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微熱、微熱と気軽に言うけど、何℃以上なら微熱なの?

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熱っぽい、と感じて体温測ったら思ったほどでなく「微熱か」⋯という経験誰もがお持ちのはず。

微熱は普段のご自身の平熱+1度くらいが目安かもしれませんが、微熱に定義はあるのでしょうか?例えば医療機関で熱を測って「微熱ですね」と言われたとしても、平熱は人それぞれのはず。何を持って微熱なのでしょうか?

微熱だから様子見ましょうね、って言われても、微熱は何度から?

ちょっと熱っぽいのでクリニックを受診。「微熱だから家でゆっくりしていましょうね」的に薬も処方されないで、帰されたことありませんか?

そもそも微熱とは体温が何℃から何℃としっかりした定義があるのでしょうか?微熱より熱が無いのは平熱と呼ぶのは知っているけど、微熱より若干高めの体温はいきなり高熱と呼ばれているの?

熱にまつわる素朴な疑問を私自身の知識を整理するつもりで書き連ねて見ますね。

なんでこんな記事を書き出したのか?このブログを読んだスタッフの疑問がきっかけでした。

おでこにピピッとやるだけの非接触型体温計、その仕組みと正しい使い方

おでこにピピッとやるだけの非接触型体温計、その仕組みと正しい使い方

日々の体調管理の基本は自身の体温を正しく知ること。検温需要が高まっていますが、みなさん、体温毎日測っていますか?体に触れずに一瞬で体温を測定できる体温計のお話です。非接触型の体温計って正確なの?と疑っている方も多いはず。体温を計測できる仕組みと医学的に正しい使い方を解説します。

「院長、微熱っていいますけど、何℃から微熱なんですかあ~?」、この「かあ~?」の部分がポイントで、常日頃から定義を明確にしなさいとスタッフに指示していることへの私への嫌がらせ的挑戦状なのです(ってそこまで力む必要は全くなし)。

微熱の定義、簡単に見つかりそうだけど見つからない

「院長は自分がよーく知らないことに関しては、相手を調伏させるために良く英文の論文を突きつけますよね」、と私の戦法を熟知している古参スタッフ。「いやいや、そんなことないよ。英文はPUBMEDとい検索サイトがあって使いやすいからだよ」と私。

「でも、毎月日本語論文の請求書、カードから引き落とされていますよ」と途中参入した会計担当古参スタッフ。

はい、はい、よーくわかりました。今回は日本語のどなたでも一次ソースを無料で確認できるサイト、それも信頼度が高いと考えられるサイトを使って「微熱」の定義を説明しますね。

たまたま手元にあった「生体・機能検査のABC」(日本医師会発行)の目次をチェックしてみたら、そもそも「体温」の項目が無いぞ。人体の生理学的データの基本中の基本である体温測定は生体機能検査には含まれないの~???

次に「早わかり診療ガイドライン100」(medicina2020年増刊号)もチェックしたけど「体温」「発熱」そして「微熱」に関する記述は見当たりません(この本、私も過活動膀胱の項を担当しました。泌尿器を専門としていない先生はぜひぜひ、お買い上げを。アマゾンでもサクッと購入できます)。

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予防接種の項目に、明らかな発熱として「通常37.5℃以上を指す」との記載をやっとこさ見つけました。

発熱は37.5℃以上だとしても、「微熱」は何℃から何℃なのでしょうか、謎は深まります。

そもそも平熱の定義が無いと微熱は決められないじゃん

心肺停止心拍再開後昏睡状態の患者さんへの治療方法として「低体温療法」というものがあります。低体温療法は目標体温32~36℃とされていますので(https://www.openhp.or.jp/staffs/manual/pdf/taion_06.pdfなどによる)、36℃は低体温とも考えられます。

しかし、日本救急医学会によれば低体温症は35℃以下とされています(https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0508.htmlより)。この場合の体温は直腸温,膀胱温,食道温,肺動脈温などを測定する必要があるので、一般の方向けでは無いですね。

こうなってくると、平熱の定義自体があやふやになってきますので、微熱を定義せよ!との当院古参スタッフの私へ素朴な疑問(素朴というより、挑戦的質問笑)は、かなり医師を悩ます難問である可能性が高まってきました。

理学療法科学という専門誌に「リスク管理 バイタルサイン」(理学療法科学/20 巻 (2005) 1 号/ https://doi.org/10.1589/rika.20.53 )との論文がありました。

ここには

低体温は35.9℃以下、平熱が36.0~36.9℃、微熱が37.0~37.9℃、中等熱38.0~38.9℃、高熱が39.0℃以上である。

とサラッと記載されています。微熱の定義の一次ソースは残念ながら引用文献の項目には記載がありません。

話がかなり複雑になってきました。

医学的根拠、それも日本語であり、誰でもがアクセスできる一次ソースを提示しながら「微熱」を定義することはかなり難易度の高いものである可能性が深まってきました。

一般の方向けの微熱の定義は簡単かも⋯。

家庭内で体温測定をする場合、医師であっても直腸内とか膀胱内とかの深部体温を測定する人はめったにいないと思います(俺は毎日体調管理のために、直腸温測定しているぜ、って医師がいても無視します)。

家庭内で使用される体温計は今では電子体温計が普通ですよね。電子体温計、脇にはさむ式で有名なメーカーとしてテルモとオムロンがあります。

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私の診察机に置いてあるのは「オムロン」でした。

テルモの「テルモ体温研究所」(https://www.terumo-taion.jp/terumo/report/18.html)によれば日本人の7割程度が36.6℃から37.2℃だそうです。

テルモの発熱の定義は強引かつ明確です。

【POINT】体温が明らかに平熱より高ければ発熱

ねっ。

体温計界のもう一方の雄であるオムロンは

平熱には個人差があり、部位により温度が違います。

平熱は何度ですか? – オムロン

とこれまた強引かつ明確なお答え。

日頃から体温を測定する習慣が無いと、発熱しているのか?その程度は微熱なのか、高熱なのかさえ、判別することは不可能になってしまうようです。

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オムロン 耳とわきの下の温度分布

一般の方が使用する体温計メーカーでさえ、平熱とは、そして微熱とはとの素朴な質問には答えてくれていないのが現状なんですね。

微熱の定義、キリがないのでまとめます

日本において診療を行っている医師のほとんどが37.5℃以上を発熱していると考えています(※当院所属5名の医師を対象としたアンケート調査結果によるw)。

そういえば、現在日本中にパニックを起こしている感染症の医療機関を受診する場合の目安も37.5℃以上の発熱が続くことでしたね(もちろん持病等がある方は該当しません)。

微熱は37.5℃以上、解熱剤等を積極的に使用したほうが良いことが多い高熱は38.5℃以上と考えて良さそうです。

来院した患者さんの発熱状態を調べるために、外来で直腸や膀胱に体温測定の特殊な医療機器を差しこまれることはまずありえません。

医療機関であっても、家庭向けスペックと同じテルモやオムロンの電子体温計あるいは非接触型体温計を使用することを考えると、37.5℃以上を微熱である、と五本木クリニックとしては判断します。

おまけ:プロユースっぽい体温計を購入する人が多いようです。そのような方はこんな話もありますので、ご注意くださいね。

高性能体温計を購入したら、なんと中味が空っぽだったんだってさ。

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https://minkara.carview.co.jp/userid/1588401/blog/43903706/

さらにこのような話もあります。

「市場に出ている額式体温計の半分が偽物」=中国メディア(https://news.so-net.ne.jp/article/detail/1952651/)より

人の弱みにつけ込む足元商売にくれぐれもご注意ください。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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