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【検証】ビタミンDは新型コロナから身を守ってくれる、はかなり怪しい

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日光を浴びることで体内で生成されることから太陽のビタミンとも呼ばれているビタミンD。カルシウム吸収を高めたり、筋肉にとって必要な栄養素として近年特に注目されています。

ですが、いわゆる免疫力UPとセットでビタミンDを摂ればウイルスに克てるといった情報が目につきます。ビタミンDに限らずですが栄養素の欠乏によって病にかかりやすくなるのは当然のことです。

では特に不足していない場合、ビタミンDを過剰に摂取すれば新型コロナ感染症対策になるのでしょうか?食べ物ですと魚やキノコ類に多く含まれるビタミンDですが、サプリメントなどで必要以上に摂取することで果たしてウイルスに強くなるのか?医師として検証しました。

ビタミンDサプリメントでウイルス感染が激減説はかなり危なっかしい

新型コロナ感染症(正式名称はへんてこな感染症)によってパニック状態になっています。マスクや新型コロナ(ウイルスの名前は正式には2019-nCoV、その後ヘンテコなウイルス)感染を防ぐ効果が期待できないクレベリンさえドラッグストアでは売り切れ状態。

【要注意!】手作り布マスクはウイルス感染リスクが高まる可能性あり

マスク不足に困った人々は少しでも新型コロナを防ぐ方法を求めているところに、ビタミンDサプリメンを飲めば新型コロナ感染によるヘンテコな感染症が防げる!との話が出回っています。

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私は以前から、ビタミンD(Vitamin D)が免疫力(これはあまり使いたく無い言葉)を上げる、に関して疑問を持っていたので、ビタミンDがウイルス感染を本当に防ぐのかについてEvernoteにため込んでいた資料をもとに検証してみます。

2020年4月11日追記 ビタミンDどころではない大問題が発生しました。

BCGを新型コロナ予防のために注射⁉非常識にもほどがある(怒)

BCGを新型コロナ予防のために注射⁉非常識にもほどがある(怒)

日本株のBCGが肺の免疫を強化している可能性が示唆され世界各国で臨床実験がスタートされましたがまだ仮定のお話。そして大部分の日本国民がすでに接種しています。大人になってもう1回BCG打てば無敵と考えてしまうお気持ちはわかります。ですが医師がBCGビジネスチャンスと捉え禁忌行為を行うという情けない事案が発生しました。

BCGが新型コロナ感染予防になる、との仮説を疑いもせずに人体に注射した医師が⋯。

権威ある医学専門誌にビタミンDサプリメントがウイルス感染を防ぐ、との論文が掲載されているけど疑問点が多数

多分、ビタミンDサプリを服用するとインフルエンザなどのウイルス感染を防ぐ、新型コロナ感染にさえ効果あり、と強気で述べている医師や医療関係者は素人ライター(笑)が金科玉条、伝家の宝刀的に「ビタミンDがウイルス感染を防ぐとの論文がありまーす」はこれでしょうね。

英国医師会雑誌 (British Medical Journal略してBMJ)
「Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data」(PMID: 28202713)のことだと思われます。

今まで数々の医学論文がビタミンDがウイルス感染予防効果があるのか、について報告をしてきました。25の試験を検証することによってビタミンDがウイルス感染予防に対して効果があるのか無いのかを確認した研究です。

  • 合計の研究対象となったのは1万1321人
  • 分析に採用されたのは1万933人のデータ
  • 使われたビタミンDサプリメントの成分はビタミンD3
  • ビタミンDサプリメントを服用していたグループに気道感染のリスクが減少していた
  • 一部の試験では週一回のビタミンDサプリメント服用で気道感染のリスクが減少していた
  • 結論として、ビタミンDサプリメントの服用は風邪などの気道感染の予防で有効である

以上のように疑う余地が無さそうな研究です。故に「ビタミンDサプリメントを服用することはウイルス感染予防に効果がある」と強気で主張する医師が出てくるのです。

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文春オンラインでも「ビタミンDサプリメントはエビデンスがあるから新型コロナ感染症ウイルにも効果があるのでは」と

文春オンライン 「とにかく指洗い」「マスクで鼻を守る」「目薬ジャブジャブ」19人の医師が実践する新型コロナ感染症対策 ~「手・口・目」編(https://bunshun.jp/articles/-/36280?page=4)より

文春オンラインのタイムリーな記事中で

新型コロナでのエビデンスはありませんが、インフルエンザウイルスにはビタミンが有効という報告がある。というと、多くの人はビタミンCを思い浮かべるのですが、エビデンスレベルが高いのはじつはビタミンD。ビタミンDのサプリメントでインフルエンザを予防できるとするエビデンスもあるので、新型コロナ感染症に対しても摂っておいて損はないでしょう

と述べている医師もいます。

英国医学専門誌(BMJ) のビタミンDでウイルス感染予防はすぐに公的機関から疑問が出ています

誰が見ても信頼度の高い医学専門誌に掲載された「ビタミンDはウイルス感染を予防する説」ですが、この論文に対してBBCには公的機関の専門家の疑問点というか、怪しいぞ的な意見が掲載されています。

BBC「Vitamin D pills ‘could stop colds or flu’」(https://www.bbc.com/news/health-38988982)では、

英国の保健省の下部組織であるPublic Health England(略してPHE、英国公衆衛生庁)は感染症に関するデータは十分では無い、と前掲の研究結果に対して批判的なコメントを寄せています。

PHEのLouis Levy教授は

The evidence on vitamin D and infection is inconsistent and this study does not provide sufficient evidence to support recommending vitamin D for reducing the risk of respiratory tract infections.

と述べています。

Google翻訳によれば「ビタミンDと感染に関する証拠は一貫しておらず、この研究は、気道感染のリスクを減らすためのビタミンDの推奨を裏付ける十分な証拠を提供していません」です。

ちなみにNational Institute for Health Research(略してNIHR、英国国立衛生研究所)はさらなる議論が必要だとコメントしています。

非常に権威ある医学専門誌に掲載された医学研究であっても、ビタミンDサプリメントを服用するとウイルス感染予防に効果があるとの説に関しては、現時点では決定的なものでは無いと判断されます。

安易にビタミンDで新型コロナ感染を予防しようとすると思わぬ落とし穴があります

このような記事もありました。

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中日スポーツ MEGUMI 南雲吉則医師の「90年代後半の日焼けしたギャル男は今も元気」説明で納得⁉ 紫外線が作り出すビタミンDで「ウイルス感染は激減」の解説に(https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2020022502100133.html)より

私がビタミンDサプリメントの副作用としてEvernoteに記録してあった論文でこのようなものがあります。

  • 「Vitamin D supplementation for the prevention of childhood acute respiratory infections: a systematic review of randomised controlled trials.」(PMID: 26310436)では呼吸器感染症リスクや死亡リスクにビタミンDの服用は影響を及ぼしていなかった。
  • 「High-dose vitamin D3 in adults with pulmonary tuberculosis: a double-blind randomized controlled trial.」(PMID: 26399865 )では肺結核患者さんにビタミンDを服用させたけど喀痰に変化はなかった、つまり効果は無かった。結核ですから、ウイルス感染とはちょっと違うかもしれませんが、少なくとも呼吸器感染症の1つです。
  • 「Vitamin D supplementation and risk of respiratory tract infections: a meta-analysis of randomized controlled trials.」(PMID: 23815596)ではビタミンDを飲んでも気道感染のリスクは減少しなかった。
  • 「A randomized controlled trial of vitamin D3 supplementation for the prevention of symptomatic upper respiratory tract infections.」(PMID: 19296870)でも、ビタミンDを服用させても、気道感染症のリスクは減少しないし、重症度にも影響は無かったとの結果になっています。

2020年2月20日 21:00 追記 アップした後に見つけました。カナダの研究です。

●「Effect of High-Dose vs Standard-Dose Wintertime Vitamin D Supplementation on Viral Upper Respiratory Tract Infections in Young Healthy Children」(JAMA. 2017;318 (3) :245-254.)によると、健康な子供が冬の間に風邪を引くかを調べた物です。結果的にビタミンDを摂取してもしなくても、風邪を引く回数に変化はありませんでした。

ビタミンDを服用させても、子供が冬の間に風邪をひく回数に変化はありません。つまり、ビタミンDがウイルスによる気道感染リスクを減少することは無い、と考えられます。

まだいくつかありますけど、一番最初に提示した論文が今までのビタミンDサプリメントと気道のウイルス感染に関する二重盲検無作為化プラセボ比較を行った24の研究を解析したものであっても、現時点では有効であると強くは判断できない状況であることをご理解いただければ。

ちなみにビタミンDサプリメントはサプリメントだから飲みすぎても身体に悪いものでは無い、と考える方も多いかもしれません。しかし、こんな研究論文もあります。

「Hypercalcemia, hypercalciuria, and kidney stones in long-term studies of vitamin D supplementation: a systematic review and meta-analysis.」(PMID: 27604776)は私が専門としている泌尿器領域の研究であり、ビタミンDサプリメントを服用すると高カルシウム血症と高カルシウム尿症のリスクが高くなることを伝えています。

もしも今までの研究によってビタミンDがインフルエンザや風邪に対して予防効果があったとしても、今回の新型コロナに対して予防効果がある、との話は時期尚早であると判断して良いのでは無いでしょうか。

以上より、ビタミンDサプリメントが新型コロナの感染を予防する、との話は裏付けに乏しく、医学的に効果を実証されたものであるとの説はかなり怪しいものだと判断します。

まあ、世の中にはビタミンDを増やす為かこんなことをやっちまっている人もいました。ネタとしてSNSで話題にはなりましたが、やってる本人は大真面目⁉

肛門日光浴でビタミンD増やす

https://twitter.com/zapa/status/1253967398996078592

ビタミンDは食事以外でも日光を浴びると体内で作られますので。

日本の公的機関もビタミンDで新型コロナ予防には、警告が出ていました

と、ここまで書いたらこんなことを国立健康・栄養研究所 健康食品情報がツイートしていました。

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https://twitter.com/hfnet2015/status/1232481238700544002

私のブログよりこっちの方が明らかに信頼度が高いですね(涙)。

注意:今回のビタミンDのブログは新型コロナ感染に対しての予防効果があるかについて検証したものです。現在、医師によって病気の治療としてビタミンDが処方されている方に対して不安を与えることは意図していない点をご理解ください。ビタミンDが足りていない方は必要なことです。

このブログ記事を書いて一年が経過しました。やっぱりビタミンDは効果ないのではとの結果が2021年3月時点では主流だと判断できます。

ビタミンDで本当に丈夫な体づくりができるのか?

ビタミンDで本当に丈夫な体づくりができるのか?

ビタミンDをスーパービタミンとして崇め奉る傾向があります。ビタミンDはカルシウムを吸収するのに必要ですし、直射日光を浴びるだけで体内で生成されるので人体に必要なビタミンです。でも、必要以上にとっても意味がありません。ビタミンDはある程度体内に蓄えることもできます。ビタミンD不足は問題ですが、過剰摂取も問題です。

ほらね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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