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楽天の検査キットは私たち国民の努力を無駄にする。

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楽天が法人向けに販売を開始した新型コロナ感染症PCR検査キットですが、医師として懸念すべき問題が多すぎます。

日本医師会も大きな問題と声明を出しているこの楽天検査キット、現物を入手しましたので実物を紹介と共に、セルフ検査キットの精度や問題点を徹底的に検証します。

楽天が販売する新型コロナPCRキットの現物はコレ!

楽天が自宅でどなたでも新型コロナ(正式名SARS-CoV-2)を検出するPCR検査キットを販売することになりました。遺伝子検査キット大手のジェネシスヘルスケアと連携しての販売です。ジェネシスヘルスケアの遺伝子検査キットをアマゾンで購入しまして、それをブログネタにしようと試みたことありました。

結果的にあまりおもしろくなかったので遺伝子検査キット体験ブログはボツ。

楽天のPCR検査キットの現物写真

法人向けに100キット〜注文可能なこの検査キット、私はなぜか、その現物をもっています。

自宅で非医療者であっても簡単に新型コロナに感染しているかを検査できることを歓迎している人もいますが、多くの医療関係者は激おこ。誰でも当然、新型コロナ感染症(へんてこな感染症)に感染はしたくないし、感染していたら早く医療機関を受診したいと思うでしょう。

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検査方法は例の綿棒を鼻に入れてグリグリ式です。これを自分でやれる人って稀なような気がするけど。そもそも検体を自身で採取するのは医療者であっても難しいですし、通常、PCRキット検査を行う時に医師はPPEと呼ばれる防護服を着用して感染拡大を防いでいます。

素人さんがグリグリやっても、まともに検体は取れないので精度は全く期待できないばかりか、感染拡大のリスクさえ考えられます。

感染拡大リスク以外にも楽天が販売する「へんてこな感染症 PCR Testing KIt」、別名「新型コロナ感染リスク検査キット へんてこな感染症 PCR」は大問題を抱えているのです。

検体の採取は感染の危険がありますので、ご本人が検体を採取するとしても、周りに感染が拡大してしまうおそれがあります。その態勢が取れるのか。検体採取は正確に行われることが必要です。検体の採取方法が不適切であれば、結果は信頼できないものになります。そこがどう担保されるかも問題です。PCR検査は実際には感染している場合も『陰性』と出る場合があるし、判断が非常に難しい。この検査で仮に『陽性』と出て、それをもって医療機関に来られることがあった場合、それをどう扱うか、医療機関としても非常に戸惑うところであります。この検査を普及させ、ご自身でやってみることについては、非常にリスクが高いと今考えざるを得ません

検査を受けたいのに受けることができなくて不満な方は、このような日本医師会の楽天検査キットへの懸念を検査を絞っている言い訳のように感じるかもしれません。不安な毎日がつらい、とにかく安心したい、というお気持ちはわかります。ですが、今回の検査キットでは安心は得られないのです。

そこで、数字を使って何が問題なのかを説明してみます。

その前に、PCR検査において重要な偽陽性・偽陰性という医学用語の確認です。

●偽陽性とは本当はその病気にかかっていないのに、検査で陽性、つまりかかっていると判定されることです(今回の場合はへんてこな感染症陽性)。

●偽陰性とは本当はその病気にかかっているのに、検査では陰性、つまりかかっていないと判定されることです(今回の場合はへんてこな感染症陰性)。

例えば今回のヘンテコな感染症には感染流行地域では15%の人が症状の有る無しに関係なく感染していたとの報告があります(「Vorläufiges Ergebnis und Schlussfolgerungen der へんてこな感染症 Case-ClusterStudy (Gemeinde Gangelt) 」

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東京の人口を1000万人とします。前掲のデータをはめ込むと150万人が感染していることになります。

●新型コロナ感染症(へんてこな感染症)者は150万人

●新型コロナに感染していなかった人は850万人

以上のようになります。

この数字を前提として、セルフPCR検査キットがどのような問題を抱えているのかを暴きます。

この楽天の新型コロナPCR検査キット「へんてこな感染症 PCR」をきっかけに医療崩壊を引き起こすのでは?マズい❗と正しく恐れていただきたいと思います❗

楽天が販売しているPCR検査キットの案内ページ

https://health.incubation.rakuten.co.jp/より

おまけ

楽天のネーミングもちょっと変。だって「へんてこな感染症」って新型コロナによる感染症の名称であって、ウイルスの名前じゃないもんね。ウイルスを検出するキットだったら「SARS-CoV-2 PCR Testing KIt」だと思うんだけどなあ。たぶん、「へんてこな感染症 PCR Testing Kit」は海外を意識した商品名なんだろうね。そう商品なんです。これ医療機器ではありません。→楽天の紹介ページ(https://health.incubation.rakuten.co.jp/)のQ&Aにも「本キットは医療機器ではありません。」明記されております。

Googleで楽天PCR検査キットの検索結果

上記はGoogleの検索結果です。

検査キットで陽性と判定されたら、大問題発生

どのような検査であっても、判定を間違えることは残念ながら避けることは出来ません。

新型コロナに感染していないのに、検査で感染していると判定されてしまうことがあります。これを偽陽性と呼びます。

偽陽性は検査方法の特異度に左右される

●偽陽性率=1-特異度

偽陽性つまり感染していないのに感染していると判定しまうのを偽陽性、そしてその割合を偽陽性率と呼びます。

PCRはその特性から特異度はかなり高いものと予想されますが100%の特異度をもった検査方法は現実的にはありえません。

PCRの特異度を95%と仮定してみます。定義から偽陽性率は5%。

新型コロナに感染していない人は850万人、特異度が95%のPCRキットを使用して陰性と判定される人は

●850万人 ✕ 95% = 807万5000人

しかし、本当は感染していないのに、感染していると判定される人は

●850万人 ✕ 偽陽性率5% = 42万5000人

になります。

42万5000人が間違って陽性、つまりへんてこな感染症罹患者と判定されてしまうのです。

新型コロナは指定感染症ですから、感染していると診断されたら入院隔離が原則でした。陽性判定される軽症者の増加にともない、自宅隔離あるいはホテル等での隔離が都市部を中心に採用されています。

しかし、42万5000人を収容できる施設って存在するのでしょうか?

検査キットで陰性と判定されても、これまた大問題発生

どのような検査であっても、本来は感染しているのに感染していないと判定されることがあります。それを偽陰性と呼びます。

偽陰性は検査の感度に左右される

●偽陰性率=1-感度

実際は感染しているのに、PCR検査を使用して陰性、つまり新型コロナに感染していないと判定されことが偽陰性と定義され、その割合を偽陰性率と呼びます。

新型コロナのPCR検査はかなり感度が低いと一般的に考えられています。私が知る限りで一番感度が高いものでも70%です。定義から偽陰性率は30%。

楽天が販売するPCR検査キットの感度を70%として計算してみます。

東京都で実際に感染している人が150万人だったとした場合

●150万人 ✕ 70% = 105万人

105万人が正しく感染していると判定されます(真陽性)。

ところが偽陰性を考えると大問題が発生します。

●150万人 ✕ 偽陰性率30% =45万人

本当は感染している45万人が感度70%のPCRキットを使用して陰性と判定されてしまいます。

そうなると、45万人がへんてこな感染症罹患者であるのに、陰性と判定された結果として、街中をウロウロすることになってしまいます。無症状感染者がへんてこな感染症の感染拡大の大きな原因の一つであるのに⋯。

自宅でセルフPCR検査キットの問題点はコレ!

感度・特異度・偽陽性・偽陰性、これはかなり複雑な話のようですが、定義を確認して紙と鉛筆と電卓を用意して下の表を確認してください。

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陽性的中率は上記の条件では105万人/147.5万人なので、約71%、陰性的中率は807.5万人/852.5万人なので94.7%です。

一見なかなかの成績に思われますが、東京の人口を1000万人とした場合、へんてこな感染症なのに自分は感染していないと考えてしまう人が45万人、そして本当はへんてこな感染症では無いのに感染者として自宅隔離・ホテル隔離・病院に入院となる人が42.5万人も出てしまうのです。

いくら東京都がホテルを借り上げても、42.5万人収容は無理。さらに偽陰性者が街中をウロウロ、不用意に入院患者さんをお見舞いに訪れたら一気に院内感染大爆発、という悲劇が起こってしまう可能性があります。

私たちが自粛・我慢し続けてきた努力が水の泡に❗医療崩壊をなんとしても防がなければならない

いままで、私達国民は緊急事態宣言の発令を受けて、外出を控えていました。それらの苦労が一気に吹っ飛んでしまうのです。

もしも楽天のPCRキットで陽性と判定された人が医療機関に殺到します。しかし、診察した医師は通販キットの判定だけで新型コロナに感染していると診断することはまず無いでしょう。

無症状者への検査としてCTの有効性が自衛隊中央病院が発表しています。さらに、確定診断のためには医療従事者によるPCR検査があらためて行われるはずです。

「日本は検査を積極的に行わないので、ヘンテコな感染症の致死率が高い」は大間違い。

「日本は検査を積極的に行わないので、ヘンテコな感染症の致死率が高い」は大間違い。

各国が試行錯誤して行っている感染症対策、日本がおこっている対応は間違いなのか?日本が他国と大きく違うのは検査を無闇矢鱈に行うのではなく必要に応じて行っている点です。検査数が少ない、他国を見習えという意見がマスコミを通じて発信されていますが、日本の対応は間違っているのでしょうか?

東京都では医師会が40以上のPCR検査センターの運営を予定しています(一部の区ではすでに稼働しています)。

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東京新聞 <新型コロナ感染症>江戸川にドライブスルー方式  PCR検査センター開設(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042202000252.html)より

そこへ陽性と判定された主に無症状の人が押し寄せてしまいます。医師が重症あるいは重篤と診断された患者さんへ手が回らなくなる事態が発生⋯これも医療崩壊の一つ。

がんと闘っている最中の患者さんも病院には多数入院しています。発熱外来できりきり舞いの病院に陽性判定の人々が押し寄せたら、当然その病院の機能は麻痺状態になります。がん治療のスタッフへの影響も多大になります。

万が一、あなたが交通事故にあってしまって救急車で病院に搬送されたとしましょう。救急病院の外来はPCR検査で陽性と判定された人の診察で医師は手一杯。もちろんトリアージなどによって、重症度は判定されるでしょうけど、医師や看護師が手薄になってしまうことは避けられません。

救える命が救えない⋯これも医療崩壊です。

楽天さま、法人向けだとしても、新型コロナPCR検査キット「へんてこな感染症 PCR」の販売、もう一度熟考をお願いできないでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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