます。PCR検査は最終的な新型コロナ感染症の確定診断に世界中で使用されています。

総検査数を人口で割れば、積極的に検査をしているのか、いないのかの目安にはなります。

画像

日本は検査が少ない❗と国内からも強い批判がありました。確かに少ないように思えますが、東アジアの他国と比較して極端に少ないとは言い切れない数字なんじゃないでしょうか?

もう一度繰り返します。人口100万人あたりの死亡者数が少ない東アジアの国はミャンマー、台湾、タイの順番でした。検査数と100万人あたりの死亡者数はざっと見た限りでは関連性は弱そうです。

検査数は新型コロナ感染症の死亡者数には大きな影響は与えていないようですね。

検査数が多ければ死亡者数が減る、との考え方は死者数の違いに決定的な影響していないようです。

習慣の違いは新型コロナ感染症の感染状況に影響するか

東アジアの生活習慣で欧米諸国と明らかに違う点として、特に日本人の挨拶、入浴、土足などが言われています。

挨拶に関しては欧米諸国と比べて握手をする習慣は私が知る限りでは東アジア諸国では一般的ではないです。さらにハグに関しては、東アジア人同士がハグしている姿ってあまり見かけない気もします。

東アジアのどの国が家に入る時に靴を脱ぐか、これの信頼たる情報は確認できませんでした。各国を訪問したことがあっても、一般家庭の普通の生活に触れることはホームステイや実際にその国に住まないと知ることは不可能です。

家の中で靴を脱ぐか、あるいは靴を履いたまま土足で家の中に入るかの情報は各国の知人友人や住んだことのある人に尋ねても回答はマチマチ。そこでウィキに頼ることにしました。するとその回答は

アジア全体では、インド、タイ、韓国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ラオス、カンボジア、パキスタン、ミャンマー、ブータン、バングラデシュ、カザフスタン、中国など多くの国々で靴を脱ぐ習慣が見られる。

Wikipedia「靴を脱ぐ習慣」

私が聞き取り調査した回答は以下でした。

家に入る時に靴を脱ぐ国

日本・韓国・台湾・インドネシア・マレーシア・タイ

家に入る時に靴を脱がない国

フィリピン

どっちとも判別がつかない

タイ・シンガポール・ミャンマー

仏教国はお寺に入る時は靴を脱ぐことが習慣化されていると説明しているサイトもありました。でも日本って仏教国だったっけ?

そうなると土足ではない生活習慣が新型コロナ感染症の感染拡大や死亡者数に影響しているのでしょうか?これってかなり微妙じゃないのかなあ⋯。

でもこの生活習慣の違いって一つの国の中でも大きく違っていますので、これが決め手だ❗ってことにはならなそうですね。

人種の違いが大きく影響している?

人種による違いは米国ではクローズアップされています。

近年特に多様性に寛容となったとされる日本ではあっても、国民全体から見回してみると古来の日本人が圧倒的な割合を占めています。

画像

画像

CIA 東南アジア諸国の民族構成(http://honkawa2.sakura.ne.jp/8130.html)。

CIAのデータってちょっと怖い気がします。

圧倒的に死亡者も感染者も100万人あたりの死亡者数も少ないミャンマーは68%がビルマ人です。タイは75%がタイ人。

インドネシアやフィリピンは過半数が同一人種。

多民族国家の一つであるシンガポールは中華系がおよそ74%、マレー系が13%、インド系が9%です。外国人もたくさん住んでいて、人口の約3割が外国人です。

人種との分類の仕方にはかなり多くの問題を含みます(詳細な説明は省略)。

東アジアは新型コロナ感染症の犠牲者が少ないことの説明で人種による差である、との説明に対する信憑性の判断は保留とします。

もともとの免疫状態の違いが大きく影響している

私の個人的見解として、この考え方はかなり強く影響されています。免疫の仕組みは語りだしたら7日は必要となりますし、私自身も医学生に毛が生えた程度の知識と理解しか無いために、軽々しい発言は控えます。

BCGの接種状況

画像

厚生労働省「海外のBCG接種の状況」(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000110057.pdf)

BCGを受けていると新型コロナ感染症感染が少ない、重症化が少ない、死亡者が少ないことを強く主張している論文が見受けられます。しかし、「世界におけるBCG接種の状況」(「結核/75 巻 (2000) 1 号/」https://doi.org/10.11400/kekkaku1923.75.1)によれば、タイのBCG接種率は75%で他の東アジア諸国の接種率より低いことが報告されています。タイの100万人あたりの新型コロナ感染症による死亡者数は今回対象とした国の中で3番目に少ないのです。

欧米諸国と比較した場合、圧倒的にBCG接種率が高い東アジアの国々ですけど、東アジアの各国を比較した場合、BCG接種率にはばらつきがあります。BCGの接種が新型コロナ感染症感染被害を少なくしていると結論するにはまだ早すぎると考える医学者も少なくはありません。

●交差免疫

似たような抗原(今回は新型コロナ)に対して、他の抗原に感作されて産生された抗体が反応して免疫性を示すことと解釈されています。しかし、この仕組を明確にした信頼度の高い研究論文はまだ登場していません。

●自然免疫

そもそもそこの国に在住している、数代前から住み着いている人間が意識して備えた免疫と意識しないで備わった免疫システムのなんらかが大きく影響しているのではないか、と考えられるからです。

ヒト白血球型抗原(HLA、Human Leukocyte Antigen)が新型コロナ感染症感染に対して、なんらかの働きをしているのではないか、との予想があります(https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00005.html)。これも結果がでるにはまだ時間がかかります。

東アジア諸国は新型コロナ感染症の被害が少ない、その理由は⋯

結果的に東アジア諸国では新型コロナ感染症の感染は欧米諸国と比較して少ないし、死亡者数も少ないことは様々な角度から検証して事実であると言い切ります。

じゃあ、どうして東アジア諸国は新型コロナ感染症に対して強い、抵抗力がある、被害が少ないのか、その理由は 日本を含む東アジア諸国の新型コロナ感染症に対する結果が良好である理由は不明です❗ と現時点では言い切ります。

今回の新型コロナ感染症パニックでは真偽不明な情報が災害時に出回るデマと同じ様にネット上に溢れました。

例えば、新型コロナ感染予防に関する科学的・医学的に効果あるはずのないものも多数混じっていました。

さらに、治療方法としてこれまた医学的に効果がありえない方法もどこから湧き出てきたの発生源不明的に拡散しました。

そのうえ、治療薬として正しい医学的検証がまだ途中であるものが、医師や医療専門家によって、新型コロナ治療効果があることは既に証明されているかのような取り上げられ方もされました。

新型コロナの治療方法が確立されても、何年か先、何十年か先にはさらなる未知のウイルスが人類に襲いかかります。

その時も人類は新型コロナ騒動で学んだことを学習して正しい知識が共有されるのでしょうか?

もう一度繰り返します、現時点でなぜ新型コロナの感染者が東アジアは少なく死亡者も少ないのか、理由はまだまだ明確になってはいません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック