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「タウリン1000mg配合❗」と強調している栄養ドリンク、そもそもタウリンって体にいいの?

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タウリン1000mg配合って聞くと、なんか凄そうな気がしてしまいます。1グラムをわざわざ1000ミリグラムと表現しているせいかもしれません。タウリン1g配合っていわれても(笑)

ところでタウリンってなにかご存知ですか?

栄養ドリンク・エナジードリンクの入っている、なんか元気が出る、やる気が出る栄養素?といったイメージではないでしょうか?今回はタウリンって何物?本当にカラダにいいの?問題を取り上げます。

増量に弱い人って多いけど、タウリンが増えるとどんないいことがあるの?

リポビタンは日本人に「ファイト」の数え方は「発」と教えてくれた、印象深いCMを流してくれていました。宣伝文句で「タウリン1000mg配合」という、これまた興味深い成分をウリにしていますよね。上位クラスのリポビタンDスーパーはタウリンがなんと2000mg、さらにリポビタンDマクシオに至ってはタウリンが3000mgも配合しているんです❗量が多ければ多いほど、なんかの効果が出るような気がしますけど、

そもそもタウリンってどんな働きをする成分であるか?

知らない人が多いと思います、タウリンの効果。海外でも栄養ドリンクは人気で、一般的にはエナジードリンクって呼ばれていて、日本では働くオッサンの強い味方的なイメージですが、欧米では学生が勉強を頑張るときに愛飲することが多いのです。

「タウリン1000mg配合❗」と強調している栄養ドリンク、そもそもタウリンって体にいいの?___五本木クリニック___院長ブログ
こんなに種類があるなんて知らなかった❗一部医薬品扱いだし、隙間があるんでまだまだシリーズがでるんだろうな(大正製薬「リポビタンシリーズ紹介」より)。

リポビタンDに限らず、栄養ドリンク・エナジードリンクはタウリンだけでなく、カフェイン、アルギニン、ビタミン、そして糖分を含むために「飲み過ぎに注意しましょう」と米国のFDAは勧告しています(http://www.nytimes.com/など)。その他の成分もそれなりの働きをしてくれるんでしょうけど、「タウリン」って名前がどうも気になりますし、リポビタンはタウリン配合を強調しています。

さらにライバル商品に至っては「リポビタンの3倍のタウリン配合」と宣伝して販売されているものさえあります(これって具体名を挙げての比較広告っていいのかな?)。

日本がその昔、まだまだ貧しかったころトヨタと日産が排気量を争った時代を知っている私としては「量が多けりゃ、そりゃ効果もあるし、値段も高くて当然」と脊髄反射的に反応してしまいますが、医師として考えたとき「量が多けりゃ副作用も増える」「量が多くても効果が量に比例しない」という余分な知識が邪魔をして素直になれません。

そこで果たして「タウリンは量が多ければ効果は増強されるか」「そもそもタウリンって何?」というところから整理をしてまいります。

タウリンってアミノ酸に似ているけど、アミノ酸じゃないんですね

薬の名前って最後が「ン」で終わるものが多いですよね。日本だけでも膨大な数の製薬メーカーがあり、同じ成分でも違う名前で販売されるので、一時期「○○ン」の○○の50音全ての組み合わせが商標登録されていた、なんて話もありました。タウリンも「ン」で終わっていてすぐに薬の名前、あるいは成分名とわかります。

タウリンは200年くらい前にドイツで牛の胆汁から抽出された成分であり、消化作用を助ける働きがある「含硫アミノ酸」とされています。それだけでは栄養ドリンク・エナジードリンクの成分としてはウリになりません。実はタウリンは神経伝達物質としても、人間の体に作用するのです⋯だからパフォーマンスを高めてくれる、という理論でドリンク剤に含まれるようになったことが想像できます。人間の体にもタウリンは当然含まれていて、全体重の1000分の1くらいの比率とされています(静岡県立大学 食品栄養科学部調べ)。

飲んだタウリンはどれだけ体に影響を与えるのか??

となると、リポビタンDマクシオに至っては、体重60キロの人にとって、5パーセントもタウリンを補給してくれるんです、凄いでしょ。

タウリンって成分は昔から代謝や生理学的作用が注目されていましたが、確実にわかっている生理作用は実は海の生物の浸透圧調整物質、というなさけない状態なのです(「タウリンを中心とした含硫アミノ酸の代謝と栄養」国立栄養研究所 山口賢次氏)。リポビタンの大正製薬のサイトによれば

○心臓とタウリン
大阪大学の東純一教授は、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心臓疾患などによる心不全患者62名を対象にタウリンの効果を厳密な方法で調べました。その結果、心不全に有効であることが判明し、それに関連する浮腫(むくみ)や肝腫大(肝臓の腫れ)、呼吸困難、動悸といった症状にも効果的であったことを発表しています。

○筋肉とタウリン
大阪大学の馬場明道教授は、タウリンの筋肉運動に対する効果も研究されています。その研究によると、筋肉運動をつかさどる神経の情報伝達を高める働きがタウリンにはあるとのこと。またさらには、東京学芸大学運動生理学教室のラットによる研究では、タウリンが筋肉における収縮エネルキーの増幅に影響をおよぼし、筋肉のさまざまな代謝作用をも好転させることを示しています。タウリンは体内において、いちばん人間を動かしているところや、機械的に生命を維持しているところに多く分布しています。筋肉をなめらかに持続的に動かすためにも、タウリンは重要なのではないかと考えられているわけです。

上記二つの文章は大正製薬の「タウリンとは」より一部抜粋したものです。できれば論文があれば論文名を明記して欲しかったんですけど。

実は以前お伝えしたアリナミンでさえ、人体に対する研究の論文はかなり少ないのです(詳細は「にんにく注射は効果が証明された!ただしネズミですが」をご覧ください)。

なんだか「なになにって体にいいのよね〜❗」的な会話に花を咲かせるレベルになってきてしまいました。

タウリンの代謝経路、さらにそもそも補給する必要があるのか?

摂取された成分の全部が全部必要とされている器官・細胞等に行き渡るはずはありませんし、余分なものは吸収されないで排出されますし、せっかく取り入れた成分でも結局は代謝されてしまいます。タウリンの場合はほとんどが尿から排泄されます。欠乏しがちな栄養は食べ物あるは薬などで補給しないといけないのですが、タウリンってもともと体の中で生合成されますし、たっぷり貯蔵されているのでなかなか欠乏状態になりません(前述 山口賢次氏の論文より)。

プラセボ効果であっても効果があればいいじゃん、という考え方をする人もいるかもしれません。しかし、人体内で生合成されるタウリンには秘められた、予想もしない効果があるかもしれませんので、科学的なアプローチで詳しい研究がもっと行われる必要があるんじゃないでしょうか?

先日のトランス脂肪酸の件ではありませんけど、日本では栄養学の研究が農学部や栄養士さんの学校任せになっていて(少なくとも私の持っている生化学のハーパー、ストライヤーおよび薬理学の教科書にはタウリンの記載はありません)、医学的論文が非常に少ない傾向にあります。だれか医学系の人で積極的に栄養学を研究する人いませんかね?

じゃないと、いい加減な情報を垂れ流す「医療ジャーナリスト」や「フードプロデューサー」なる方が続出して、間違った健康法・健康食が一世を風靡してしまいます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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