喫煙者はIQが低い、との話を蒸し返してみますね。

受動喫煙防止策を強化する健康増進法改正案に関して原則禁煙なのか、飲食店全面禁煙なのかでもめているようです。「敷地内禁煙」「屋内禁煙」「喫煙室設置可の屋内禁煙」とかの選択支があるそうですが、他人に対して健康被害があることが明らかな喫煙ですから、どうしても吸いたい人は家で吸えばいいじゃん、と考えておりました。

しかーし、以前喫煙者はIQが低いとの論文があることを思い出して、その論文をもう一度読み返してみました。

喫煙が健康に良くないのは当たり前だけどIQにも影響⁉

医学における原因と結果の多くは相関関係にあって、因果関係ではない傾向があります。この喫煙者はIQが低い、とのフレーズからも

  • 喫煙する人はもともとIQが低い

との考え方もできますし

  • 喫煙しているとIQが低くなる

とも読み取れます。IQが高いことが勉強ができることイコールではありませんし、IQが高いことが頭が良いとも限りませんが、今回の論文はIQを指標として喫煙との関連を調べていますので、解釈に注意くださいませ。

なんで喫煙するとIQが低くなるのか?

喫煙者はIQが低い、を発表した論文は「Cognitive test scores in male adolescent cigarette smokers compared to non-smokers: a population-based study」(Addiction. 2010 Feb;105 (2) :358-63)です。この論文の要旨はこんな感じになっています。

  • イスラエルで徴兵制の対象となった男性2万221人のIQを調べた
  • 28.5パーセントがタバコを一日一本以上喫煙していた
  • 喫煙者のIQは94、非喫煙者のIQは101であった
  • 喫煙者の中でも一日に一箱以上する人のIQは90であった

以上のようにタバコを吸う人はIQが低いとの結果になったという内容です。これだけでは「もともとIQが低い人がタバコを吸う」という解釈が成り立ちます。しかーし、イスラエルの研究者に抜かりはありません。タバコを吸うことでIQが下がることを示唆することも検討しています。

兄弟で喫煙者と非喫煙者を比較してみると⋯

イスラエルの研究対象の中に70組の兄弟がいました。双子にはかないませんが、兄弟の場合遺伝的な一致が多く認められ、IQも似通ってると仮定した場合は以下のような結果になってしまいます(もちろんエピジェネティクスの問題もありますけど)。片方が喫煙者、もう片方が非喫煙者である兄弟のIQを比較したところ

やはり喫煙した兄弟のIQは非喫煙者の兄弟より低かったという結論が出ました。

今回の喫煙者はIQが低い、との話は喫煙することによってIQが低くなる可能性を強く示していることになります。

注意:この研究においてもともとIQが低い人の方が喫煙することが多いこともわかっています。この結果からIQが低い人を将来いかに喫煙させないかのプログラムを計画する必要性をうったえています。

どうみてもIQが高いのに喫煙を支持する人

頭脳労働を生業としている方の中で猛烈に喫煙の素晴らしさを訴えている方がいらっしゃいます。精神活動における刺激になる、自分の健康問題を人にとやかく言われたくない、などの理由から発展して「喫煙する権利」「喫煙者に対する差別」「喫煙する自由」などを語る方もいます。

彼は決してIQが低いとは考えにくいのですが、もし喫煙をしていなかったらもっと素晴らしい著作を発表していたかもしれませんし、もっと素晴らしい研究成果を挙げられたかもしれません。

飲食店全面禁煙して何が問題なのか?

完全禁煙とか分煙とかの飲食店が増えてきています。いくら分煙していても店員さんの健康を害する可能性は否定できません。経営サイドは禁煙にすると売り上げが激減するのではないかと心配しています。でもね〜、こんな研究もあるんだよ。「某ファミリーレストラングループにおける客席禁煙化前後の営業収入の相対変化 未改装店,分煙店の相対変化との比較」(日本公衆衛生雑誌Vol.61 (2014) No.3p.130-135)⋯これPDFで全文読めます。詳細は各自読んでもらうとして、結論は全面禁煙にすると営業収入は増加するが、分煙ではそうではなかったのです。

全面禁煙にしちゃうとあのお客さんは来なくなっちゃう、でもこのお客さんは嫌煙派だから分煙にしちゃおうかな、とお悩みの飲食店経営者はぜひお読みください。

前掲サイトより

自分の嗜好を否定されることはあまり面白いことではありません。しかし、自分の嗜好が他人様に明らかに迷惑をかけている場合はその嗜好を我慢することが必要です。どうしても喫煙をしながら飲食を楽しみたいのなら、自宅で行えば良いのです。どうしても家の外でタバコを吸いながら飲食を楽しいタイのなら、秘密クラブ風の会員制の愛煙家専門飲食店を認めればいいんじゃないのかなあ。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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