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希望の党「花粉症ゼロ」公約、これが可能なのか医学的に考えてみたら⋯どう見ても無理でしょう。

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公約「花粉症ゼロ」でひっくり返った医療関係者多数と思われます。いよいよ2017年の衆議院選挙の投票が来週日曜日に行われます。政治的なことに関してブログを書くことは医療関係者として、控えるべきことかもしれませんが、今回の衆議院選挙には多くの医師も立候補しているようなので、今回の選挙で注目されている「希望の党」の公約とされている12のゼロのうちの「花粉症ゼロ」に関して医学的に可能なのか検証します。

「花粉症ゼロ」公約は、医学的に可能なのか?

そういえば前回の都知事選挙で鳥越俊太郎氏が何を思ったのか「がん検診100パーセント」なんて公約を掲げてことは記憶に新しいのではないでしょうか?公約の中に1つは健康問題を入れるのが流行りなのかもしれませんね。

都知事候補鳥越さんの「がん検診100パーセント」発言の問題点はコレ。公約が実行されたら大混乱確実❗

花粉症ゼロといっても、スギの木をバッサバッサと切り倒すワケではなそうです

希望の党のサイトではこんなページ(多分小冊子、あるいはマニュフェストかな?)があります。

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https://kibounotou.jp/pdf/policy.pdf

 ここには公約として10つが掲げられていますが⋯花粉症0は見当たりません。下の方にスクロールすると希望の党「しるべ」として12のゼロの中の10番目に「花粉症ゼロ」と書かれています。

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花粉症ゼロは公約というより「しるべ」であり、希望の党が目指す12のゼロの中の1つであることがわかりますね⋯「しるべ」と「公約」の違いが、希望の党的にどう分けているのかは不明です。

このパンフレットか小冊子の下の方に老眼鏡無しでは読むことが不可能なレベルで 「花粉症ゼロ」を目指したスギ等の伐採促進、国産材の活用促進などにより、林業の再生を目指す、とあります。杉の伐採をして植林をしていく費用的な問題は既に多くのメディアが取り上げていますので、花粉症ゼロという公約が医学的に可能であるかを検証してみます。

花粉症ゼロを実現するための方法はこんな感じかなあ?

希望の党はスギを伐採して、林業の再生を目指すといっているのですから、多分、スギの木を倒しながらアレルゲンとならないような他の樹木の植林をすすめる予定なのかもしれません。

しかーし、花粉症といっても杉だけがアレルゲンではないことは多くの方がご存知だと思います

これは関東地方における花粉症と総称される樹木の一覧とその飛散する時期を表にしたものです。

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http://www.nippon-shinyaku.co.jp/assets/side_page/healthy/hanaallergy/kaisetsu/kafun_4_3.html

 

まあ、これを見ただけでスギの対策を施しても「花粉症ゼロ」にはならないことがわかります。

そこで花粉症ゼロを実現するにはどのような対策が可能であるか、あるいはどのような方策を行えば「花粉症ゼロ」を達成したと言えるのか?こんな解釈もできるかもしれません。

  1. 日本人の4人に1人がスギ花粉症と言われているので、花粉症薬やそれに関わる医療費をゼロとする
  2. 花粉症の自衛策としてマスクやゴーグルを無料配布することにより花粉症ゼロ
  3. 思い切ってスギ等を伐採して、他のアレルゲンとならない木を植林する

1と2はスギ花粉症患者発症者ゼロあるいは花粉症に関する医療費ゼロは目指せますが、減感作療法を行おうが、投薬をしようが、鼻粘膜を焼灼しようが効果が100パーセントとなることはありえませんので、現実問題としてスギ花粉発症ゼロでさえ現代医療では厳しいの、花粉症ゼロ公約実現は無理です。

となると、公約、違ったか「しるべ」の詳細な解説をそのまま解釈すると、やっぱり3の花粉がアレルゲンとなるスギの伐採を頭に描いているのでしょう、多分小池さんやそのブレーンは。

これじゃ他の樹木等がアレルゲンと花粉症と診断されている人はどうなっちゃうの?との疑問が当然噴出してくることになります。

スギ以外でも花粉症はたくさんあるんだけど

花粉症といってもその原因は多数です。例として図を前掲していますけど、他にもヒノキ・ケヤキ・シラカンバ・イチョウ・オオバヤシャブシ・アカマツ・ナラ・クリ・オリーブ・ハンノキ・オオアワガエリ・カモガヤ・ヨモギ・ブタクサなどが知られています。まあ、大人の解釈として花粉症の大半を占めるスギ対策をすればいいんじゃない、って考え方もありますけど、それじゃ厳密には花粉症ゼロではありません。例えばこんなデータがあります。

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これは東京都福祉局が平成19年に行った調査で大田区における花粉症の症状を訴える住民の血液検査で花粉の抗体の有無を調べたものです。血液検査で抗体が確認された(in vitro) といって必ずしもその人が花粉症(in vivo) を発症するワケではないのですが

伐採等でスギのみの対策を行っても花粉症ゼロはかなり難しい、というか不可能だと考えられます。

花粉症ゼロで検索すると、あれあれこんなサイトがトップに❗

花粉症ゼロとか、その関連キーワードで検索するとこんなサイトが上位表示されました(私のPCだけかもしれませんけど)。

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https://www.tamahome.jp/planttrees/

この会社は結構めだつテレビCMを流しているので、私も知っていました(この会社が小池さんや希望の党のスポンサーであるとか、献金をしているとかの調査はどっかの政党にお任せします)。

しかし、この会社の表現は花粉症ゼロではなく、花粉症を減らす活動と述べています。希望の党の「しるべ」の花粉症ゼロとは大きな違いがありますよね。

希望の党はせめて「スギ花粉症ゼロ」との公約であったのなら可能性はあります

花粉症ってスギだけじゃないことを側近の方はご存知なかったのでしょうか?

一年中様々な花粉がとびかっているわけで症状が重い人は一年中花粉症状態ですよ。

花粉症ゼロを目指すのはいいのですけど⋯実現は不可能だと申し上げておきます

全て植物の花粉による花粉症をゼロにするのは、希望の党の小さな文字を頼りにした場合、

公約と解釈される花粉症ゼロはまず伐採等だけでは不可能であることはご理解いただけたと思います。

どんな花粉症も対症療法ではなく、花粉症患者さん全員に根治的な治療(減感作療法がありますが、現時点で治療可能なアレルゲンはスギのみであり、効果も100パーセントではありません)を行ったり、あるいは全ての花粉症を治す特効薬が開発されたら、それは花粉症ゼロと言い切ることが可能となります(アレルギーのメカニズムやアレルゲンの多様性を考えるとかなり難しい)。

とにかく健康問題を1つは入れ込んだ公約を掲げましょうよ的なアドバイスをもとにして「花粉症ゼロ」を打ち出して、一部の人の失笑を買ってしまった希望の党のようです(医師の候補者もいるのに何してたんだろう)。

公約であろうと、しるべであろうとマニュフェストであるのなら、weblio辞書によると「具体性を欠く選挙スローガンや公約と異なり,政策の数値目標,実施期限,財源などを明示する」ことがマニュフェストの正しい意味です。党の公式サイトで花粉症ゼロを掲げているのは間違いありませんので、花粉症ゼロは残念ながら落選した(棒)鳥越俊太郎都知事候補の「がん検診100パーセント」と同じレベルに感じてしまいました。

まあ、他の党の公約もアレって感じる公約がありますけどね(医療ものの公約として、どっかの党が子宮頸がんワクチン再開反対って書いてあったようなきがするけど⋯バズフィードに各政党の医療系の公約がまとめられています)。

昨夜NHKの政見放送で希望の党はこの花粉症ゼロに関しては一切触れていませんので、公約発表後に「これはさすがにマズイ」「めちゃツッコミ入れられちゃう」なんて考えたのでしょうか?どう考えてもその場の思いつきで掲げた公約(しるべORマニュフェスト)なんだと察しております。

ある方が言っていました、選挙って公約の中から1つでも自分の考えにあったものを掲げている候補者あるいは政党に投票するしかないんだよ、って。さあ、来週の日曜日は投票です、とにかく選挙には行きましょうね❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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