【発酵神話崩壊】味噌は、がんを抑制して脳卒中を防いで免疫力も上げちゃうってホント?

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海外でも発酵食品である味噌はヘルシーであると考えられています。

味噌は健康に良い発酵食

https://www.bbcgoodfood.com/howto/guide/health-benefits-miso

味噌はがんを抑制して、脳卒中も防ぐとの話が出回っていますが、それって本当なんでしょうか?

日本の伝統的な発酵食品は健康に良いのか?

世界的にヘルシーな食事を求めるムーブメントの一つとして和食が注目を浴び、結構な年数が経過しています。日本の伝統食である味噌、醤油、納豆、ぬか漬けなどの発酵食品が、からだに良いとの風潮に流されつつ、そもそも発酵食品って本当にからだに良いのか?そもそもからだに良いとの表現はどのような定義があるのか?と考え込んでしまいます。

先日もこのような記事が目に止まりました。

味噌は色が濃いものほど、抗酸化作用と活性酸素除去作用を持つメラノイジンと呼ばれる褐色色素が多い。動物実験では、味噌にはがんなどの抑制効果が報告されている。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83613?page=4

この記事は現在多く見受けられる健康情報を根本的に考えさせてくれました。動物実験でがんの抑制効果が確認されたら、ヒトにとってもがん抑制効果があるの?健康関連記事で信頼度を高めるために研究段階のものをエビデンスとして提示するものが多く、ヒトに対する効果は実証されていない話を取り上げるものが多いからです。/p>

発酵食は特に意識高い系の人々には根強い人気があります。

さようならクロワッサン、発酵食信仰をこじらせたようですね。

さようならクロワッサン、発酵食信仰をこじらせたようですね。

和食文化は発酵と深い関係にあります。ですが発酵と腐敗は同じで、人間が生きていく上で有用な場合は発酵、害になる場合を腐敗と呼んでいるにすぎません。おにぎりは美味しい発酵食という話があります。知らない人が握ったおにぎりは食べられない人は少なくありませんが、なぜ嫌悪感をもってしまうのか?そのヒントは発酵と腐敗にある!?

味噌を一番多く食べている県はがんの死亡リスクが高い!

味噌に恨みがあるわけじゃないけど、日本の伝統的な発酵食品の代表例として、「味噌」を考えてみます。味噌がヒトに対しても、がんを抑制する効果があるのであれば味噌を一番消費する都道府県のがん死亡リスクも低いはずです。

都道府県別に味噌の消費量を調べたデータによると岩手県と長野県が上位になっています。

画像

https://todo-ran.com/t/kiji/11495

国立がん研究センターのがん情報サービスで岩手県の75歳未満年齢調整死亡率を調べると、岩手県はがんで亡くなった方の率は他の都道府県と比較して低いとは言えません。

都道府県別全がん75歳未満年齢調整死亡率
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/age-adjusted.html

長寿であるとの評判の長野県であっても、国立がん研究センターのデータを見る上では男女ともにがんによる死亡率は明確に他の都道府県と比較して低いワケではないことがわかります。

味噌によってがん抑制結果が動物実験で明らかになったとしても、すぐにヒトに対してもがん抑制効果があるとは言えないのではないでしょうか?

味噌は塩分たっぷりなのに脳卒中の予防効果がある?

脳の血管が詰まったり、脳の血管が破れたりする脳卒中の最大のリスク因子として高血圧があります。高血圧の原因の一つとして過剰な塩分摂取が多くの研究によって確認されています。

味噌は塩分がたっぷり含まれていますよね、そうなると、

味噌を多く食べる → 血圧が上がる →脳卒中になる

との流れになるはずなのに、味噌には血圧の上昇を抑える効果がある、との研究結果があるのです。

広島大学【研究成果】味噌が脳卒中を抑制 ~日本人の長寿の秘訣が明らかに~

味噌が脳卒中を抑制

https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/40988

しかし、味噌の消費量の多い岩手県や長野県における脳梗塞による年齢調整死亡率は男女ともに低いとは言い難い結果になっています。

脳梗塞の年齢調整死亡率の年次比較

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/other/05sibou/04.html

発酵食品である味噌を他の都道府県より消費していたとしても、脳梗塞による死亡リスクが低くなるとは言えないように見えちゃうのですけど・・・。

「発酵食品」で腸内フローラを整えて免疫力は高まるのか?

健康に関心が高い人々の間で発酵食品がブームであるとともに、腸内フローラ(腸内細菌叢)を整えることもブームです。発酵食品を取り入れて腸内フローラを整えて免疫力を高めよう!的な健康関連記事がネット上には溢れかえっています。

微生物の働きによって発酵食品が作られるのですから、当然腸内フローラに何らかの影響を与えることは間違いないと考えられます。しかし、味噌を味噌汁として摂取した場合、加熱しているのですから味噌に含まれる微生物は死んじゃうんじゃないの。

さらに免疫力はどのような指標で計測するのでしょうか?そもそも、たった一つの食材で免疫システムが人体に大きな良い影響を与えるのでしょうか?

発酵食+腸内細菌+免疫力=怪しい健康法

味噌などの発酵食が何らかの病気の予防効果がある可能性が動物実験によって明らかになったとしても、ヒトに対して効果があることを強く裏付けることは現時点では結論を出すのは早すぎると考えられます。

腸内フローラはかなり強くヒトの機能と結びついているのは間違いは無さそうであっても、腸内環境が整ったことはどのような検査で知ることができるのか疑問だらけです。

さらに、めちゃくちゃ複雑なヒトに備わった免疫システムを免疫力と一言で表現できるのワケないじゃん❗と言いたくなってしまいます。

発酵食品は日本だけではなく、世界中で愛されている保存が可能な伝統食です。美味しいから人類は発酵食品を食べ続けてきた、長期保存が可能なんで愛されてきた、との単純な理由でいいんじゃないのかなぁ。

6月は食べ物が腐りやすい時期と言われています。発酵は腐敗と同じ現象であることをくれぐれもお忘れなく。

発酵鍋が大ブーム!流行中に水を差す「食中毒は大丈夫か?」

発酵鍋が大ブーム!流行中に水を差す「食中毒は大丈夫か?」

トレンドとか大ブームって誰かが意図的に仕掛けたものが多かったりするのですが、令和初の鍋のトレンドというものがあるようで、発酵鍋が大ブームとかトレンド入りだとかの記事がウェブ上で目に付きます。私としては発酵食品神話もここまで来ちゃたんだ、と考え発酵鍋ブームをちょっとイジってみます。

腸活+発酵=健康に良い、もかなり怪しげだと思いますぜ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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