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「喫煙後45分間も大学構内に立入禁止」が強く支持されるべき理由。

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よく言われるのは喫煙によってみんながみんな肺がんになるわけじゃないじゃん、自分の父親はヘビースモーカーだったけど肺がんにならなかったよ的な論法。

でも、これは完璧間違い。疫学とか医療統計学を持ち出すと、そんな難しいことわかんない、って人はこれで納得するかな?

隣の人が宝くじに当たったら、自分も宝くじに当たる⋯これが受動喫煙問題

飲食店で隣に座ったオッサンが宝くじに当たった、だから自分も宝くじが当たるかあ?⋯これは全くあり得ないことは十分納得していただけると思います。でもタバコの場合飲食店で喫煙オッサンが隣に座った、自分も肺がんのリスクが上昇する⋯これが受動喫煙問題。

受動喫煙で科学的手法によってわかっていることは受動喫煙によって肺がんのリスクが1.3倍になるということ。喫煙オッサンが隣でタバコを吸うと、宝くじは当たらないけど肺がんのリスクが高まる、ということになります。

じゃあ、1日1本くらのタバコは許してよ、と思っても脳血管障害のリスクは1日20本吸う人のたった半分にしかなりません(「Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies in 55 study reports」)。だからこそ

「喫煙後45分間」も大学構内に立入禁止 北陸先端大が全面禁煙に踏み切った理由

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といった対応をする施設が出てくるのです。

ということはがん基本計画 受動喫煙 数値目標を断念⋯つまり受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案は全くの骨抜きになってしまっています。

実はタバコと無縁の人にとって能動喫煙はもとより受動喫煙もあまり関心がない?

周囲にタバコを吸う人がいない人が一番よくいうタバコ問題は「飲食店にいって喫煙席があると臭い」だと思います。

タバコの臭いを感じるということはその物質を吸入しているから、それが受動喫煙ってことなんですけど、臭いだけじゃなくても刻々と健康被害を受けていることにもなります。受動喫煙に関して肺がんのリスクが1.3倍になるとのがん研究センターの結果についてがん研究センターは「日本人のためのがん予防法」で受動喫煙防止を明確な目標として提示と強く主張しています。

これに対してJTが反論したところ

受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解

とがん研究センターのがん対策情報センターの若尾文彦医師(どうでもいいことだけど、私の同級生)がガチで怒っています(日経メディカル)。

しかし、この日本たばこ産業vsがん研究センターの論争を知っている人は喫煙問題特に受動喫煙問題に関心のない人にとってあまり知られていないのではないでしょうか?

喫煙後45分は他人様の健康に危害を加えている可能性について

国会で受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案が提出されるのですけど、これが完璧に骨抜き。本来ならば受動喫煙を0にしなければならないのに、受動喫煙被害防止に関しての数値目標が定められていません。

がん基本計画 受動喫煙 数値目標を断念 毎日新聞2018年2月20日

男性に比べて喫煙率が低い女性、でも家族やパートナーあるいは職場で受動喫煙の被害を受ける可能性が高いのは子供であり女性でもあるんです(もちろん逆もあるけどね)。ということはネット上では非喫煙者による受動喫煙は常に激しく問題提起されているんですけど、なぜか被害を受ける可能性のある人はあまり関心がないような気がしないでもありません。多分、お昼や夕方の情報番組で受動喫煙問題が取り上げられることが少ないからかなあ、なんて感じております。

全面禁煙だけでなく喫煙後45分間構内立ち入り禁止に踏み切った北陸先端大の記事中に

「今年の3月に専門家を呼んで講演会をした際に、『喫煙後、45分間は肺から有害物質を吐出している』との説明があった。そのため、受動喫煙防止措置として、喫煙後45分間は本学の敷地内及びJAIST Shuttle(シャトルバス)車内への立ち入りを禁止している」と担当者

と書かれていて、これを支持する医学論文を探したのですが、今の所発見できません(じゃあ、エビデンスねーじゃん、っと反撃されるかもですけど)。

たばこを吸ったことは10日経過してもわかっちゃんだけどね

タバコを吸うと一酸化炭素をはじめとしてポロニウムなどの有害物質4000種類が体内に入り込むことはご存知だと思います。さらに有害物質はたばこを吸った後も呼気中に含まれていて、例えば一酸化炭素に至っては最低8時間も息に含まれています(予想より大きい受動喫煙の害)。となると喫煙後45分間構内立ち入り禁止であっても受動喫煙被害に会う可能性も出てきちゃいますね。

生命保険に加入するときに非喫煙者だと「非喫煙者料率」というのが適用されて掛け金が安くなります。喫煙者が自分はタバコは吸いません、と自己申告しても「コチニン検査」という検査を受けなければなりません(ニコチンじゃなくて、コチニンだよ)。このコチニンはニコチンが体内に入り込むことによって作られる化学物質で、保険料を安くしようと一時的に禁煙しても10日間程度は検出されてしまいます。さらに一時的に禁煙するために、ニコチンパッチやガムで代用してもコチニンは検出されるんです。このコチニンは受動喫煙によっても確実に検出できますので(BMJ 2009;338:b462)、周囲に喫煙者がいると本人は喫煙しなくても生命保険の掛け金が高くなってしまう可能性も出てくるんですね。

つまり受動喫煙は周囲の健康を損なうリスクを高めて、金銭的な不利益ももたらしてしまう可能性も大。全面禁煙だけじゃなくて、喫煙後45分間構内立ち入り禁止は強く支持されることなのです⋯でも、多分奥様番組や情報番組では取り上げないだろうなあ、残念です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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