ブラジャーと乳がんの関係「ブラをすると乳がんになりやすい」は都市伝説の可能性が大❗

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女性を苦しめる乳がんですが、残念ながら日本でも年々増加する傾向にあります。早期発見・早期治療に関して近藤誠氏の独特な、というか極論が世間を賑わしています。

実は以前から「乳がんとブラジャー」の間に強い関係があるのではないか、という話がありました。

ブラジャーをすると乳がんになりやすい?

この説の根拠とされているのはブラジャーを着用することによって女性の胸部から排泄される汗などの分泌物が抑えられるので、乳がんのリスクが高まるという理屈です。

ブラジャーの着用と乳がん発生のリスクは関連が無い

何とはなしに都市伝説的なこの話を米国の研究者が綿密に検討した結果ブラジャーの着用と乳がん発生のリスクは関連が無いという結論がでました。

数字で見る乳がん–TBSピンクリボンプロジェクト

http://www.tbs.co.jp/pink-ribbon/

乳がんの罹患率は日本では18人に1人、米国では8人に1人です。日本でも早期発見の為に乳がんが発見される方は年々増えています。しかし、発症の急上昇カーブと比較して死亡者の上昇カーブは緩やかですから、早期発見・治療方法・手術成績の向上が貢献していることは間違いないのです。

近藤氏の主張は治療の必要がないガンを見つけてしまうがん検診の無意味さ、治療しても生存する率は上昇するわけは無く、逆に医師に殺されている、という過激で極端な主張となっています。 (関連エントリー 「医者に殺されない47の心得」のガイドブック⋯出てきました変なデータ

ブラジャーと乳がんリスク発生をどのようにして検討したか?

ある原因と病気の発生リスクを検討する学問を疫学と呼びます。医学の場合というか、人間を対象にした場合、遺伝的素因・生活習慣・社会環境などの影響を与える要素(因子と呼びます)が多すぎる為に、複雑な解析があり物理学者や化学を先行する理系の人からは「医学って科学?」的な意見もでています。

それらの複雑な因子を出来るだけ排除する方法として、今回の乳がんとブラジャーの関係を調査した時に使用された方法が「症例対照研究」という方法です。乳がんになってしまった方がブラジャーを着用していたか、いなかったのか、と言う調査と乳がんになっていない人がブラジャーをしていていたか、いなかったのか、の両者を比べて乳がんの発生リスクとブラジャーの着用の関連性を調べたものです。「Bra Wearing Not Associated with Breast Cancer Risk: A Population-Based Case–Control Study」とうタイトルでCancer Epidemiol Biomarkers Prev(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014 Oct;23 (10) :2181-5. )に掲載されています。この論文はシアトルに住む55才から74才の閉経後の女性を対象にしました。

  • 乳がんの人は590人
  • 乳がんでない人496人

この両者について、ブラジャーを着用していたか、着用していなかったか、を調べました。その結果として

ブラジャー着用の有無は乳がんの発生と関連性はなかった

となったのです。>

妊娠の有無はもちろんのこと、着用開始年齢やブラジャーの種類であるアンダーワイヤーが使用されていたか、いなかったか、までを詳細に調べた結果です。

ブラジャーをすると乳がんになりやすい、って誰が言い出したんだろう

日本語でブラジャーと乳がんの発生リスクが高いと書かれているもはウェブ上ではこんな不思議な文章を見つけました。

1日24時間を自分のブラジャーを着ていた女性は、乳癌発症の4の確率で(彼らの研究では、n個のがんグループの= 2056と標準的なグループのn = 2674)のうち3つを持っていた。12以上の日あたりの時間ではなく、ベッドにブラジャーを着用していた女性は7リスクのうち1を持っていた。一日あたり12時間未満の彼らのブラジャーを着ていた女性は152リスクのうち1を持っていた。ブラジャーを着ていた女性は、ほとんどまたはまったく乳がんを取得する168のチャンスのうち1がありませんでした。すべてで24着用時間としない間に全体的な差は125倍の差があった

嘘がまかり通る世の中 あなたは何を信じますか?

このサイト(※今は閉鎖された模様)はモチロン、ワクチンは全面否定ですし、巨大製薬メーカーの陰謀や東日本大震災の原因はアメリカの地震兵器によるものである、なんていわゆる「トンデモ系のオンパレード」的サイトでした。と学会の方、ぜひご参考にしてください、メチャ大量に都市伝説というより可愛げの無い悪意に満ちた世間を惑わす話が書かれています。といいうことはやはり「ブラジャーをすると乳がんになりやすい」って話は都市伝説、あるいはブラジャー業界を悪の巣窟と見なした偏った考えを持った人がまき散らした可能性があります。

ノーブラ至上主義のチョッとエロい心を持ったオッサンが黒幕

私は、多分、これが真実なんだと予想します(笑)。

もともとはSydney Ross Singer, Soma Grismaijer という人が「Dressed to Kill: The Link Between Breast Cancer and Bras」という一般書籍(決して論文ではありません)を出版したことで、ブラジャー害悪説が流布されたのです。

そういえば診察時に聴診器をあてるときブラジャーをしたままか、外してもらうか、という論議が医師の間でありました。

診察時ブラジャーを外させるか否かで医師間で大論争が勃発している話

診察時ブラジャーを外させるか否かで医師間で大論争が勃発している話

聴診器を当てるときにブラジャーを外してもらうか?もらわないか?問題が医師間で大論争になっています。ブラジャーは外してもらう派の考えは心臓や肺の正しい音を聴くためには邪魔である⋯はい、ブラジャー外す派の意見は医学上は正論です。ブラジャー着用したまま診察する派が約6割なのですが、この問題を掘り下げてみます。

なんで乳がんのことなんか調べだしたのか

えーっ、恥ずかしながら私はWWEというアメリカのプロレス系エンターテイメントの大ファンであり、主催しているWWEが先日から「Susan G. Komen for the Cure」というキャンペーンに協力していたからです。

WWE_pink_-_Google_検索

http://www.wwe.com

リングのロープもピンクでありシンボルマークのブローチを参加者全員が付けて、乳がん撲滅、乳がんと闘っている人を応援しよう、という主旨はまさに日本のピンクリボンキャンペーンと全く同じです(「スーザン・G・コーメン乳がん基金」が最初にピンクのリボンを協力者に配布したという話もあります)。

同時期にがんは治療するな!がん検診はするな!という極論を主張なさる近藤誠氏がテレビ出演をしたこともあり、WWEのスーパースターが乳がんサバイバーにメッセージを送ると、涙を流しながら感激する乳がんだった方の表情を見るにあたって「近藤先生、よくもそんないい加減なこと与太話を振りまいているな❗」と怒りに任せて乳がん関係の論文を読みまくって、今回の「乳がんはブラジャー着用とは関連無し」という論文にたどり着いたのです。

数字で考えるとわかりやすい、近藤誠氏の「がんもどき本」は間違いだらけ❗追記あり

数字で考えるとわかりやすい、近藤誠氏の「がんもどき本」は間違いだらけ❗追記あり

ガンは放置で有名な近藤誠医師。信奉者が多く本屋には近藤先生の著書がずらっと並んでいます。ですが、その著書に示されているデータにおかしな点が多く、同業の医師から批判されているのも事実。近藤本のおかしな点についてやさしく解説しますね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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