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28日後“再び陽性”に‥再感染?そもそも新型コロナ検査の結果は信頼できるのか?

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先日、貴重な経験をしました。8月に某クリニックで症状は無いのになぜか自費でPCR検査をして陽性判定だったために入院していた方が、熱っぽいために当院を受診して行政検査をしたところ、なんとPCR検査で陽性判定❗

なぜこのようなことが起きたのでしょう?

どれだけ正確な検査であっても間違った判定はでてしまう

新型コロナに感染して無事治ったと思ったら、また感染したという今回のケースを時系列でまとめておきますね。

経過

8月初旬
某クリニックで症状は無いけど自費で検査
検査結果→陽性
保健所の指示で自宅待機→入院
検査陽性後14日
無症状で経過したため隔離解除・退院
9月頭
9月になって発熱があったので当院の発熱外来受診
検査結果→陽性
PCR検査によって陽性判定

陽性判定が出ると保健所に発生届をだします。今はファックスではなくPCでHER-SYSというシステムを使用して対応の迅速化をはかっています。

保健所に提出する感染症発生届

なぜこのようなことが起きたのか・・・いくつかの原因が考えられますが、残念ながらどれだけ正確な検査と言われていても間違った判定をしてしまうことがあり、それを偽陽性・偽陰性と呼んでいます。

個人が特定されないように具体的な日付や入院時の状況等はぼかした表現となっていることをご理解下さい。なお、このような例があることをお伝えすることはご本人の了承を得ております。この方はワクチンは未接種でした。

検査結果に絶対は絶対ない⁉?

検査における専門用語の定義をまず知っておきましょう!

  • 偽陽性・・・病気でないのに、検査結果が陽性になってしまうこと
  • 偽陰性・・・病気なのに、検査が陰性になってしまうこと

以上が偽陽性・偽陰性の定義です。

陽性判定・陰性判定が実際に対象となる病気の見分けを正しく判断しているかをあらわす専門用語として、陽性的中率・陰性的中率があるけど、今回その説明は省きます。

私が経験した二回目感染の方の場合、一回目はいまから1か月半前くらいのこと。当時、保健所は大混乱状態であり感染経路の特定のための調査などを放棄宣言した時期でもありました。

なぜ症状がなかったのに入院できたのか?

感染症の発生を医療機関が確認したら保健所に「発生届」を出す必要があります(ほかの感染症でも発生届をすることになっているものもあり)。

発生届には「その他感染症のまん延の防止及び当該者の医療のために医師が必要と認める事項」という項目があります。ここには重症化リスクの有無や妊娠の有無を記載する項目とともに、単純に「入院の必要性の有無」という項目があり、ここの「有」に医師が○印を付けて提出したら保健所は優先的に入院させることになります。

たとえば家族内にワクチン未接種の高齢者がいたら、自宅療養よりはホテルなどの宿泊施設での宿泊療養あるいは何らかの基礎疾患があれば入院させた方が良いと判断されるようです。

一回目の感染が完治していなかった可能性は?

二回目感染の方は一回目に感染したときに退院の条件としてPCR検査で陰性判定はなされていませんでした。経験上、症状がなければPCR検査を受けなくても一定期間経過していれば良いとの判断が行政から通達されていました。

当院の発熱外来を受診したのは退院から約1か月後のことなので、二回目の感染なのか、あるいは一回目の検査結果が間違っていた可能性が考えられます。

つまり初回のPCR検査が間違って判定した偽陽性の可能性があるってことです。当院でおこなった二回目の検査が偽陽性である可能性も否定はできないけど、あきらかに症状があるんでその可能性は低いんじゃないかなあ。

まずは検査の意味を知ろう!

当院の保険診療は泌尿器科がメインでありSTDの検査も毎日行っています。クラミジアという微生物は非常に小さく顕微鏡では見分けがつかないのでおしっこをPCR検査に提出して判定をします。

PCR検査は特徴として非常に敏感であり、クラミジアの死骸も拾い上げてしまう、つまり感染していない状況であっても陽性と判定してくる偽陽性が少なくありません。

このあたりは感度・特異度について書いたこの記事をご覧ください。↓

特異度100%なら正確?間違えやすい新型コロナウイルス検査の感度と特異度について解説します

特異度100%なら正確?間違えやすい新型コロナウイルス検査の感度と特異度について解説します

単語の綴りは同じでも、使われる業種によって意味が異なるケースは多々あります。新型コロナウイルス検査の感度と特異度の意味を多くの方が勘違いしていますし、専門家とされる人も間違っていたりします。感度100%、特異度100%って聞けば精度高いと思うはずです。検査用語の定義を正しく解説します。

ちなみに偽陽性率と偽陰性率は単純な式であらわすことが可能です。

  • 偽陽性率・・・ 1-特異度
  • 偽陰性率・・・ 1-感度

偽陽性を減らそうと工夫をすると偽陰性が増えてしまい、偽陰性を減らそうとすると偽陽性が増えてしまうのは検査の宿命なのです。なぜなら偽陽性を減らすには検査する感染症の病原体がわずかしか含まれていないときは陰性と判定結果がでるようにしなければなりません。しかし、その場合は病原体を検出する能力を落とすことを意味しますので、感染しているのに陰性判定が出る様になってしまいます。

検査の信頼性は揺らぐのか?

検査で陽性判定が出た人の中で本当に検査対象になった病気になっている確率を陽性的中立と呼びます。病気になっていないのに陽性判定されることは実は少なくないのです。

たとえば日本の人口を12万6000人と仮定して、偽陽性率が0.1%の検査をしたら12600人に陽性判定が下されてしまいます。

それ以外にもむやみやたらと検査をするとよろしくないし、検査を絞りまくった場合も問題が発生します。その辺りに関してはめんどくさい説明が必要となりますので、統計学、とくに医療統計学の本などで各自勉強していただけるとうれしいです。

素人でもわかりやすいし、ある程度の知識があるひとが知識を再確認するために役立つ図書として「『医療統計』わかりません」(五十嵐中・佐條麻里著 東京書籍)がお勧めです。

追記:2回目の感染をした方のその後

心配していた2回目感染の患者さん。自宅療養中には電話で症状をお尋ねしていたところやはり発熱と息苦しさがあるとのことで保健所の指示で宿泊施設に入り、今話題の抗体カクテル療法を受けて症状は軽快に向かっているとのメールを頂きました。本当によかったです、早く退院できるといいですね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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