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睡眠改善サプリで本当にぐっすり眠れるようになるの?

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機能性表示食品である睡眠改善サプリメントが人気のようです。ストレス社会において、質の良い眠りを求める人が多いのでしょうね。

私がネット広告でよく目にする、北の達人コーポレーションが北の快適工房というブランドで販売している睡眠改善サプリ「北の大地の夢のしずく」がどの成分がどのような仕組みで睡眠の質を高める効果が出るのかを調べてみました。

睡眠改善サプリで熟睡できる理由

「北の大地の夢のしずく」以外の睡眠改善サプリのほとんどが質の良い睡眠をサポートする仕組みは次のようになっています。

トリプトファン → セロトニン → メラトニン

 

メラトニンが睡眠に関係している物質であることは医学的には実証されていると認識して間違いではありません。セロトニンがヒトの精神活動に影響を及ぼしていることも科学的に実証されています。さらにトリプトファンは必須アミノ酸の一つであり、ヒトが生きていくために必要な物質であることは中学2年生で学ぶはずです。

私はトリプトファンもセロトニンもメラトニンも医薬品の成分であり、サプリメントとして販売すると薬機法等に抵触してしまうはずなのに、何で睡眠改善サプリは堂々と販売されているのか不思議になってさらに調べてみると、かなり複雑な話になっていました。

「ラフマ」と「イソクエルシトリン」が睡眠の質を改善する、とサプリ業界

広告をみる限りでは、「北の大地の夢のしずく」が睡眠促進ホルモンを増やして睡眠の質を高める❗と強く主張する裏付けは「ラフマ」という謎の物質と推理できます。

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機能性表示食品「北の大地の夢のしずく」https://www.ys-suimin.com/pc/より

このラフマという物質が難問でした。私がサプリに関して知りたいことがある時に常用する「健康食品・サプリメント『成分』のすべて」(総監修 日本医師会 日本薬剤師会 日本歯科医師会)でさえ「ラフマ」の記載はありませんでした(私が持っているのは2017年版だからかも)。

「北の大地の夢のしずく」によれば、植物に含まれるラフマがセロトニンを増やすことによって、睡眠に関連しているメラトニンの合成量を増やす、とのこと。

機能性表示食品の届出情報を検索するシステムがが消費者庁のサイトにあります(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)。これを使って「ラフマ」を調べてみると

ラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリンが含まれます。ラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリンには睡眠の質(眠りの深さ)の向上に役立つことが報告されています。

とラフマの機能性が説明されているのですが、「イソクエルシトリン」というまたしても謎の物質が登場して来ちゃいました。

ラフマ由来の睡眠改善サプリの主要成分はイソクエルシトリンであり、このイソクエルシトリンが睡眠の質を改善しするために、睡眠改善サプリとか睡眠サポートサプリとか呼ばれる機能性表示食品がぞろぞろと出現して販売されることになったのですね、多分。

となると、イソクエルシトリンが最終的にメラトニン、あるいはセロトニンやトリプトファンの合成に何らかの関与をしているはずなんです。そこで「イソクエルシトリン」に関して調べてみると。伊右衛門特茶にも含まれています。

伊右衛門特茶って体脂肪を減らすことをウリにしているよね〜、体脂肪を減らすことと睡眠を改善してぐっすり眠ることとどんな関係があるの?と深みにハマってしまいますので、機能性表示食品の機能を裏付ける「ラフマ」と「イソクエルシトリン」に関しての探究はひとまず休憩します。

謎の物質「ラフマ」はウィキによると「羅布麻」と書いて、薬草あるいはお茶として昔から利用されていた様子。でも、このラフマは私が持っている古典的漢方薬の教科書「臨床応用 漢方処方解説」(矢数道明 著)にも掲載されていないんだよなあ⋯。

最終的に素朴な疑問を残しておきますね。そもそも「トリプトファン → セロトニン → メラトニン」という図式というか流れは科学的医学的に実証されていたとしても、ラフマにしろイソクエルシトリンはこの流れのどこに作用しているのでしょうか?

さらにラフマやイソクエルシトリンをガンガン投入しても、トリプトファンからセロトニン、さらにセロトニンからメラトニンが合成されるには酵素が必要なはず。その酵素はどっから体内に投入されるんでしょうねえ⋯。

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ラフマが無い → セロトニンが不足 → メラトニンが不足 → 睡眠の質が下がる

だからと言って、

ラフマが有る → セロトニンが増加 → メラトニンが増加 →睡眠の質が上がる

という単純な機序でいいのかなあ?

睡眠改善サプリと睡眠薬の違い

そもそも睡眠の質を改善したい、あるいは眠れないとの悩みを抱えている時になぜ機能性表示食品をチョイスして、医療機関を受診しないのでしょうか?

睡眠薬や睡眠導入剤と呼ばれる薬の副作用がクローズアップされすぎだと思います。確かに、処方量を守らなかったり不適切な使用方法による犯罪も目立ちます。

例えば睡眠薬の一つとして長年大量に処方されてきたデパス錠(一般名はエチゾラム錠)の副作用として認知症が大々的にメディアに取り上げられたことがあります。確かに依存性の問題はあったとしても、医療機関で処方を受ければ安心できるはずです。デパスと認知症の関係に関してリスクが高まると報告した海外の論文もありますが、睡眠障害を放置する方が認知症のリスクである、との考え方もあります。

旧来の睡眠薬とは違った作用機序の処方薬としてメラトニン受容体に作用するロゼレム(一般名はラメルテオン)なども登場しています。

ありゃ⁉?そういえば、ロゼレムも睡眠改善サプリもメラトニンに関連しているなあ⋯違いといえばしっかりとした臨床試験を行っているのか否かですね。

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メラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム®錠 8 mg)の薬理作用と臨床試験成績 日薬理誌 136,51~60(2010)

処方薬のロゼレムはこんな感じで効果が実証されています。

そもそも機能性表示食品の睡眠改善サプリの効果は科学的に証明されているの?

2020年11月13日現在、消費者庁にラフマが主成分である機能性表示食品の届出は36件あります。

ラフマが主成分の機能性表示食品で消費者庁に届出がされているもの

そういえば、機能性表示食品って安倍前首相が日本再興戦略の一つとして、食の有する健康増進機能の活用をぶち上げたのがそもそもの話のはじまりでしたね。

機能性表示食品は事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示することが許されているのですけど、そもそも睡眠改善サプリのキモであるラフマやイソクエルシトリンが睡眠にどのような影響を及ぼすのか、医師である私でさえ明確な情報に辿りつけないじゃん❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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