ニセ看護師疑惑「めぐみ@生活習慣改善ナース」の発言をチェック❗

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ネット上では時々ニセ医者がもっともらしい医学アドバイスを行うことが問題になります。最近Twitterで見かける「めぐみ@生活習慣改善ナース」というアカウントが気になってしかたがありません。

もっともらしい医学風の発言を繰り返しツイートしているのですが、その内容はかなり激しくトンデモ医学の強い影響を受けているのです。生活改善ナースさんの発言内容がどれだけヘンテコでエビデンスの無いものであるかを医師である私がチェックしてみますね。

トンデモ発言を繰り返す、「めぐみ@生活習慣改善ナース」さん

私が尊敬する日本医科大学の腫瘍内科のプロ中のプロである勝俣範之先生も、このようなTweetをしています。

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https://twitter.com/Katsumata_Nori/status/1311456048025198592より

さらに私が一方的に私淑している日本大学医学部の早川智教授は的確なツッコミをされています。

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https://twitter.com/francescodamil6/status/1311463225590861824より

勝俣先生は「めぐみ@生活習慣改善ナース」さんの、大半の医者はがん検診を受けていない、医者はがんになっても抗がん剤治療を受けないことが多い、というトンデモ発言に対して「それはどういったエビデンスに基づくものでしょうか?がんの専門医に対する調査でしょうか?私は検診受けてますし、がんになったら抗がん剤やりますよ。」という常識的なツッコミ。

早川先生は「こういう事実に反する情報を医療関係者を名乗る方が発信するのは困ります。ある程度以上の読者はプロフィールの 「体温免疫力アップ」で気づくでしょうが。」とトンデモ医学のリトマス試験紙的働きをする「免疫力アップ」を使ってツッコんでいます。

勝俣範之教授も早川智教授も超多忙な方なので、雨の日の休診日で相変わらずセルフ自粛生活を送って時間を持て余している町医者の私がめぐみ@生活習慣改善ナースのTweet内容がどれほどトンデモであり、SNSで悪影響を及ぼしているかを検証してみます。

以前、ニセ医者がTwitterで話題になりました。

ニセ医者疑惑急浮上❗内科医工藤って誰だ????

ニセ医者疑惑急浮上❗内科医工藤って誰だ????

内科医工藤というtwitterアカウントですがツィート内容は特定のサプリメント推しです。医師である私は、内科医工藤さんは医者ではないと確信しています。ネットで活躍する医師を名乗るアカウントが本当に医師なのか、どのようにして確認するか、一般の方でも可能な方法と医師ならではのニセ医者あぶり出し方法についてもお伝えします。

この方はその後は大反省をされているとのことなので、これ以上の追求は止めました。

トンデモ発言 その1:アレルギー、アトピーの原因は車の排気ガス

アレルギーやアトピーの増加と車の普及はたしかに相関関係にあることに間違いはありません。しかし、相関関係にあったとしても因果関係であるのか、あるいは原因と言い切れるのかについては多くの疑問があります。

車から排出される大気汚染物質としては一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、PM2.5などが知られています。しかし、アトピー性皮膚炎の原因としては、これまた私が尊敬するSNSで正しい医療を発信している京都大学の大塚篤司先生は著書「最新医学で一番正しいアトピーの治し方」でアトピーの3つの原因として1:乾燥肌、2:免疫システムの異常、3:かゆみ、を挙げています。

一方で、確かに自動車排気ガスが酸化ストレスに伴って皮膚のバリア機能の低下を招く可能性を伝える研究もあるにはあるのですが、その研究では中国発症の黄砂もアトピー性皮膚炎発症の因子であるインターロイキン33を上昇させることも伝えています(https://www.rohto.co.jp/news/release/2018/0112_01/などによる)。

でもねえ、めぐみ@生活習慣改善ナースはこんなTweetもしているのです。

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https://twitter.com/dappi9/status/1311301427898118147より

黄砂の小さいものはPM2.5に含まれますし、黄砂の発生源は中国方面であることは間違いのない事実です。「めぐみ@生活習慣改善ナース」さんはなんかヘンな界隈からの強い影響を受けている人であり、それを医学情報に無理くり絡めているような印象があります。

トンデモ発言 その2:医者はがん検診を受けないし、抗がん剤を自分では使用しないし、がん治療で免疫力が落ちる

薬を処方しない薬剤師とか薬を飲まない医者とか、ごくごく少数のトンデモさんの意見を取り上げた一般書籍やネット記事や週刊誌はそれなりにインパクトが強いために売れるんでしょうね。しかし、これらの常識から大きくハズレた少数意見のほとんどは、まともな医学によって否定されているか、科学的根拠がスッカスカであり、良い子は真似しちゃダメ案件です。

医者は患者さんに検診・健診をすすめるくせに自分は受けていない、との都市伝説がもっともらしく語られていることを受けて、めぐみ@生活習慣改善ナースは前掲の勝俣先生がツッコんだTweetをしています。

大半の医者はガン検診を受けません。自分がガンになったとしても抗がん剤治療を受けないという医者は多いです。

と、めぐみ@生活習慣改善ナースがTweetしたら、勝俣先生は

それはどういったエビデンスに基づくものでしょうか?がんの専門医に対する調査でしょうか?私は検診受けてますし、がんになったら抗がん剤やりますよ。

と、真っ当なツッコミをしております。

そりゃそうですよ、生活改善ナースさん、あのさあ、例えば藤田医科大学病院はこのようなデータを公表しているんだよねえ。

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https://hospital.fujita-hu.ac.jp/about/results/ec5b820000001oig-att/ec5b820000001q1x.pdfより

97%から100%の医者が毎年健診を受けてるじゃん❗さらにこんな調査もあります。

MedPeerという医師向けサイトが526人の医師に胃がん・大腸がん・肺がん・子宮頸がん・乳がんのがん検診を受けているかを調べたものによれば、胃がんの検診は32%、大腸がんの検診は29%、対象者の医師の年齢を40歳以上にあげると、胃がん検診は39%、大腸がん検診は35%が受けています。

医者の不養生と昔から言われていても、「大半の医者はガン検診を受けません」は正しい医学情報とは言えないですよね。まあ、医師の公的ながん検診受診者が少ないことはちょいと問題だけど、院内でプライベートにチェックしている人は多数でしょうし、私のように定期的に人間ドック受診している人も少なくは無いことを付け加えておきます。

勝俣先生が特に気にされているのは「自分がガンになったとしても抗がん剤治療を受けないという医者は多いです。」発言でしょう。

がん治療といっても、手術・薬・放射線の3つがあります。「がんはほっとけ」で有名な反現代医学をウリにしている近藤誠医師の抗癌剤治療拒否のススメが一時期一世風靡したことは記憶に新しいと思います(ちゃっかり放射線治療は受けるようですけど)。この話を真に受けて、「医者って患者さんには抗がん剤をガンガン投与するけど、自分ががんになったら抗がん剤は使わないらしい」という話が都市伝説的に一部のヘンテコな人々の間で流布していることは、私も確認しています。

私が確認できた範囲で、医師は抗がん剤を自分には使わないことの元ネタは川嶋朗医師の著作「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」だと思われます。川嶋朗医師は

私の知人が国内外の医者271人に「あなたやあなたの家族ががんになった場合、抗がん剤を使用しますか?」と尋ねたところ、なんと270人が「絶対に拒否する」と答えたそうです。

と著作に記載していますが、自分で調べていないのに、伝聞のデータをもとに99%に医師が自分には抗がん剤を使用しないと盛った表現にいつのまにか変貌していることを知っている人は案外少ないかもしれません。

ちなみに川嶋朗医師ってトンデモさんと私は認識しております。

川嶋朗医師が監修するホルミシスの医学的効果はニセ医学のホメオパシーとそっくり⁉

川嶋朗医師が監修するホルミシスの医学的効果はニセ医学のホメオパシーとそっくり⁉

ラドン、ラジウム温泉で不治の病が治る・がんが治ると信じている方は結構いらっしゃるでしょう。ですが残念ながら、低線量の放射線は体に良いだの、天然の放射線は体に良い・美容にも効果があるというのは嘘・デマです。医師のお墨付きがあったとしても、信じないでください。ホルミシス効果という尤もらしいワードについて医師が解説します。

この話をどっかで仕入れためぐみ@生活習慣改善ナースが無責任にTweetしているものだと私は判断しています。

まっとうな医師であったら「あなたががんだと診断されたら、抗がん剤を使用しますか?」との質問に関して「そのがんってどんながん?前立腺がん?肺がん?その病期は何?悪性度はどれだけ?」との尋ねるはずですもの。ざっくり「がんになったら抗がん剤治療を受けますか」に対して「受けません」「受けます」なんて回答する医師は真っ当じゃないと多くの真っ当な医師は判断するはずです。

トンデモ発言 その3:合成洗剤は火で炙ると燃え、燃えカスは青酸カリの10分の1の毒性

めぐみ@生活習慣改善ナースさんは地球環境に強い関心をお持ちである一方、本業であるナースとしての医学知識は一般書籍か週刊誌かトンデモ本から吸収している様子が伺えます。自然派を拗らせた方面界隈に見受けられるお約束の合成洗剤批判の一環としてこの様な発言をされています。

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https://twitter.com/dappi9/status/1311452422544343040より

合成洗剤は火で炙ると燃えるのか?

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燃えないのですけど⋯中には燃える合成洗剤もあるのかも知れないけど、自宅にあった複数の合成洗剤は萌えませんでした。合成洗剤の燃えカスが青酸カリの10分の1の毒性話、ひょっとしてトルエンジイソシアネートのことをこれまた伝聞かヘンテコなネット情報かトンデモ本で仕入れたのではないでしょうか?合成洗剤や柔軟剤の一部にトルエンジイソシアネートが使われてはいますが、わざわざ火で炙ってそれを飲んだり食べちゃう人はまずいないでしょうね。

この合成洗剤の燃えカスが青酸カリの10分の1の毒性がある、との件に関してはさらなる調査を継続する予定です(お約束の予定は未定だけどね)。

まだまだ多数のトンデモ発言盛りだくさんの「めぐみ@生活習慣改善ナース」によるTweet、これからも定点観測させていただきます。

この方が本当のナースである可能性は否定できません。しかし、本物のナースであったとしたら、かなり危険なトンデモナース認定は可能だと断言いたします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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