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花粉荷(ビーポーレン)で夜間頻尿の回数が減少!?効果のないものをW配合しても意味ないじゃん!!

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夜間頻尿の回数が多ければ多いほど健康寿命は逆に短くなります。夜間頻尿減少効果があるとされている健康食品、例えばノコギリヤシや花粉荷(ビーポーレン)の効果は本当なんでしょうか?

夜中に何度も・・・これをWでスッキリサポート!!??

「夜中に何度も」というフレーズは男性特有の臓器である前立腺肥大症による夜間頻尿を改善させる効果がある健康食品の広告のお約束的定番ですよね。

山田養蜂場「花粉荷とノコギリヤシのサプリメント」広告

こんな感じね。山田養蜂場の「夜中に何度も」はほかの夜間頻尿改善サプリとはちょっと違って「W」がトッピングされています。このWって花粉荷エキス(ビーポーレン、bee pollen、蜂が集めた花粉のこと)にノコギリヤシをあわせてWってことらしいのですけど・・・効果のないものと効果のないものを合わせてもな~んの効果も無いんじゃないの? と脊髄反射的に解釈してしまった私は前立腺肥大症を担当する泌尿器科医なんだけどね。

ノコギリヤシは前立腺肥大症には効果なし!!

日常の診療で前立腺肥大症の患者さん(男性だけだよ)が服用しているサプリメントで圧倒的に大多数を占めるのがノコギリヤシです。ノコギリヤシ(saw palmetto)は古くから前立腺肥大症の症状に効果あると考えられてきた長い歴史があるサプリメントなのですが、現代の科学的手法による検証では効果無し、と判定されています。

コクランレビューによる「Serenoa repens for benign prostatic hyperplasia」(PMID: 12137626)では前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia、略してBPH)に対するノコギリヤシの効果は尿流測定(排尿時のおしっこの勢い)も前立腺の容積も改善しなく、夜間頻尿の回数も減少させる効果は無かったと判定されています。

コクランレビューとはコクラン世界中の医学論文を集めて代替医療・補完医療の効果を判定する 、コクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)に基づいてEBM(evidence based medicine)を確認しているものです。

ノコギリヤシについてお時間のある方は→前立腺肥大症に効果があるとされる「ノコギリヤシ」泌尿器科の専門家の評価はこれなんだけどなあ⋯。をどうーぞ。

花粉荷は本当に夜間頻尿の回数を減少させるのか?

W効果の一方であるノコギリヤシは前立腺肥大症の症状には全く効果が無いとなると、もう一方の花粉荷の実力が気になるところです。山田養蜂場が夜間頻尿改善効果の裏付けとしている医学論文はこれでしょうね。

「Beneficial Effect of Honeybee-collected Pollen Lump Extract on Benign Prostatic Hyperplasia (BPH) — A Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial」( Food Science and Technology 2008 Volume 14 Issue 3 Pages 306-310)では前立腺肥大症の患者さん47名を高用量の花粉荷を摂取するグループ、低用量の花粉荷を摂取するグループ、プラセボを摂取するグループの3つの集団に分けて12週間観察しています。その結果がこれ。

前立腺肥大症に対する花粉荷の効果

この医学論文を基にした山田養蜂場のウェブサイトがこれ。

山田養蜂場「Zn立Bee」の前立腺肥大症に対する効果

https://www.bee-lab.jp/megumi/beepollen/data.html

このグラフは一見すると花粉荷を摂取したグループはおしっこの勢いも良くなって残尿量も減少しているように見えちゃうけど、よくよく見てみるとヘンテコなことに気がつくのでは。

  • 尿の勢いは花粉荷高用量摂取グループで有意に改善
  • 残尿量は花粉荷高用量摂取グループで有意に改善
  • でも、残尿量は花粉荷高用量摂取グループとプラセボグループは統計学的に有意差なし

なんです。せっかくの研究結果に水を差す統計学的な処理ですねw。そもそもおしっこの出る勢いに関して低用量グループと高用量グループの間に位置するプラセボグループもかなり気になります。

さらにそもそも、夜間頻尿の回数などを評価するIPSSはプラセボ群でもめちゃくちゃ改善されているしね。この結果について山田養蜂場のウェブサイトでは全く触れていないのもなかなか奥深いサプリメント広告の手法なのかね。

from 13.8 to 6.5 in Group P (P<0.01),from 12.6 to 8.2 in Group L (P<0.05), and from 11.1 to 8.1 in Group H (P<0.05)

Food Sci. Technol. Res., 14 (3), 306 – 310, 2008

IPSSは国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score)と呼ばれるもので前立腺肥大に伴う症状の治療に泌尿器科医が使用しているものです。前立腺肥大にともなう症状の重症度を判断できるため有用である一方で設問がわかりにくいとの評価も患者さんからあります。詳しくは当院ウェブサイトの「前立腺肥大症」をご参照下さい。

花粉荷もノコギリヤシも夜間頻尿の減少効果は無し

間違いなく「夜中に何度も」と山田養蜂場の「Zn立Bee」の新聞広告には記載されています。これはどう見ても夜間におしっこに行く回数をイメージして捉える素人さんが大多数と思われます。

半世紀以上、ミツバチの”自然の恵み”の有用性を解明すべく、研究をかさねて

2021年11月4日 読売新聞朝刊

そして効果が期待できないノコギリヤシにトッピングする花粉荷については続いて

中高年男性のうんざりするお悩みへの有用性を発見

と広告しています。効果がないサプリの成分に効果がない別のサプリの成分をオンザしても全く効果は無いでしょうね。

夜間頻尿を改善するならサプリメントなんかより排尿日誌が効果的?

実際の診療で、「夜中に何回もおしっこに行っちゃうんだよね」との患者さんの訴えに対して、「じゃあ、前立腺肥大症の薬を処方するね」は泌尿器科医としては正しい態度ではないと考えらています。

排尿日誌を夜だけでも記録してもらうと、あら不思議、ぜんぜん夜間頻尿じゃないじゃん!!ということも少なくありません。夜間頻尿の尿量をチェックして大量のおしっこが出ているときは水分のとりすぎであることがほとんど。夕食でアルコールを大量に飲んで、その後で水分をめっちゃ飲んじゃうとか、焼酎を水割りにしてその合計が1リットル近くであれば、前立腺肥大じゃなくても夜間頻尿になったちゃうよ、って感じのことが少なくないのを善良な泌尿器科医は経験しているはず。

中には老化によってなのか尿を濃縮する能力が下がっている場合もありそのような場合はミニリンメルトという薬が劇的に効果を発揮する場合もありますしね。

排尿日誌については当院ウェブサイトの排尿日誌(排尿記録)をご参照くださいませ。

日本泌尿器科学会と日本排尿機能学会が出している「夜間頻尿診察ガイドライン」では飲水に関する指導は推奨グレードAだし、花粉が原料となっている保険処方薬であるセルニルトンでさえ、推奨グレードはC1なんだよねえ〜。

あくまで多分だけど、山田養蜂場が根拠としている医学論文に協力してくれた47名の方々が生活指導を含む行動療法をおこなっていればノコギリヤシ+花粉荷のサプリメントなんか飲む前に夜間頻尿等の症状が改善していることが予想されるのです。

なんせ行動療法は夜間頻尿に対するエビデンスレベルは2ですからね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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