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大丈夫か中国メディア!「日本人の長寿の理由を分析」って間違いだらけというか、唖然。

更新日:

世界保健機関(WHO)が5月に「世界保健統計2013」を発表したことを受けて中国の環球網(人民日報の国際版)が日本人の男性の長寿の秘密を分析してくれました。

その分析内容が結構笑えるのでここでご紹介します。

中国人が日本人の長寿の研究をしているんですけど、かなり誤解が⋯

医学統計って世界中の人が判り易いように数字で表しているのになぜか、ピントハズレの中国の専門家⋯日本と中国が判り合えるようになるには今世紀中は無理だと思いました。

中国がせっかく日本人の長寿の謎を解明してくれるのは良いのですが、まずはデータが古いんです。WHOが世界中の統計をまとめる為には膨大な時間がかかるのは判るんですけど、ある意味宿敵日本の分析なんですからもう少し新しい情報が入らなかったのでしょうか?中国による日本の外交官や民間人をスパイが巧妙に手なずけたり、脅したりして情報を入手しているはずなんですけどね。

日本人の平均寿命グラフ

http://www.worldtimes.co.jp/

日本一長寿は横浜??

中国の報道によると日本で一番男性が長寿である地域は横浜となっています。「えっ、長野とか沖縄じゃないの?」と皆さんは感じたと思います。確かに厚生労働省が2008年に生命表「平成17年市区町村別生命表の概況」を発表し、それによると2005年時点で平均寿命がもっとも長い市町区村は男性は神奈川県横浜市青葉区で81.7歳、女性は沖縄県北中城村で89.3歳であったことは事実です。

新しいデータはネット上で簡単に手に入れることができ、平成24年(2012年)のものがありますので、なんで新しいデータを使用しなかったのか結構不思議です。ここ数年は長野県がトップになっていることは日本では常識なのでは無いでしょうか?なぜ、横浜市青葉区がトップになったのかは不思議は不思議ですが、医療機関・福祉施設の充実と経済的裏付けが主な原因とされています。

横浜の青葉区が男性の長寿日本一であったことは事実ですが⋯。

意外な結果である「横浜の男性長寿」を中国の専門家が分析しましたが、誤解・誤認識だらけなんです。

あくまで中国サイドは横浜市青葉区ではなく横浜として分析しています

間違い1:日本の長寿村の多くは海岸沿いにあり、いつでも多種多様な新鮮な海鮮物を食べることができる?

中国の専門家さん、平成17年に確かに横浜が男性長寿日本一でしたが、それは横浜の青葉区なんです、「村」ではありません。さらに残念ながら青葉区は海が無い区ですし、多種多様な海鮮物は日本はスーパーで殆どの地域で購入可能です。「回転寿し」の全国展開により日本近海以外の海鮮物でも、どこでも食べられるようになっていて、海岸沿岸部と長寿を結びつけるのはかなり難しいと思いますよ。

横浜市青葉区が男性の長寿日本一

Google マップ

どう見ても青葉区って海沿いではないです

東京で言えば、品川区や港区・江東区、市で言えば川崎市のほうが海が近いということ人民日報の記者や専門家は知らなかったのでしょうかね。

間違い2:長寿の秘訣は塩分控えめで高蛋白質の家庭料理中心の食生活 ?

これは明らかに間違いですよね。日本の厚生労働省は「日本人は塩分摂りすぎ❗」としきりにインフォメーションしており国民に塩分を控えるように指導しています。横浜の青葉区だけ、減塩キャンペーンが大成功しているという話は寡聞にして私は存じ上げません。また日本では外食・中食が増えていて家庭料理って少なくなっていると言われていますよね。さらに、高タンパク食が長寿の秘訣って「糖質制限ダイエット」や「ケトジェニック・ダイエット」が日本で流行しているのを中国情報部がキャッチしていたとしたら、その情報収集能力の高さを評価しないといけません。ひょっとしてその情報源って女性向け雑誌だったり、オッサン向け週刊誌、ネット上のよた話に振り回されているということもありますので、情報源の間違いに早めに気づかれることをご注意申し上げます。糖質を制限して高タンパク質食に偏った食生活は少なくとも日本の医療系の学会は全面的には支持はしていません。 このあたりから、さらに分析内容の雲行きが怪しくなっていきます。

間違い3:長寿の精神的支柱となった大和魂?

はあ??日本人は世界に誇る「大和魂」をもった民族ですが、それって未だに米国の田舎町に日本人がいくと「忍者っているの?」とか「君は空手の名人なの?」と言われるのと同レベルの日本に対する理解力ではないでしょうか?さらに追加説明として中国発祥の論語の教えを忠実に日本人は守ってきた為に「和を以て尊しとし」を実行しているから長寿になっているという分析しています。

でも「和を以て尊しとし」って聖徳太子が十七条憲法で決めた言葉として日本人は捉えていますし(もちろん当時の最先端思想であった論語の影響もあるでしょうが)、論語にあるのは「礼之用和為貴」(礼は和を以て尊しとし)であり、実際はかなりニュアンスの違いを持って日本人は理解しているのです。

横浜市の青葉区の学校で儒学を教えているという話は聞きません。現在80歳代の方は教養として「儒教」をご存知の方も多いでしょう。大和魂の気合いで長寿を保っている可能性はありますが、「大和魂」が論語の影響を強く受けているとは感じているはずないですし、青葉区のお年寄りが他の地域のお年寄りより「大和魂」を持っているというデータは残念ながら無いようです。ついでに申し上げますと、生命表というのは現時点で生まれた赤ちゃんが何歳まで生きる可能性があるかということを算出したものですので、定義から勉強し直した方が良いかも知れません。

詳しくはhttp://homepage2.nifty.com/narukawa/eol.pdfなどをご参照ください。赤ちゃんの死亡率が下がると平均寿命は延びますので、中国政府はまずは国内の健康状態を分析することが優先課題だと思います。その辺りにつきましてはブログ「中国の子供の死因の1位はなんと⋯栄養失調(涙)」で以前述べさせていただきました。

逆に本家中国では老人支配の政治体制(長幼の序)で儒教的な面が強くでていることを感じますが、「儒教は革命に反する」と国を挙げてキャンペーンを行なった歴史も近代中国史にあったと記憶しています。私の記憶違い・勘違いかもと調べたところ、現代中国では論語の見直しが行なわれていて「中華民族の優秀な道徳論理」として脚光を浴びているそうです。一層のこと「大和魂」を教育すると長寿になれることを大々的にインフォメーションすると日中の関係が改善すること間違いなしです。

そのほか、不可解な分析が長々と続くので切りがないのでこの辺りで止めときます。

やっぱり最後に一つ言わせてください❗

下の写真は中国の重慶にある温泉です(http://kinbricksnow.com/)

中国の温泉

今回の環球網は「日本人は温泉を好むから長寿」なんてことも書いてありますが、その影響のためか日本中の温泉にあのけたたましい中国語が飛び交って顰蹙を買っています。「長寿」を目指して温泉に入るのであればまずは「和を以て尊しとし」を十分ご理解の上での入浴をお願いいたします。

そんなこんなで検討ハズレ・間違いだらけの日本長寿の秘密を知るための分析を行なっている人民日報ですが、もちろん経営主体は中国共産党です。こんな分析力と理解力で日本に対する領土問題なんかを判断しているのか、と想像するだけで私は寿命が縮まる思いをしています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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