夜にトイレに起きる回数が多いと寿命が短くなる、これ本当の話だよ❗

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泌尿器科医である私が日々の診療で患者さんに伝えていることのひとつに夜間の尿の回数と寿命の関係があります。

夜間にオシッコに起きる回数が多いと、その原因を診断して治療するために泌尿器科を受診するのは当然の流れです。

しかし、日々の診療に際して患者さんが「先生、夜に2-3回オシッコに起きるのは年齢からして普通ですよね」とおっしゃることが多いです。「友達に相談したら、年のせいだから普通だよ、って言われるんですけど」との言葉もよく耳にします。

夜間頻尿が多ければ多いほど健康寿命は短くなる

多くの患者さんは「ええっー、寿命が縮まるのですかあ?」とのレスが帰ってきます。年のせいで夜間にオシッコに起きていた、周囲の友人知人も同じように夜中に頻回に尿に起きる、だからある年齢に達すると夜間頻尿は普通である、との解釈をしてしまうのです。

一般的に夜にしろ昼間にしろ尿の回数が多い(頻尿と呼びます)であることを医療機関で治療したとしても、生活の質を改善することが主目的であり、まさか寿命と深い関係があるとは考えられていないようです。

夜間頻尿が多いと寿命は縮む理由

https://bedroom.solutions/identifying-sleeping-disorder-nocturia/

ではなぜ夜中、睡眠中にオシッコに行く回数が寿命とくに健康寿命と密接な関係があるのかを解説します。

夜間の尿の回数と寿命の関係はエビデンスがあります。

最近エビデンスという言葉をよく耳にします、特に医療関連情報に関しては「エビデンスあるの?」と昔からその地域で言い伝えられていたこと、おばあちゃんの知恵的な情報、民間で伝わっている健康にまつわる伝承等に対して「エビデンスあんのかよ〜」的な質問をするのは無粋です。

一時期ネット上にトンデモ医学情報が急増した時にエビデンスが全くないものが、まことしやかなお得な情報的に扱われていて、多くの真っ当な医師は「エビデンスを提示してください」と悪質サイトをブログやSNSで指摘しました。そのためかお客様の個人的感想レベルの研究を金科玉条として、「エビデンスあり」と図々しく明記してあるトンデモ医学情報サイトが雨後の筍のように現れだしています。

夜間頻尿と寿命、特に健康寿命の関係についてはエビデンスがあります

エビデンスがある、と言ってもそも

そもエビデンスに関しても医学関連の場合はエビデンスレベルという考え方があり、信頼度の高いエビデンスから、あまり質が良くなくいくら論文になっていたとしてもエビデンスが低いものもありますので注意が必要です。

画像

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-22650122/22650122seika.pdf

私たち泌尿器科医が夜間頻尿を治療することは生活の質の向上(QOLの改善)だけではなく、寿命を延ばすと患者さんに説明するときの一次ソース的なエビデンスは東北大学泌尿器科の「高齢者における夜間頻尿と死亡率・骨折発生の関連」というタイトルの大規模疫学調査を元にした研究結果です(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21592064/21592064seika.pdf)。

夜間にオシッコに起きると寿命が短くなる理由はこれです

面倒な医学用語や統計学の基礎知識がなくても、夜中にオシッコに起きることが健康寿命が短くなる理由を簡単に理解できます。私が日頃患者さんの説明に使用しているのは睡眠中にオシッコに行く→高齢のためにふらつく→転倒する→骨折する→入院する→歩けなくなるという流れです。

さらに高齢者の場合、不眠がちであるために睡眠導入剤を服用している場合が少なくありません。全部が全部という訳ではないですが、睡眠導入剤系の薬の副作用として筋力が低下するためにふらつきが出たり、薬が効きすぎて千鳥足になることもあります。

睡眠導入剤を服用して就寝→オシッコに起きる→ふらついて転倒→入院

という場合もありますし、奥様思いの方は

睡眠中に尿意が→電気をつけると奥さんが目を覚ます→暗いままトイレに向かう→暗くてよく見えないので転倒→入院

という事態もなくはないです(臨床医ならまず間違いなく、このような例を経験していると思います)。

東北大学の研究やその後の論文等によって、睡眠中に2回以上オシッコに起きる人は死亡率が高まる、夜間頻尿があると15パーセント前後の人が転倒・骨折をすること、夜間頻尿が3回以上ある人のうち3人に1人が4年以内に死亡している、などのことがわかってきています(ちょっとした理由があるために、詳細な論文等に関しては、個別でお問い合わせください)。

テレビCMの夜間頻尿改善薬は果たして本当に効果があるか?

毎日のように新聞で「夜そわそわする方」とか「夜忙しい方」「ぐっすり眠りたい方」なんて感じの表現で、それらを改善しますよ、と主張しているサプリメントや市販薬の広告が掲載されています。これらのサプリメントや市販薬が直球的に訴えたい効果効能は夜間頻尿の改善なんですが、薬機法等の縛りによってこのような表現を取っているようです。

夜間頻尿の原因として様々なことが考えられ、例えば前立腺肥大があるから夜間頻尿が起きている、という簡単なことではないことが多いのです。それらの原疾患を明確に診断しないと、高額なサプリを服用しようが、有名人が効果を体験した市販薬を飲もうが夜間頻尿が全く治らないことは少なくありません。

泌尿器科といえば、痛い恥ずかしい検査をされちゃう

このように思い込んでいるオッサンやおばさま、泌尿器科は常に痛い検査をする診療科目ではありませんし、全員にもれなく恥ずかしい検査をする訳ではありません。

ベッドに入っても朝起きるまでに2回以上オシッコに起きる、という症状があるかたは老若男女問わずに一度は泌尿器科を受診してください。たかが夜間頻尿となめていると、ひょっとして寿命を縮めるかもしれませんし、長期の入院ライフを送る羽目になってしまいかねません。

【大きな誤解】泌尿器科って恥ずかしいし、痛い検査されるし、と受診を控えている方へ

【大きな誤解】泌尿器科って恥ずかしいし、痛い検査されるし、と受診を控えている方へ

病気になっても受診したくない科目ベスト3入りが確実な(※n=5)である泌尿器科を専門としてしまった医師が、受診を躊躇している人々が泌尿器科に対して抱いているであろう誤解を解いてみます。オシッコのことで悩んでいる人、泌尿器科を受診するのは恥ずかしくないし怖くないし痛くないんだよ!ってことをお伝えします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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