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夜間頻尿治療の最終兵器「ミニリンメルト」という薬の特徴はこれ❗

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睡眠中におしっこに行くために起きるのは年をとったからと考えるのは、健康寿命を短くする可能性があります。

夜間頻尿は前立腺肥大症や過活動膀胱に伴う症状と考えらえて治療をしても、やっぱり何回も夜中にトイレにいってしまうことが改善できないことも少なくありません。

今回、ズバリ夜に作られるおしっこの量を減らすことによって夜間頻尿を治療しようという発想から生まれた、「ミニリンメルトOD錠」という薬について検討してみました。効果は確実でも使い方に注意が必要な理由も一緒に考えてみます。

夜におしっこに起きるなら、おしっこの量を減らせばいいじゃん。

高齢者が増えるとともに、命には直接関わらないけど治療することによって生活の質が向上すると考えられる病気や症状も増えてきました。

私の専門は泌尿器科なので、高齢者の生活の質の改善というと頭に浮かぶのは、おしっこにまつわる症状や悩みです。

前立腺肥大症、過活動膀胱などの治療薬はどんどん新しい薬が登場してきて、20年前と比較するとめちゃくちゃ効果的で安全で、泌尿器科医でなくても処方することを躊躇しなくても良いレベルの薬も多数存在しています。

それでも泌尿器科医以外が治療に困るのが、「夜間頻尿」です。夜中に目を覚まして、おっしこに行ってしまう症状を抑え込むために、睡眠薬を力技的に処方してしまうと転倒などのリスクが生じてしまいます。

ミニリンメルトOD錠(MINIRINMELT OD Tablets)という薬が2013年に処方できるようになって、泌尿器科医は夜間の頻尿に対して無理やり「夜尿症」という病名をつけて処方したりして、患者さんによろこんでいただいていました(これを適用外処方とは言わないでね)。

このミニリンメルトを処方する泌尿器科医の治療戦略は、

おしっこの量を減少させれば夜間頻尿が抑えられるじゃん❗

という直球的なものでした。

このミニリンメルトが2019年になってやっと、「夜間頻尿」が適応症になったのです。

適用と適応の意味は近くても使い分けが必要です。適用は規則などに当てはめること、適応は条件に当てはまること、です。保険診療という法律で定められた制度のもとで使う場合は「適用」であり、症状に対しては「適応」です。まあ、どうでもいいような気もするけどね。

おねしょの薬だったミニリンメルトの過去

ミニリンメルトの主成分であるデスモプレシンは以前から子供のおねしょの治療で処方されていました。

製品名としては「デスモプレシン点鼻液(DESMOPRESSIN Intranasal)」あるいは「デスモプレシン・スプレー(DESMOPRESSIN・Spray)」で、名前から想像できるように、この薬は液体で鼻の穴に点鼻して使うものであるため、処方及び使用に際して医師も親御さんも、おねしょの子供さんもユーザビリティに満足するものではありませんでした。

デスモプレシンは脳から分泌されていれ尿の量を減らす働きがあるバゾプレシン(vasopressin) というホルモン(働きから抗利尿ホルモンと呼ばれています)と同じ働きをするために、おねしょ(病名としては夜尿症)や中枢性尿崩症の患者さんの夜間の尿量を減らすことによって症状の改善に役立ってきました。

デスモプレシンは「ホルモン」類似物質であり、「点鼻する」使用方法であったためにイマイチ人気が無かったので、私自身も処方することは稀でした。しかし、尿量を減らす成分であるデスモプレシンを主成分とした飲み薬の出現によって圧倒的にユーザビリティが向上したのが、今回取り上げる「ミニリンメルトOD錠」です。

OD錠は「orally disitegration」の略で意味は口腔内崩壊錠です。薬を飲む場合、水を飲む必要がなく自然に口の中で溶け出し高齢者や水分制限をされしまう、おねしょをしてしまう子供にとってもメリットのある薬の剤形です。ちなみに舌下錠と違って口の粘膜からは成分は吸収されません。

子供がおねしょの治療に飲んでいた薬なんだから、副作用などの安全面も安心な気がしてしまうのですが⋯実はそうではないのです。

夜間頻尿が適応される以前に、おねしょに処方されるミニリンメルトは60μg ・120μg ・240μg だったのですが、夜間頻尿用のミニリンメルトは25μg ・50μg と何故か不思議なことに薬の量が減っているのです。

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これが今回夜間頻尿に使えるようになったミニリンメルトOD錠50μg、わざと薬が取り出しにくいように作られているシートになっています。

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子供が服用する薬の量より大人が服用するときのほうが薬の量が少ない❗という一見不自然な使用方法になっているのが、ミニリンメルトの特徴とも言えるのかもしれません。

子供に処方する量と大人に処方する量、なんで大人の方が少なくなるのか問題については時期を見て別の記事にする予定です(当然、まいどまいどおなじみの予定は未定だけどね)。

夜間頻尿をミニリンメルトで少なくすることはできても少し問題が

ミニリンメルトが以前からおねしょの薬として使われていたので、「子供が飲んで大丈夫な薬なんだから、大人が飲んで副作用を気にすることは無い」と考えてしまうのは大間違いなんです。

抗利尿ホルモンと同じような働きをすることによって、夜間の尿量を減らすことが可能なミニリンメルトの主成分であるバゾプレシンに対する感受性が大人の方が敏感だと考えられています。つまり、バゾプレシンの効果は子供より大人の方が高い、との解釈もできます。

ミニリンメルトを開発して販売している製薬会社には申し訳ないけど、しかし、こんな考え方もできるのです。

ミニリンメルトの副作用は子供より大人の方が出やすい可能性がある❗

⋯あーあっ、言っちゃった。

私がミニリンメルトを持ち上げておいて、いきなり落下させる理由のもうひとつあります。ミニリンメルトOD25µg・50µgともに適用および適応は男性に限られている点です。

女性は適応外だけど、子供の場合は大人より服用量が多くてもOKという不思議な夜間頻尿改善薬であるミニリンメルト、そのあたりの理由の説明は今回は止めておきますね。

ミニリンメルトがなぜ大人の男性だけに処方可能であるか、そして、子供より処方する量が少ないか、に関してもう一本記事が書けそうな気がします(書けそうな気がするだけであり、書くと約束したわけじゃないよ、いつものことだけどね)。

夜におしっこに起きることは、なぜ健康に良くないのか?

年を取れば夜におしっこに起きるのは当たり前だよ的に考えてる方も少なくないと思います。しかし、よーく考えてみてください。夜に頻回に睡眠が中断されて翌日寝不足で頭がぼーっとするマイナス面もあります。

  • 01
    夜におしっこに起きる
  • 02
    高齢の為に足元がふらつく
  • 03
    転倒する
  • 04
    骨折
  • 05
    入院
  • 06
    寝たきりの生活
  • 07
    社会復帰には多大な努力が必要となる

と、いうことなんです。特に家族に気を使って夜にトイレに行くときは室内の明かりを暗めに点灯したりする方も少なくありませんので、余計転びやすくなります。

なかには入院によって認知症状が出現するなんて考え方もあったりします。

夜間頻尿の原因が寝ている間におしっこが多めに作られてしまうことであった場合は直球勝負的に尿量を減らすミニリンメルトの処方が効果的だと私は判断しています。

ミニリンメルトを処方するに当たっては、もちろんリスクとベネフィットを比較する必要はあります。

【日本だけ?】夜間頻尿治療薬のミニリンメルトが成人女性には処方できない理由

【日本だけ?】夜間頻尿治療薬のミニリンメルトが成人女性には処方できない理由

ミニリンメルトOD錠は2013年に処方薬となり夜間頻尿で悩む方を救ってきましたが、男性のみ適応なのです。頻尿の悩みは男性よりむしろ女性のが多いと思われがちですが、あまり差はなくて、そもそも男女では頻尿の原因が異なるのです。男性のみ適応の夜間泌尿薬が女性に適応外となる理由を泌尿器科医が解説します。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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