がん治療のトンデモ系アドバイスサイトにはご注意を❗

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がんになりにくい食生活に関しては質の高い医学論文が多数発表され、多くの医師が認めています。

がんと診断され、がん治療をする上で食事によって、がんが治ってしまうことを示唆する情報がネット上には多く見受けられるのですが、がんを治す食事、つまり食事でがんを治療することは現時点では存在していません。

がんを進行させない食事をアドバイスしているサイトの記事を取り上げて、いかに根拠のないアドバイスであるかを検証してみました。

もぐら叩き状態のトンデモ健康医学情報サイト

コピペはするは、文章の一部を改ざんするは、どっかから拾ってきた根拠の無い医療情報を提供するウェブサイトは叩いても叩いても次から次と登場して、まさにもぐら叩き状態です。多くの方が特に心配してしまう病気の一つが「がん」です。

がんになりやすい食生活に関しては、多くの質の高い医学論文によって支持されています。しかし、現時点では「がんを治療する食事」や「がんを治す食事」に関しては、多くの研究が行われていても医学的に確立されたものはありません。

本人ががんと診断された、あるいは家族ががんになってしまった場合、誰しもが少しでもがん治療に役立つ、ひょっとしてがんが治ってしまうような食事が無いかを探すことは当然の行動だと思います。藁をも掴む思いで食事でがんを治すことができないかとネット上をさまよう人々に全く医学的な根拠のないアドバイスをしてしまうサイトが少なくありません。

フォロワーさんに教えていただいた、ヘンテコなトンデモがん治療アドバイスサイトの記事が気になったので、医学的考察を試みてみます。

医師の監修を受け、根拠に基づいた医学情報と言いながら、全く根拠のないがん情報サイト

医師が監修していると称していても怪しげな情報で埋め尽くされた医療情報サイトがあります。根拠に基づいた医療情報である、と言い切りながら、その根拠が明記されていない医療情報サイトも少なくはありません。

私が今回俎上に載せる、「がんと共に生きる方の情報をまとめてサイト」はサイトポリシーとして以下のように述べています。

1.情報の内容は偏りがなく根拠に基づくいたものであり、引用元や透明性を担保すること 2.医師の監修がある、または研究法人・医療法人からの新しい情報

https://3rd.place/whatis3rdplace/

非常に高尚な理念のもとに運営されている医学情報サイトだと、これだけを見ると判断してしまいます⋯でもねえ、コンテンツがメチャクチャいいかげんだし、そもそも引用元も明記していないし、どっから拾ってきたトンデモ医学情報なんだよ〜❗と言いたくなってしまう余計なお世話的記事が目立ってしまうのです。

善意からくるものであると信じたい「分からない事だらけの治療や入院での不安を少しでも解消できるような情報」が実は医学的には大間違いであり、下手すりゃ病状悪化さえ招きかねないじゃん❗

これもご参照くださいませ。

がんで死なない食事をまねてはダメ❗食べ物でがんは治りません。

がんで死なない食事をまねてはダメ❗食べ物でがんは治りません。

癌を患うと食事に気を使うようになるものです。生きたい・治したい人なら当たり前のことです。ですが世の中には情報が溢れすぎているため真贋を見極めるのは難しく医療情報に至っては医師が言っているから正しいと思われがちですが、デタラメ・トンデモ情報はいっぱいあります。はっきりしていることは、癌は食べ物では治らないということです。

トンデモ医学のお約束、免疫力アップさせる食事

良い子の皆さんは、「免疫力アップ」はトンデモを見分けるリトマス試験紙の役目を果たすことは知っているよね〜❗闘病生活を“豊かに過ごせること”をモットーにしているヘンテコながん闘病中の方へのアドバイスサイトはこんなことを述べています。

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https://3rd.place/all/food/2020/09/3462/より

がんを進行させる食事、これって医学的には現時点では明確になっていないんだよ❗

さらに、このアドバイスサイトはこんなことも述べています。

がんが進むスピードに影響を与える要因には、免疫力があり、それは食事療法によっても引き出されます。

免疫力、まあ免疫のシステムのことを素人だから「免疫力」って書いちゃった可能性もあるけど、免疫に関連するどの因子が食事療法によって引き出されるのか、根拠に基づいた情報を提供すると言い切っているんだから、当然根拠となる医学論文が明記されているかと思ったら⋯オイオイ、参考文献は一般書籍の「抗がん剤を受けるときに読む本 」じゃん。

一般向け書籍だからといって質が悪いと私は考えてはいませんし、このヘンテコアドバイスサイトを訪れる人の殆どは医学関係者ではないですから、参考文献として一般書籍を明記することは、サイトポリシーの「引用元や透明性を担保すること」を遵守していることにはなっているのかなあ。でも、引用元の透明性、ってなんだろ???

さらにアドバイスサイトでは不思議な文言が続きます。

脂質の取りすぎを止める事で、乳がんの方の生存期間が長くなるというデータなど出てきています。

これ、なんだか岡田晴恵先生の「データがありますっ」って口癖を思い出してしまいました笑。このデータって言葉が曲者で、データがあっても論文になっていない場合は第三者に存在自体を確認することが不可能になっちゃうのです。岡田晴恵先生や玉川徹氏が多用する「データがあります」に良い子は気をつけようね❗

余計なお世話だろうけど、このアドバイスサイトにアドバイス。

乳癌初期治療後の肥満は乳癌再発リスクを増加させることはほぼ確実とされており,肥満を招く脂肪を多く食事摂取することが乳癌再発リスクを増加させるかもしれないという仮説

日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン

たしかに日本乳癌学会の乳癌診療ガイドライン (http://jbcs.gr.jp/guidline/2018/index/ekigakuyobo/cq8/) に明記されています。

でも最終的には

初期治療後の総脂肪摂取の増加と乳癌再発死亡リスクに関連はないとしている点,関連ありとしたコホート研究は1件である点,ランダム化比較試験の1件は結果の解釈が困難である点を鑑みて,両者の関連は結論付けられないと判断した

ということになっているのさ。

これまたトンデモ医学情報のお約束、添加物忌避・遺伝子組換え忌避、そしてデトックス

トンデモ医学情報はとにかく添加物を悪者にするし、遺伝子組換え食品を根拠なく攻撃するし、なにが排泄されるか明確になっていないデトックスを推奨しちゃうんだよなあ⋯。

豆知識:よくトンデモさんが「遺伝子組み換え」と書いちゃうけど、正式には「遺伝子組換え」と表記します。これもトンデモ医学情報リトマス試験紙的に使えます。

この「情報の内容は偏りがなく根拠に基づくいたもの」を提供することを心がけているがん治療中の方へのアドバイスサイトは、添加物を含む食事をさけることによって、がんを進行させないことを示す根拠を示していないし、遺伝子組換え食品を摂取しないことが、がん治療に役立つ根拠となるデータも記載されていないし、デトックスがどれだけがんの進行を抑制し、がん治療に貢献するのかも全く説明していません。

そもそも、タイトルあった食事によって免疫力が引き出されることになる食事療法自体が書かれていないじゃん❗

今回のブログはこのやり取りをきっかけにさせていただきました。

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と、私のフォロワーさんがこのトンデモ医学情報サイトに質問したところ、このような回答が返ってきました。

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親切な運営者だとは思うのですけど、知識不足の善意が医療現場に混乱を招き、下手すりゃ病状悪化しちゃう可能性もあることをサードプレイスさんには知っていただきたいです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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