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予防接種の痛みを少なくする方法、痛みの原因は3つ❗

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予防接種は痛いから嫌だ❗という人が少なくありません。

予防接種の痛みは、注射する医師、注射器や針の違い、薬がからだに入る時の刺激に左右されます。

いかにして予防接種の痛みを少なくするかについて、医師や医療器具メーカーやワクチン製造メーカーによって様々な工夫がなされています。

予防接種の痛みを少なくするには、なぜ痛いかの原因を知る必要があります。ポイントを3つに絞って痛くない予防接種を実現するための方法についてお伝えします。

予防接種はなぜ痛いか?痛みの原因は3つ

大人でも注射が嫌い、特に予防接種は痛いから受けない、なんて人がいます。感染症予防の要としてワクチン接種が重要であることが頭ではわかっていても、あの注射の痛みが苦手との理由でワクチン接種をついつい先延ばしにしちゃう人もいるのでは無いでしょうか?

予防接種の痛みの原因として以下の3つが考えられます。

  1. 注射する医師の技術の問題
  2. 注射器や針による問題
  3. 予防接種ワクチンの性質の問題

これらの問題を解決すれば、予防接種による痛みを少なくすることができるのであれば、ワクチン接種者を増やすことが可能になります。

小児の場合は予防接種前に甘いものを口にすると痛みが少なくなることがあるそうです。「小児アレルギー科医の備忘録」予防接種前にショ糖を舌下にいれると、予防接種時の痛みが軽減するをご参考にしてください。

予防接種の痛みは、注射する医師の技術で少なくできる

私のような町医者は注射が痛くないだけで腕の良い医者との評判が町内で囁かれるようになります。患者さんが目をしかめるような痛い注射をするだけで、ヤブ医者との風評が燎原の火のごとく町内を駆け巡ります。

予防注射は皮下へワクチンを注入する方法と筋肉へワクチンを注入する方法があります。一見、筋肉注射の方が痛そうな気もしますけど、皮下注射の方が下手な医師が行うと明らかに痛いです。

恐る恐る皮膚に針を挿してしまうと、皮下では無く皮内にワクチンが入ってしまい、腫れるし痛いし、と最悪な結果になってしまします。

予防接種の痛みを逃れたいばかりに、「先生、麻酔してから注射してよ」とのたまうオッサンも居なくはありません。貼る麻酔剤も塗る麻酔剤も当院には用意がありますが、麻酔剤自体の副作用も無くはないので、麻酔を懇願されても私は予防接種時には使用ません。

医師ができる予防接種の痛みを少なくするテクニックとしては、

注射部位をアイスパックで冷やす。

ゆっくりワクチンを注入する

気をそらす

などが一般的に医師が考えている、予防接種の痛みを少なくするテクニックなのですが、どれもこれもありふれたものです。

私が採用している予防接種に痛みを少なくする方法は

  1. 針を刺したら陰圧をかけない❗
  2. 針を指す部分を圧迫する
  3. 針を指す角度を教科書的記述より大きくする

以上の3点です。

1:注射器に不必要な陰圧をかけない

筋肉への注射の場合、血管内に針が刺さっていると薬剤が血管に直接入ってしまうので思わぬ副作用を引き起こしてしまいます。そのために、皮膚に針を刺した後にからずプランジャーを引いて陰圧をかけ血液が流入してこないかを確認する必要があります。しかし、皮下注射の場合、太い血管に針が刺さることはまずありませんので、陰圧をかける必要は無い、と考えています。

2:注射する部分を圧迫する

針を挿す部分を圧迫する方法は人間が痛みを感じる仕組みを利用したものです。「Gate Control Theory」という考え方に従うと、先に別の痛みを与えると脳は選択的にその痛みを優先して認識します。予防接種をする付近を強めに指で圧迫しておくと、その痛みが優先して脳に伝わるために針の痛みは後回しになるのです。

3:注射器刺す時の角度を大きくする

皮下注射するときの針の注入角度は教科書的には10度から30度としているものが多いです。しかし、斜めに皮膚を針が貫く長さが長くなってしまいます。長い距離を針が皮膚を傷つけるより、短い距離の方が間違いなく痛みは少なくなります。そのため、私は流石に最短距離の直角はマズいので、45度くらいの角度で針を刺すようにしています。

海外ののワクチン接種の映像を見るとちょっとビビります。垂直に勢いをつけた太い針をぶすり。あれは皮下注射ではなく、筋肉注射ですね。しかし、針が太い⋯針の太さは色でわかり、基本的に世界共通です。18Gはピンク、21Gはグリーン、22Gは黒、23Gがブルー、25Gがオレンジ、26Gが茶色、私が予防接種に使う30Gは黄色です。23Gや25Gは筋肉注射には良いでしょうけど、皮下注射には太すぎると思います

注射器や針を工夫して痛みを少なくする

針は細ければ細いほど、注射する時の痛みを少なくすることができます。しかし、あまりにも細すぎる針の場合、皮膚を貫く時にたわんでしまうことがあり、一般的には25G (ゲージ)から27Gの針が使われているようです。

Gはゲージと呼ばれ数字が大きくなればなるほど細くなります。

1:可能な限り細い針を使用する

私は通常は30Gの極細針を予防接種に使用しています。30Gの針は25G〜27Gと比較すると針の単価はかなり高額になってしまいますけど、「先生の注射って痛く無いね!」と言われることが開業医としては重要なポイントだと考えていますので仕方ないことです。

ちなみに以前34Gという超極細針も当院には用意がありますが、これはたわみますし、針一本の価格が予防接種のワクチン以上と高額になってしまうのが欠点で日常使いはしていません。さらに超極細のため薬を注入する時間が必要以上に長くなってしまう欠点もあります。

2:適切な大きさの注射器を選択する

予防接種で必要とする薬剤の量はほとんどが0.5mlと極々少です。この0.5mlの溶液を皮下に注射する時に通常使用される注射器は一般的にイメージする注射器よりは細いもので、通常は1mlの容積のある注射器を使用します。

注射器で注射する際に親指等で薬を体内に注入する時に押す部分をプランジャー(英語だとPlunger)と呼びます。スムーズにプランジャーを押せるように注射器製造メーカーは様々な工夫をしていますが、大きな注射器であればあるほど当然摩擦が大きくなるので、プランジャーを押すのに力が必要となります。その力は注射される側にも伝わりますので、予防接種で必要とする薬剤の容量である0.5mlの注射器を使用すれば一番予防接種の痛みを抑えることが可能です。

薬剤の痛みを少なくするワクチンメーカーの努力

予防接種に使用するワクチンの性状は私たちが工夫することは不可能です。薬剤自体の刺激性によって予防接種の痛みは違ってきます。予防接種の痛みはワクチンのpHや浸透圧や添加物に左右されます。

1:ワクチンのpHの問題

例えばインフルエンザワクチンのpHは6.8~8.0、風疹ワクチンのpHは6.8~8.5、 HPVワクチン(いわゆる子宮頸がんワクチン)はpH:5.7~6.7です。

人体のpHは部位によって違いがあり、皮膚のpHは4.5~6、血液のpHは 7.35〜7.45なので、ワクチンのpHとは若干違いが生じてしまいます。ワクチンのpHはなるべく痛みが生じないようにpH調整剤などで調節はしているのですが、pHを最優先するとワクチン本体の効果に影響が出てしまいます。ワクチンのpHを調整することは私たち医師には不可能です。

2:ワクチンの浸透圧の問題

人体の浸透圧と違った液体が体内に入ってくると痛みを生じます。細胞には細胞内に水分を取り入れたり排出したりする機能が備わっています。ワクチンの浸透圧と体の浸透圧に大きな違いが出てしまうと、それも痛みの原因となります。

予防接種で使用するワクチンはできるだけ人体の生理的な浸透圧と大きな差が出ないように工夫はなされています。例えばインフルエンザワクチンの浸透圧比(生理食塩液に対する比)は1.0 ± 0.3、風疹ワクチンの浸透圧比は約1、HPVワクチンの浸透圧比は1.0になっています(各ワクチン添付文書を参考)。

予防接種は痛いから打ちたくない❗とワクチン接種を避けている方、予防接種の痛みは医師と医療機器メーカーと製薬会社の努力によってできる限り少なくするような工夫がされているんですよ。

注意:予防接種の注射をする場所によっても痛みに違いが出ます。しかし、ワクチン接種に関しては注射をする部位が決められていますので、医師の裁量や患者さんのリクエストに応じて注射部位を自由に選択できない点が改善されれば、さらに予防接種の痛みを少なくすることが可能だと考えられます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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