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素人さんがネット検索で病状から正しい病名・治療方法にたどり着くことは可能か?

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朝起きると突然左手の小指が曲がったままになっていました。なんじゃこりゃ、と強引に小指をまっすぐにしようと試みても自力ではまっすぐになりません。右手を使って曲がった小指を伸ばすと⋯ビヨヨンン、って感じで曲がっていた小指が真っ直ぐになりました。

突然バネ指になってしまった場合、正しい治療法をネットで見つけられるか?

「うわぁ〜、バネ指になっちゃった」と叫びながら家人に異常を告げたのが二週間ほど前。医師である私の場合、左手の小指が使えなくて困るのはパソコンで電子カルテを打ち込むことなんですが、実は今年に入ってから電子カルテを音声入力にしたので、業務にはあまり差し支えはありません。

私たち医師がネット検索で使用するキーワードと素人さんのキーワードが全く違う傾向があることに気がついて以来、

素人さんは、体の異変に気がついたときにどのような方法で病気に関する情報をネットで検索するのか?

以前から興味がありました。

私は整形外科は門外漢なので、今回医師である私は自分のバネ指に関してどんなキーワードで、どのようなサイトで医学情報を収集し、どこの医療機関を受診して、どのような治療法を見つけたか、その流れを公開します。

私はたまたま医師であったために、「バネ指」という言葉を知っていたのですが、バネ指という病気を知らない人はどんなキーワードでバネ指という診断名にたどり着くかを試してみました。

症状を素直にキーワードとして検索してみました

「朝、突然小指がのびない」で検索してみるとMedical Noteというサイトがトップ表示されました。このサイトの目次から推察すると突き指とは全く違うし、骨折でも無い。指は腫れてもいませんし、痛みが慢性化しているわけでもない。

「指を動かすと引っかかりがある」との私の症状と似た項目はここにありました。

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Medical Note「指が痛い

私の場合、指が痛い、は全くあてはまりませんけどね。

この記事を下の方にかなりスクロールしたら、「ばね指」というリンクがありました。でも、私は自分の症状が「ばね指」との知識があるためにこのリンクに気がつくのであり、一般の方が「朝、突然小指がのびない」とのキーワードで検索した場合、この記事はあまり参考にならない可能性があります。

Googleさん、もう少しアルゴリズムを研究してくださいませ。

検索結果としてトップであっても病気の場合はあまり参考にならない可能性がある❗

という貴重なデータを得ることができました。二番目の結果として表示されたのはNHKの健康CHという見慣れないサイト、ここにはバッチリとばね指について書かれています。

腱鞘炎が進行すると「ばね指」と呼ばれる症状が出てきます

「指が痛い」「曲げた指が伸びにくい」腱鞘炎とは より

げっ❗ばね指って病名じゃなくて、症状の名称だったのね(汗)

さすが天下のNHK、健康情報には力を入れつつ、素人さんが検索しそうなキーワードをバッチリ把握しているんでしょうね。

病名がわかったらガイドラインをチェックしてみよう

様々な病気の場合、専門の学会によって標準治療のガイドラインというものが作られています。「ばね指 ガイドライン」をキーワードとして検索してみると日本整形外科学会の「ばね指 症状・病気を調べる」がトップに表示されます。

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ばね指は腱鞘炎が進行した場合の症状のようです。

私の場合、左手の小指が腱鞘炎になった記憶はないのですが、症状は整形外科学会のサイトに書かれているものと同じです。

指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、腱鞘炎になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。 朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。 進行するとばね現象が生じて「ばね指」となり、さらに悪化すると指が動かない状態になります。

原因の項目に「更年期の女性に多く」「出産期の女性に多く」そして「手の使いすぎ」「スポーツ」が原因となるようですが、どれもこれも全くあてはまりません。このような疫学を元にした健康情報は必ずしも当てはまらない場合もあることに注意してください。

ばね指の治療方法としては固定やステロイド注射が主なもののようです

気が短い私としては「この注射は有効で」の記載に魅了されてしまいました。

しかし、ステロイド注射で改善しない場合は手術が必要とも書かれていますので、もう少しこの「ばね指」について調査が必要です。そこで英文の医学論文を調べました。

バネ指に関する論文を探してみました

ばね指は英語では「trigger finger」と書きます。そこで「trigger finger pubmed」と謎の単語「pubmed」をプラスして検索してみると、あら不思議、英文の医学論文がぞろぞろと表示されるではないですか(棒)。

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検索結果のトップには「Trigger finger: etiology, evaluation, and treatment」と私が求めていた情報が満載されているだろう医学論文が表示されています。

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英語に非常に難がある私の場合はGoogle翻訳によってこの論文に目を通します。すると日本語翻訳された論文のタイトルは「誘発指:病因、評価、および治療」となってしまいました。

なんだ⁉誘発指って❗

ちなみに誘発指をGoogle翻訳すると「trigger finger」になり、「trigger finger」をGoogle翻訳すると「トリガーフィンガー」になります(この辺りで素人さんは脱落するかも)。

まあ、病因や病状の程度そして一番求めている情報である治療方法がこの論文を読むことによって得られることになります。

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日本の整形外科学会の治療方法も英文のバネ指関連論文の治療方法もステロイド注射が記載されていて、指を安静な状態に保つ固定方法では即効性が期待できませんのでステロイドの注射によって回復を期待したいと決断しました。

注意:本格的にpubmedを使用して医学論文を検索するには、今回私が使用した方法では十分ではありません。詳しく調べたい方は「pubmedの使い方」(東京大学医学図書館)等を参照してください。

バネ指の治療はステロイド注射、この場合の副作用もチェック❗

ばね指の治療にはステロイドを注射する方法が効果が高そうです。「ばね指 ステロイド注射」で検索してこの記事を見つけました。

青森労災病院「ばね指について (http://www.aomorih.johas.go.jp/guide/umineko/2014/12.php) 」

この記事からばね指の治療に使用するステロイドは「ケナコルトA」であることがわかりました。そこで「ケナコルトA 添付文書」のキーワードで使用する薬剤に関する情報を収集します。

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前掲医学論文より

げっ、ステロイドを23Gの注射針を使って、でこんな痛そうな所にブッすっと注射かあ⋯。

ケナコルトAの効果・効能に「腱しょう内注射」の項目があり、

関節周囲炎(非感染性のものに限る)、腱炎(非感染性のものに限る)、腱しょう炎(非感染性のものに限る)、腱周囲炎(非感染性のものに限る)

Pmda「ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注

このような記載があります。

Pmdaは英文「Pharmaceuticals and Medical Devices Agency」の略で独立行政法人医薬品医療機器総合機構が公表している日本で使用される薬剤の効果効能から副作用まで網羅したものです。

製薬会社が出している添付文書より一般の方は見やすいサイト記事になっているかと思われます。

念のためにケナコルトAの副作用を見てみると、一般的なステロイド剤の副作用が中心です。

例外的な事項として「その他の副作用」も念のためにチェック。頻度不明、という注意書きの後に、なんでこんな副作用が起きるんだ?的なものが羅列されています。

基本的に添付文書に「頻度不明」と記載されている場合はかなり稀な副作用および副作用かもしれないけど、因果関係は不明、あるいは薬剤の性質から考えて因果関係は無いけど報告があったので記載しておきますね、というものと考えて大間違いはありません(この辺り、一度誰でもわかりやすいようにブログにしても良さそうかも)。

そんなこんなで、最終的にケナコルトAを使ってばね指の治療を受けようと決心しました。次にどの医療機関で治療を受けようかの選択になります。昨日、こんなブログを書きました。

病気になった時にどこに相談すれば良いか?信頼できる相談先はここ!

「ばね指治療の権威」「ばね指の名医」とか「ばね指治療 神の手をもつ医師」でなくても、近隣の整形外科クリニックで十分治療可能な病気(正確には病状らしい⋯)と判断して、早速友達の整形外科医に電話してみました。

私「あのー、なんか俺、ばね指になったっぽい。ステロイドの局注してくれない?」

後輩の整形外科医「桑満さん、確定診断できているんですかあ???診てみないと治療できないっすよ〜」

病気の診断は医師にだけ許されたものであり、生兵法的な自己診断は医師であってもリスキーです。診断・治療は専門の医師にゆだねましょうね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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