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接触確認アプリ「COCOA」、間違いなく感染者を診察したのに「接触は確認されませんでした」の謎。

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私は医師ですので、新型コロナ感染症陽性者との接触を避けることはできません。実際、へんてこな感染症と診断された患者さんを何名か診察しています。

ところが、厚生労働省が新型コロナの感染者と接触したことを通知するスマホアプリ「COCOA」をしっかりダウンロードしているのに、「陽性者と接触は確認されませんでした」となってしまいます。

多くの方にインストールしてもらいたい「COCOA」の仕組みと欠点と改良点を医師の立場から述べさせていただきます。

接触確認アプリ「COCOA」は本当に役立つか?

接触確認アプリ「COCOA」は知らないうちに新型コロナに感染したと診断された人と接触したことを教えてくれるものであり、へんてこな感染症の拡散を防ぐ目的で開発され、2020年6月16日に公開されました。

COCOA(たぶん、「ココア」と読むのかな)は「へんてこな感染症 Contact Confirming Application」の略であると厚生労働省は伝えています。

私の専門は泌尿器科ですが、地域密着型であるために内科も診ている関係上、風邪の延長線上として新型コロナ感染疑い患者さんの診察をしないわけにはいきません。いままでざっくり10名はいなけど5名はいるよレベルで、当院診察後に新型コロナ感染が確認された患者さんを経験しています。

あきらかにへんてこな感染症の患者さんを診察しているのに、なぜか私のCOCOAはこんな状態です。

毎朝COCOAアプリをチェック

毎朝チェックしているのに。「陽性者との接触は確認されませんでした」です。

COCOAの不備があるのでは、と思いつつ、まずはそもそものCOCOA仕組みをあらためて確認してみました。

COCOAは当初、自分の位置情報や行動範囲を国家権力に把握されてしまうのでは、と受け止めた人もいたようです。私が調べた範囲ではそのような国家的陰謀が進行中では無いので、できるだけ多くの方がCOCOAをインストールすることを医師の端くれとしてお願いしたいと存じます(「存じます」を多用する小池都知事の影響で一度使ってみたかった)。

COCOAの仕組みはこのようになっているんだ

COCOAの仕組みは次のようになっています。(厚生労働省の「新型コロナ接触確認アプリ(COCOA) へんてこな感染症 Contact-Confirming Application」を参考にしました)。

  • Bluetooth(ブルートゥース)をオンにしておく必要がある。
  • COCOAをインストールしているスマホと自分のスマホが近接した場合、その記録が自分のデバイス(スマホ)に残る。
  • 後日、感染陽性と診断された人のスマホと自分のスマホが近接していたら、接触した可能性と告げる通知が来る。
  • 接触した可能性が通知される条件は1メートル以内で15分以上接触した場合。
  • 感染陽性者は自分でCOCOAに感染したことを入力する必要がある。

IT系のプロだとこの仕組に関して、疑問点や改善点等がいくつも速攻で頭に浮かぶとは思います。その辺りは素人の私はCOCOAが感染拡大に役に立つのか、というそもそもの疑問はあっても、「これって本当に機能するの」的興味本位でCOCOAが公開されてすぐにインストールしました。

しかーし、私のCOCOAは的確に感染リスクを教えてはくれません。

COCOAで接触の可能性が通知されるには、高いハードルがあった

まず、COCOAが正しく機能するためには、お互いにアプリをインストールしておく必要があります。さらに、常にBluetoothをオンにしておく必要もあります(これって結構バッテリー消耗するんじゃないのかな)。

感染陽性と診断された人はご自分で保健所から伝えられた「処理番号」を入力する必要がでてきます(しかし、処理番号ってお役所らしい)。

この時点で陽性と診断されても脱落する人、結構いるんじゃないの?医療機関で陽性と診断されたら不安だろうし、入院あるいは隔離の準備でCOCOAに処理番号を入力することなんて忘れちゃう可能性もあります。症状が悪化したらスマホをいじる余裕なんて普通は無いはず。

個人情報の問題や法律上の問題によって、一見簡単そうに見えても実際に運用するためには面倒な接触確認アプリ「COCOA」とも言えそうです。

感染の可能性を伝えるための条件「1メートル以内で15分以上接触」ってどうよ?

たぶん、COCOAは実際に患者さんを診察する医師を利用者として想定していない可能性があります。繰り返すけど、私のCOCOAは「陽性者と接触は確認されませんでした」だもん。

そもそも他の疾患であっても、医師が患者さんの診察の際に「1メートル以内で15分以上接触」することって稀だと思うんだよね。

私は通常、このような状態で診療を行っています。

桑満おさむの診療室の様子

よっぽど込み入った話では無い限り、15分以上対面することはありません。そもそもお互いの距離は1メートル以上離れていますし(実測はしておりません)。さらに今の時期はお互いにマスクをしていますので、通常は濃厚接触者の定義からははずれるとも考えられます。

感染者が医療機関を受診していたら該当する医療機関に保健所から連絡があるはずですし、あってほしいです。さらにその感染者が待合室で他の患者さんへ感染させてしまう可能性に関しても保健所はかなり詳しい調査をするはずです。実は当院は以前、受診した患者さんが自宅に戻った後で麻しんを診断され、保健所の方と手分けして麻しんの患者さんがクリニックに滞在していた前後2時間に来院した患者さん全員に連絡をした経験があります。

当院では新型コロナ対策として、院内に入る前、全ての方に検温をお願いしています。さらに簡単な問診によってへんてこな感染症 が疑われる場合は院外のこの場所で簡単な医師が診察を行っています。

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万が一、感染が強く疑われる場合であっても看護師やスタッフへの指示や診療機器を持ってくるための移動によって1メートル以内で15分以上密着することは、今まではありません。さらに検査等の必要性がある時は裏口に患者さんを誘導して、別室で診察をします。

感染症専門病院や発熱外来を設置している医療機関勤務の医師の場合は、1メートル以内で15分以上密着すると考えられますが、COCOAによって接触の可能性をわざわざ教えてもらう必要は当然ありませんよね。

以上からCOCOAは職務上へんてこな感染症の患者さんに接触する可能性のある医師は対象者とはなっていないようですね。

ところで私のCOCOAが接触の可能性を通知してくれない原因が判明しました。

診察机にスマホ

そう言えば私は診察中は診察机にスマホは置きっぱですから。

と、COCOAってどうなのよ?的なネガティブな意見を述べてしまいましたが、実はアプリ自体は感染者との接触情報をしっかり記録はしているんですよ。それこそ感染者と一瞬すれ違ったりしたというデータも記録はされているんです。そのデータの扱い方・見せ方にちょっと問題ありな気がするのです。

※お願い

COCOAは8月14日時点で約1,320万件ダウンロードされ、陽性登録者数は累計で252人とのこと。このアプリが効果を発揮するためには、さらに利用者数が増える必要があります。最低でも国民の4割、できれば6割以上が理想といわれています。ぜひ、COCOAをスマホにインストールしてくださいね(そして、スマホは常に身につけるよーにお願いします笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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