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毎日新聞の記事「風邪薬が膀胱がんに効果」は少々誤解を生む表現では?と思いつつ自己反省❗

更新日:

昔、当たり前のように風邪の時の痛み、特に頭痛に処方していた「セデスG」が膀胱がんの原因である、とされて発売停止になりました。

また毎日新聞がやらかしたと思ったけど⋯

毎日新聞の風邪薬が膀胱がんの転移を防ぐという意味合いの報道に飛び上がるほど驚きました(実は私、泌尿器を専門とする町医者です)。

風邪薬との呼び方は保険治療では使いませんので、いかにも市販薬であるOTCの「風邪薬」に含まれる成分が、セデスGとは真逆の膀胱がんの治療に効果があると医療関係者の多くは感じたのではないでしょうか?

毎日新聞の記事によりますと、膀胱がんの中でも、転移して抗がん剤が効きにくいものに対して「フルフェナム酸」を投与したところ、膀胱がんの活動が止まった、とのこと。ところで「フルフェナム酸」って風邪薬だっけ?OTC(いわゆる市販薬)で含まれている成分だっけ?毎日新聞は時々やらかしてくれますので、

インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載❗

「また、毎日新聞かよ」的思い込みで調べたら、なんと北海道大学のサイトでも、

北海道大学「風邪の薬ががんの拡散を止める効果」

https://www.global.hokudai.ac.jp/ 北海道大学大学院医学研究科 病理学講座 腫瘍病理学分野サイト

って感じで紹介されていました。「Cold medicine could stop cancer spread」とタイトルですから、確かに「風邪の薬ががんの拡散を止める」には間違いありません。ちょうど、今週末にかけて「第54回日本癌治療学会学術集会」が行われていて、ナイスタイミングの論文掲載・新聞報道です。

報道は気をつけないと、表現がどんどん過激になる

海外の記事からネタを拾ってきて、それを翻訳して記事にするスタイルがネットでよく見られます。例えば、今回の風邪薬に使われることもある成分が、膀胱がんの転移を防ぐ可能性が期待できる論文を海外ではこんな感じで報じています。

風邪薬はがんに対する強力な武器

https://www.huffingtonpost.co.uk/entry/common-cold-drug-could-be-a-powerful-weapon-against-cancer_uk_58074c2be4b096d121476aff

これだと「風邪薬はがんに対する強力な武器」になって、毎日新聞のタイトルより、過激になっています。ハフィントンポストでさえ、こんな感じになるのです。

ひょっとして、毎日新聞の記事よりも先に、ハフィントンポスト英国版を読んだ人が日本語に翻訳して記事にして、それを目にした多くの人が「わっ、風邪の薬ってがんの治療に役立つのね」「風邪薬ってがんに効果あるんだ」と思ってしまう可能性があります。

元ネタを確かめないとこんな記事になってしまいます

先日こんな記事を目にしました。

WHO「性的パートナーを見つけることができない人は障害者に分類」

WHO「性的パートナーを見つけることができない人は障害者に分類」

https://jp.sputniknews.com/life/201610222931817/

普通に考えてWHOがこんな表現をするかあ?そんな言い方するかあ?と思いますよね。

現時点でまとめサイト等でも見ることができるようですが、実際に元ネタというか、一次ソースを確認した人いますか?実際はこれが元ネタ・一次ソースと考えられます。

独身だけど、親になれない人を不妊とWHOは分類しています

The Telegraph

初っ端から

Single men and women without medical issues will be classed as “infertile” if they do not have children but want to become a parent, the World Health Organisation is to announce.

となっていますので「独身で親になりたくないと考えている人は不妊とWHOはカウントしています」って感じの意味になります。訂正 「独身だけど、親になれない人を不妊とWHOは分類しています」

どう見ても「パートナーを見つけらえない人は障害者とWHOが分類した」からは、程遠い内容です。例えば男性で子供を望まない人は「不妊」と分類されている、ってだけの意味です。同性愛の人でもIn Vitro Fertilization(IVF 体外受精)によって、子供を持つことは可能であり、IVFを推進するのか否かを問いかける記事だったのです。

WHOが同性愛者などを「不妊」と分類して、体外受精をすれば「不妊じゃないよ」と定義した場合、英国の国民保険サービス(NHS) として「医療費の増加に悩ませられているのに、余計なお世話だよ」との意見が記載されています(超訳ですので、間違っていたらご指摘ください)。

つまり、WHOの基準でパートナーがいない人を障害者と認定したなんて話はどこにも書かれていないのです。この記事を紹介した人、どっからそんな話を持ち出したんでしょうか、不思議で仕方ありません。

自分の認める意見しか見ようとしないネット情報

ネット上の情報は新聞より早いし、様々な情報を一気に取り込めるから便利ではあります。しかし、本当に多種多様な意見・記事を広く読んで、自分の知識としているのでしょうか?

衝撃的なタイトル、あるいは自分の興味のあるタイトルだけを抽出して読んでいませんか?自分にとって心地よい情報だけの世界に浸っていませんか?また、逆もあります。自分の考えに反する記事に対して、ツイートなりFacebook投稿したり、あるいはブログを書いたりしていませんか?それに賛同する人の数にニンマリしていませんか?

これってお前のことじゃん、ニセ医学を批判するブログを書いてばっかりいるじゃん⋯そうなんです、生理的に合わない毎日新聞のタイトルだけを読み取って、鬼の首を取ったように感じた自分への戒めとしてこんなブログを書きました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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