【重曹でがんを治す⁉】禁断の書「ガンの新しい治療法」を読んでの感想

自然派さんに愛される重曹、お掃除も楽々になる重曹、この重曹でがん治療ができる❗なんてことを書いてある一般書籍があります。

真菌とがんの発生の関係は確かにネイチャーに掲載はされているけど・・・。

この禁断の書「がんの新しい治療法」書かれているように膵臓がんと腸内細菌中の真菌(カビ)との関連性はたしかにネイチャー(Nature)に掲載されています。

真菌と膵臓がんの関連性

https://www.nature.com/articles/s41586-019-1608-2

さらにこの本で紹介されているようにネイチャーに掲載されたことによってノーベル賞受賞の対象になる可能性もなくはないのですが・・・これが掲載されているいる場所はネイチャーの「Letter」ですよね。ネイチャーのLetterって斬新な論文を投稿する場所ではあっても、多くの研究者によって支持されたものであるとは限らない点に注意が必要です。

ネイチャーに論文が掲載されたとしても試験管レベル

真菌と膵臓がんの関連性についての論文がネイチャーに掲載されたとしても、前掲の論文はあくまで試験管レベルの研究であり、実際に人体に応用できるとは限りません。

1つの試験管レベルの研究をもとに妄想を広げる傾向はトンデモ系ニセ医学にありがちなことなので十分に注意が必要であることを知っておいて損はないと思います。損どころか命が掛かっているがん治療のために、このポンコツがん治療方法の本を読むだけ時間の無駄であり、適切な治療機会を損失する可能性もあります。

重曹でがんが消えた!ってどんな実験をしたんだ???

このポンコツがん治療本は重曹でがんを治してしまうという安易な考えが主旨です。表紙にも「重曹殺菌と真・抗酸化食事療法で多くのガンは自分で治せる」と書かれていますものね。

重曹は自然派さんがクエン酸とともに病気を治してしまうと言い張る炭酸水素ナトリウム、化学式だとNaHCO3であらわすれっきとした化学物質です。重曹はこれまた自然派系食べ物で病気治してしまいましょう分派が大好きなアルカリ性である点に留意したいと思います。そもそも体内にはもともと安易に酸性やアルカリ性に傾かないようなシステムが備わっているので、食事によってカラダが酸性になったりアルカリ性になってしまうことはあり得ません。

がん細胞がアルカリ性を嫌うから重曹を投与⁉?

しかし、この本、ツッコミどころ満載でどこがどのようにヘンテコなのかをお伝えするにはまるごと本一冊を引用する必要があるくらいなんです。

がんが重曹によって治るとの根拠の1つががん細胞はアルカリ性を嫌うから、らしいのですが、がん細胞に逆に直接酸性の溶液をぶっかけたらそりゃあがん細胞もたまったものではないでしょうね。

あくまで試験管レベルの研究がそのまま臨床で効果があるとは限らないのです。

そもそもネイチャーに掲載された論文は膵臓がんが真菌と何らかの関係があるんじゃないか、というものであって、真菌によって多くのがんが発症するとは一切述べていません。

重曹よりカビキラーの方が効果あるんじゃないの?

お風呂のカビ(これは真菌です)を綺麗サッパリさせるカビキラーのpHは13とかなり強いアルカリ性です。ちなみに重曹のpHは8くらい。重曹でがん治療が可能なのであれば、カビキラーをシモンチーニ博士がやったように赤ちゃんの喉に吹きかけてしまう人がでないことを祈ります。

がんの原因は潜在意識にある「がんを恐れる心」???

実はこの衝撃のポンコツ本はシモンチーニ博士の著作を訳したものではなく、日本人の気功方面の整体を行なっている民間の治療家が著者であり、シモンチーニ博士が監修した形になっていることに注意が必要です。

ついでに申し上げておけば、監修をしたTullio Simoncini氏は患者さんを自由奔放な治療によって死なせたことによって有罪判決を受け、5年の実刑をくらっています。

この本ですが、後半はかなり奇妙なことになっています。がんになってしまう原因は潜在意識にあり、がんを恐れる心ががんを引き起こし、毒物摂取のより免疫機能が低下し、さらにカラダが酸性化する、なんてことが長々と書かれています。

どうみても真っ当な医学系研究者が相手にするような考えではないですね。

朝日新聞がトンデモ本の広告掲載を謝罪

このニセ医学本はこんなことまで引き起こしています。

インチキがん治療本の広告を掲載した朝日新聞

https://www.asahi.com/shimbun/release/2019/20191114.pdf

この奇妙なニセ医学本の広告を目撃した多くの医師がSNSで批難したことによって重大なミスを犯してしまったことに対しての自己反省文と読解することもできますね。

朝日新聞を反省させた点でこのトンデモ本はある意味で画期的なものであったとの評価できるのかもしれません。

しかし、なんでこんなタイトルを見ただけで怪しいインチキ医学系書籍とわかるようなものが、私がこの本が書棚に並んでいたのか、それもよりによって初版本を入手してしまっているのは潜在意識に尋ねるしかないかもね(笑)。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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