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やっかいな感染症ウイルスワクチン、一瓶で5人分なのか、6人分確保できるのか問題について。

やっかいな感染症対策としてのワクチン確保が世界中の国で問題になっています。日本でも注射器の問題なのか想定していた回数分が実は確保できていないなど、国民が混乱するようなニュースが飛び交っています。

まず、前提としてワクチンは低温で保存されているものを使用する際に常温に戻し、生理食塩水で希釈して使用します。ワクチン一瓶を希釈してできたワクチン液から何回分注射できるのか?が今回の問題です。

やっかいな感染症ウイルスワクチン接種、1本当たり5人分?6人分?問題

やっかいな感染症ウイルスの蔓延に伴い、今の話題はやっかいな感染症ウイルスワクチンです。最初はワクチンひと瓶から6人分のワクチンが確保できると考えていたのに、蓋を開けてみたら5人分しか取れないじゃん問題が政治家や役人の間抜けさの象徴ともなりかねない状況になっています。

まず、そもそも日本に最初に輸入されてきたファイザー社のやっかいな感染症ウイルスワクチンは一瓶5人分です。次の写真をごらんください。明確に5人分であることがワクチンの容器の外側にも書かれています。これに気が付かなかった担当者はかなり慌てん坊さんであったことは否定できません。

ファイザーのやっかいな感染症ワクチンの瓶のラベル

基本的には5人で使用することになっているワクチンなのに、どこで仕入れた情報なのか一次ソースを確認しないで6人分使用可能とした担当者もそそっかしいとは思います。緊急的な状況であることを考えると、工夫によって5人分が6人分として使用できればそれはそれで喜ばしいことであるには間違いないのですが⋯次のようなヘンテコなご意見、それも医師から出てきています。

ファイザー社製のワクチンを3mlで溶かして、1人あたり0.5mlずつ打てば問題が解決!?

でもさあ、これでいいのでしょうか?と私は素朴な疑問をいだいてしまいました。いくら医師に裁量権(治療や処方に対して医師が各々の考えに従って少々アレンジする権利と一般的にはとらえられている)があるといっても、費用全額を国が負担して医師は行政からの委託によっておこなわれるやっかいな感染症ウイルスワクチン接種なので、医師によって使用上の注意や使用方法を変えるのはマズイのでは無いかと考えてしまう次第です。

たとえば料理の場合、薄めてしまうと味が変わります。お酒の場合だとアルコールの濃度が変わります。果たして、安易にワクチンを添付文書以外の量で希釈して良いのでしょうか?

1.8mlで希釈することになっているワクチンを3.0mlで希釈したら有効成分が薄まるのでは?

ファイザー社のやっかいな感染症ウイルスワクチン「コミナティ筋注(COMIRNATY intramuscular injection)」の添付文書の用法及び用量には

日局生理食塩液1.8mLにて希釈し、1回0.3mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する

と、明確に記載されています。

やっかいな感染症ウイルスワクチン「コミナティ」の容量は0.45mLと添付文書にきっちり記載されていますので、超低温保存されていない状態だと液体であることがわかります(性状として「白濁した液体である」と記載されています)。

添付文書には「生理食塩水1.8mLにて希釈」となっているので、ワクチン0.45mL + 食塩水1.8mLで総量が2.25mLになります。その液体状のワクチンを2.25mLの注射液を0.3mLずつ注射するのですから、計算上は7回接種可能に思えます。

ですが一般の注射器の構造上、吸い上げた薬剤をすべて注射することはできないのです。これは注射器内にデッドスペースが存在するためです。2.25mLなら7回は無理、6回でも6回目は0.3mLに満たない、ですので確実なのは5回、つまり添付文書に従って希釈しても5人分しかワクチン接種に使用できないのです。これが今回の6人分できると思ったら5人分しか接種できないじゃん問題の発端です。

ちなみにコミナティは筋肉注射です。予防接種は皮下注射が日本では一般的なので痛みが気になる方は以前書いた記事「予防接種の痛みを少なくする方法、痛みの原因は3つ!!」をお読みください。

注射器の構造上、この図にある先端部分の筒先にどうしても薬剤が残ってしまうのが一般的です。

ファイザーのコミナティは超低温で保管することが基本ですから、本来は液状であっても、その時点では当然固形。接種時には液状になったものを1.8mlの生理食塩水で希釈して使うことが基本中の基本。それを3mlで希釈すれば一般の注射器のデッドスペース分が節約できるので、凄い!素晴らしいコロンブスの卵的発見じゃん!!と考えてしまったひとがいるのですね。

でもねえ、3mlで希釈するとやっかいな感染症ウイルスワクチンの有効成分が変化しますぜ!!

以下、なぜ1.8mlで希釈するワクチンを3mlで希釈すると有効成分が変化してしまうのかを解説します。

ワクチンの有効成分の容量は一本当たり0.45mL、これに1.8mLの生理食塩水で希釈すると総量は2.25mL。ここから一回あたりの接種量の0.3mLを注射器に移すとワクチン一瓶の総量の13.33%が注射器に吸い上げられたことになります。一方で、3mLで希釈すると総量は3.45mLになります。接種量の0.5mLは3mLで希釈した総量の14.49%。もともとのワクチンの有効成分も同じ割合で混ざっているとしたらイメージとして薄まっちゃうワクチンではなくて、下手すりゃ必要以上のワクチンの有効成分を接種してしまうことにもなりかねません!!

これでは医師の裁量権の範疇を超えてしまっちゃうのではないでしょうか?

一見、素晴らしいアイディアと受け止めて絶賛した人たちもいるようですが、添付文書を守らない思いつきでワクチンを希釈してしまって何らかの副反応が生じたら国は補償してくれるのかな?

ファイザー社のワクチン「コミナティ」の情報を十分に調べずに生理食塩水を含めて合計1.8mLに希釈してと思い込み、あるいは生理食塩水を含めて合計3mLに希釈すると早とちりしている人もいるようです。この場合はデッドスペースに含まれるワクチン有効成分に違いが出てきてしまい、決められたワクチンを接種したことにならなくなります。この計算については後日追記しますね。

規定以上の生理食塩水で薄めてしまった場合、もともと不安定であるワクチンの有効成分に対して何らかの影響、多くは良くない影響がでてしまうことも大いに予想されますが、かなり専門的な話になるので今回は省きます。

ワクチンを無駄なく使える特殊な注射器があります

特殊な注射器で「ローデッドスペースタイプ」と呼ばれるものがあります。構造はこのようになっており、注射器の針や注射器の先端に液体状の薬が残らないような工夫がなされています。

内筒(プランジャー)が先がデッドスペースに残った薬剤を押し出す形になっています。

実は以前もある感染症の流行が懸念され、その感染症に対するワクチンの供給が十分では無かったことがあります。そのような状況に対応するために、このローデッドスペースタイプの注射器を仕入れてできるだけ多くの方にワクチン接種をしようと努力した常日頃から情報収集を心がけている医師も少なくはありませんでした。

私は今回のやっかいな感染症ウイルスワクチン対策としてではなく、ローデッドスペースタイプの注射器を万が一のために、常にクリニック内で在庫するように心がけていました。

この注射器がこれまた通常の注射器と比較して10倍くらいするので、経理に「院長、無駄使いはやめてくださいね、キーっ」とお約束的に怒られています。さらにインフルエンザワクチン接種時には患者さんに「先生の注射って本当に痛くないですね」と称賛されるために(笑)、一般的に使用されている26Gより細い30Gの針を使っていますし、さらに極端に細い34Gまでこっそり使っているんだよなあ。

この34Gの針はこれまた信じられないくらい通常の注射針より高額で、「院長、いい加減にしてくれますかあ⤴キーっ」って怒られまくっています。

大手注射器メーカーのテルモやニプロが政府の要請を受けて、ローデッドスペースタイプの注射器を増産しているとのこと。

https://mainichi.jp/articles/20210228/k00/00m/010/085000c

いままで出回っていたローデッドスペースタイプは既に国家権力的な買い占めが為されているとの噂も出回っているのですが⋯私はつい数日前に、在庫が少なくなったので前掲のローデッドスペース注射器をオーダーしたら数日で手元に届きました。ちなみにこの注射器は国内で生産されている純MADE IN JAPANですぜ。

お医者さんでも3mlに薄めればいいじゃんと話している人もいるようです⋯このお医者さん、他の薬剤も不足した時には日常的に薄めちゃっているのかな?

文章中で「mL」と「ml」の両者を併用して書きました。正しくは「mL」なんですが、私がたまたま目にした独自の希釈話は「ml 」表示だったので、原文を尊重したことをご理解くださいませ(笑)。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

詳しいプロフィール

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