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「19歳女性、鼻の整形手術で死亡」記事を深読みしてみました。

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中国の美容外科(一般的には美容整形とか整形とか呼んでいるけど厚生労働省が決めた標榜科目では正しくは美容外科)で悲惨な事故というか事件があった模様です。

中国だから起きた美容整形に伴う死亡事故、って考えるのは間違いだと思います

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Yahoo!ニュース(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190110-03205820-clc_toho-cnより)

当院では鼻を高くする隆鼻術と呼ばれる治療は行わず、鼻を高くしたり鼻筋をスッキリさせるために使用されるプロテーゼに関するトラブルを解決する修正手術・再建手術に力を入れています。

日本でも多数行われている鼻の手術は鼻を高くする隆鼻術がほとんどです。10代でも鼻にプロテ入れたいなんて言い出す時代、それくらい多数行われているわけですが、残念ながらかなり安直で雑な手術が目立ちます。隆鼻術以外では、鼻を小さくする鼻翼縮小手術、鼻先を高く細くする鼻尖縮小手術くらいであり、麻酔は局所麻酔で行います。

しかし、今回亡くなった中国の19歳の女性の場合、報道記事を見る限りではなぜか全身麻酔によって鼻の手術を行なっています。そして整形手術に伴う全身麻酔による悪性高熱症が死亡原因と中国の美容整形医院は説明しているようです。

確かに全身麻酔時の合併症として「悪性高熱症」は麻酔科医や外科系医師が死亡リスクが高い疾患として恐れています。

悪性高熱が発症する確率は全身麻酔10万回に1-2回と麻酔科学会は報告しています(http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/guideline_akuseikounetsu.pdf)。

私が大学病院に勤務していた数十年前悪性高熱は恐るべき全身麻酔合併症ではあったのですが、ダントロレンという薬の登場で死に至る例は当時であっても、かなり減少していたはずです。

今回の綺麗になりたい、自分の気になる体の一部を修正したいとの夢をもって鼻の整形手術に臨んだ19歳の女性の麻酔関連トラブルによる死亡の大きな原因は、美容外科医の安直かつ安易かつ雑な気持ちんで手術を行なったことである❗と考えますし、美容系の手術だから的に軽薄かつ経験不足な医師は日本にもいる可能性が大きいことをお伝えしたいと思います。

日本でも美容整形手術に伴う死亡事故は起きています

残念ながら日本でも美容整形手術に伴う死亡事故は起きています。私が知る限りでは安易な脂肪吸引手術による死亡例がダントツ1位です

以前こんなブログを書きました。

脂肪吸引の危険性「死亡率ってどのくらいなのでしょうか?」

脂肪吸引の危険性「死亡率ってどのくらいなのでしょうか?」

体重減少を目的としない脂肪吸引の危険性についてFDAはしつこく注意喚起しています。アメリカと日本とでは医療はもちろん美容に関する環境が異なりますが、その点を踏まえて脂肪吸引について医師が掘り下げます。

美容整形先進国である米国でさえ、脂肪吸引手術による死亡事故は多いのです。

あくまで地域密着型というヘンテコな美容医療を行なっている当院五本木クリニック美容部では、入院施設が大きな理由となって全身麻酔が必要な美容整形手術は行なっていません。死亡事故が起きた中国の美容整形医院も患者さんが悪性高熱症と思われた時点で他院へ搬送しています。

全身麻酔が必要な美容整形手術を受けるなら入院施設が医療機関でお願いします❗!

注意:私は一般の手術に関して全身麻酔を必要以上に恐れる必要は無いと考えていますので、誤解無きようにお願いします。

万万が一、全身麻酔時に生命を脅かす合併症が起きたとしてもそれに対応できる体制が出来ていれば命が救われる可能性が高くなります。

麻酔科学会は悪性高熱症に対して以下のような対策を打ち出しています。

  • 適切な知識の整理
  • 麻酔環境の整備
  • 外科系医師と手術スタッフの連携
  • 短期間に集中医療を行われる用意をしておく

悪性高熱症は稀にしか起きないと考えられていますが、全身麻酔を行う医療機関は最低限上記の準備をする必要があるでしょう。

悪性高熱症の症例数と死亡率の推移グラフ

https://www.orphanpacific.com/patient/column_malignant_hyperthermia/

悪性高熱症の発症数も年々減少して、さらに死亡率は激減していて、死亡者数は少なく稀な合併症であり死亡するリスクも極端に少ないものなんですけど、なぜ今回のような悲劇が中国で起きてしまったのでしょうか?

美容外科医って手術自体を舐めきっているんじゃないの?

入院施設無し、麻酔科医不在、経験不足の美容外科医が担当なんて感じの美容系クリニックが日本でもかなり目立ちます。

コンプレックスを解消して美しさを可能とする美容医療を安全に受けるために

当院が保険診療の加えて自由診療である美容外科および美容皮膚科を始めた時点で保険は私が担当、美容系は専門医師が担当しておりました。全身麻酔による手術は行なっていませんが、美容系の医師は麻酔科勤務歴があり、恥ずかしながら私も万が一の救急対応に関しては自信がありました。

ある時、業務拡張を試みて美容を担当してもらう医師を増員したことが一瞬あったのですが、こりゃ酷いテクニック、血圧の測定方法も知らなければ採血も出来ないし、メスの握り方は変だし、naht(針で縫うこと)時の持針器の手首の返し方も正しくないし、糸を切る時のハサミを自分に向ける方向も逆、という医師免許保持者でした(もちろん、速攻で辞めていただきましたけど)。

しかし、さらに驚愕するような事態が発生していました。

そのダメ医師は間も無く某美容整形クリニックの院長に就任していたんです❗ゲッ❗

地元の方が気軽に治療できることを目標として開設した当院五本木クリニック美容部もかれこれ20年近くになります。今の所、事故は起きていませんし、美容系クリニックの中には必要経費的に考えているツワモノもいる訴訟もゼロです、今の所。

2019年も地元密着型というヘンテコな方針の当院は無事故で診療を行なっていくために、定期的な勉強会や知識のブラッシュアップに時間を惜しまないで邁進していく所存です。

おまけ

今、美容担当の松下医師からこの中国の事故はなんで全身麻酔なのかについての一考が届きました。鼻の手術の場所、骨切り手術は基本全身麻酔、また、鼻中隔延長手術でも時々全身麻酔で行うことがあります。ドナーとして肋軟骨を使う場合も通常全身麻酔で行います、とのことでした。

こちらもどうぞ「年間の事故は10万件!とんでもない中国の美容医療とは?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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