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【磁気治療器VSプラセボ】厚労省は大丈夫か?磁気治療器が承認された根拠はスッカスカ⁉

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市販の磁気治療器は管理医療機器として厚労省のお墨付きなのですが、そもそもその効果を認めた根拠がかなり怪しげなのです。もととなった論文を添えて検証してみます。

磁気治療器のエビデンスは疑問がてんこ盛り

磁気治療器というものが世の中に出回っています。有名どころでは古典的な「ピップエレキバン」やスポーツ選手が首にぶら下げている「ファイテン」のものが有名なのではないでしょうか?

ピップエレキバンもファイテンのネックレスも管理医療機器として医療機器認証番号がついていますので、誰でもがそれなりの効果が出るものと思い込んでいると考えられます。

私は以前から磁気治療器の効果はプラセボを越えない❗と考えています。

なぜなら私が知る限りではそもそも厚生労働省が受理した管理医療機器及びそれに付随して付与されている医療機器認証番号自体に大問題があるのではないかと強く考えています。

磁気治療器には磁石を使ったものと、交流を使った磁気治療器があります。今回検証の対象としたものは磁石を使ったものであり交流式のものでは無い点にご注意くださいね。

お客様のアンケート調査の結果をもとに管理医療機器認証⁉?

昔々、中川恭一という熱心な研究者がいました。中川氏はこのような論文を書いています。

論文「皮膚貼付用磁気治療具の治療効果について」

磁気と生体シンポジウム (2): 148-160, 1980

私は以前も何回か中川恭一氏が磁気治療器具に関する論文を多数書いていたことについて述べました。

コリに効くとされている磁気って本当に血行を良くするの?そのメカニズムについて考察

コリに効くとされている磁気って本当に血行を良くするの?そのメカニズムについて考察

磁石をつかった磁気による健康法、ピップエレキバンやマグネループ、スポーツ選手が首つけているグッズなどによって広く知られています。磁気が人体にどんな影響を及ぼすかはさておき、少なくとも血液は磁力に影響を受けないし、磁気健康治療器の効果もプラセボの域を超えないことが明らかです。磁気で血行が良くなることはありません。

厚生労働省(当時は厚生省と呼ばれていました)はこの論文をエビデンスとして磁気治療器具に対して「医療用具製造承認申請書」を受理しているのです中川氏の磁気治療器具に関する論文に目を通してみると驚愕の事実が明らかになります。

論文で使用した皮膚貼付用磁気治療具は不思議なことに既に薬事法(今は薬機法)の適用を受けて厚生大臣が承認して販売されていました。なぜ薬事法でOKが出て、厚生大臣が承認してしまったのかに関してはさらなる調査が必要ですが、話をすすめますね。

研究方法は販売された皮膚貼付用磁気治療具に添えられたアンケートハガキに答えてもらうものであることが論文では明らかにされています。

磁気治療器具関連論文の研究手法

そしてそのハガキによるアンケート調査の結果は以下のようになっています。

磁気治療器具のアンケート調査の結果

有効、つまり磁気治療器具に何らかの効果あり、と回答したものが90%以上であったために、皮膚貼付用磁気治療具の治療効果が認められ医療用具製造承認が当時の厚生省によってお墨付きになったのです。

これがもととなり、その後同じような磁気を使った治療器具が管理医療機器となりそれぞれ医療機器認証番号が水戸黄門の印籠と化してしまっているのです。

効果があったと感じた人は磁気治療器に好意的になるのは当然なんですから、アンケート葉書を返送するでしょうね、しかし、効果を観じなかった人の多くは普通は葉書は磁気治療器とともにゴミ箱行きなんじゃないでしょうか?

※個人の体験にもとづいた感想です、で治療効果は証明されているの?

メディアのサプリメントやダイエット器具の広告記事には必ず「※個人の感想です」的な文章が添えられています。

これは「打ち消し表示」と呼ばれるものであり、商品のメリットを伝える時に景品表示法を意識したものであり、効果を発揮するためには諸条件が必要であり万人に効果はないかもしれないよ、ということを伝えることが目的と考えられています。

みなさんが医療機関で処方される薬に打ち消し表示が記載されていますか?

当然書かれていませんよね、医薬品はさまざまな研究手法によってプラセボの効果を明らかに上回っていることによって厚生労働省の薬事承認が得られ、それではじめて市場で販売されるようになっているのです。

医薬品および医療機器の有効性を明らかにするために使われる二重盲検試験(ダブル・ブラインド・テスト「double blind test」)が医療業界で重要視されだしたのは海外では1970年代後半であり、日本で一般化というかマスト事項とされたのは残念なことに1990年代以降です。

ダブルブラインドが重要であることは医学界新聞の「二重盲検法でなければならない臨床試験とは」(https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2010/PA02874_11)などに詳しい説明が記載されています(この著者の植田真一郎先生、私の大学の先輩)。

結論:磁気治療器は二重盲検試験を行なっていないため、医療的な効果については現時点では不明である。

磁気治療器でパフォーマンスの向上は可能

プラセボでもいいから効果があればいいじゃん、との意見も多数あります。プラセボ効果を最大に発揮できるのは選ばれしもの限定だと私は考えています。

プロスポーツ選手は選ばれし者です。人体の機能をつらいトレーニングと天から授けられた能力をギリッギリまでパフォーマンスとして実現しているのです。喩えとしては適切ではないかもしれませんが、試合のたびに火事場の馬鹿力を毎回毎回発揮しているのです。故に

スポーツ選手がファイテンの磁気ネックレスやブレスレットでパフォーマンスを向上できるのは当たり前❗

と私は考えています。

例えば時速200キロメートルで走行するバイクから常人は飛び降りることを想定できますか?ここ数年ニワカ中のニワカなのですが、MotoGPというバイクのレースに凝りまくっています。レース中にブレーキのトラブルに見舞われたヤマハのマシンに乗ったマーベリック・ビニャーレスは飛び降りたんですぜ❗

スポーツ選手の能力とプラセボ

https://jp.motorsport.com/motogp/news/vinales-explains-dramatic-brake-explosion-in-styria-motogp/4862095/

ヴィニャーレスはとっさの判断で時速200キロメートル以上で走行するバイクから飛び降りても大きな怪我もしていません。さらに周囲を走る他のバイクを巻き込むこともしていません。

自分も周囲の人にもダメージを与えないパフォーマンス、こんな常人は良い子は真似しちゃダメだぞどころの騒ぎではないことを選ばれしものは可能としてしまうのです。

人類の限界をつねに越えようとしている一流スポーツ選手の多くがパフォーマンスをさらに向上させるためにジンクスを守っていることが知られています。ジンクスは日本語で解釈すれば、「縁起担ぎ」ですよね、ヴィニャーレスは少なくとも磁気ネックレスやピップエレキバンは使用していないはずですが、それなりのパフォーマンスを高めるために勝負メシとか試合前の儀式とかがあるはずです。

私はパフォーマンスを高めるためのお守りとして、磁気ネックレスや磁気ブレスレットを着用することを否定しているわけではありません。磁気治療器のなんらかの病気にたいするエビデンスが現時点ではスッカスカであり、そもそも磁気治療器を効果あり判定してしまった厚生労働省の非科学的な思考判断に問題有りと考えている次第です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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