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学会の公式見解より多い女性の尿失禁問題。当然、治るものなら治療したほうが良い。

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生活の質を落としてしまう尿失禁(尿もれ)。学会が把握してる尿失禁患者さんの数と民間企業の調査結果が大きく違っていることに気がつきました。

さらに20歳代であっても、尿失禁を主訴として泌尿器科を受診する患者さんはいたとしても、6割の女性が尿失禁を経験しているとの、泌尿器科医の予想を大きく上回る調査結果があります。

泌尿器科学会は女性の尿失禁は4割以上が経験、民間の調査だともっと多い

泌尿器科領域でここ10数年で急激に患者さんが増えてきた病気の一つが尿失禁。尿失禁は一般的には「尿もれ」とか「おもらし」とかの表現を取る人も少なくはありません。

尿失禁の定義としては、自分の意志に反して尿が漏れてしまうこと、と泌尿器の専門家であろうと、一般の医師であろうと、普通の人であろうと解釈していると思います。一方で赤ちゃんがおもらしすることを、小児科を専門としている医師の間で「尿失禁」と呼んでいるかは不明です(まあ、調べたり尋ねたりすれば判るけどね)。

尿失禁は英語ではurinary incontinence、と書き表します。urinary は英語で尿を意味するurineから派生した言葉で「尿の」ってことで、日本語式発音では「ユーリン」です。一方のincontinenceは、そもそもは自分でコントロールできない状態を表す英語ですが、ほとんどの場合は尿失禁を意味する時に使用されていますので、incontinence(日本式発音だとインコンチネス)イコール尿失禁と考えて大間違いでは無いです。

私が知っている日本における女性尿失禁患者さんの数は日本人女性8人に一人。日本泌尿器科学会の見解としては800万人なのですが、某民間企業の調査によると2人に1人が尿もれ、つまり尿失禁を経験しているという驚きの調査結果を見つけてしまいました。

P&Gによる日本人女性20代から60代4万人にきいた尿もれ調査結果

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社「日本女性 20代から60代 40,000人 に聞く、UI(尿もれ)実態大規模調査」(https://kyodonewsprwire.jp/release/201910162218)

日本人女性20歳代の半数以上が尿失禁⁉

私が尿失禁も症状の一つとして挙げられる過活動膀胱(overactive bladder、略して泌尿器科医はOABと呼んだり書いたりします)に関して「早わかり診療ガイドライン100~エッセンス&リアルワールド 」(medicina2020年 増刊号 医学書院)の過活動膀胱の章を担当した時に調べた尿失禁患者さんの数は800万人でした。

この800万人という数を導きだしたデータに若干の疑問があったので、機会がある都度、思いついたように日本人女性の尿失禁患者さんの数をちょくちょく調べていたら、前掲の日本人女性の半数が尿失禁を経験という数値を見つけたのです。

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(洗剤やヘルスケア商品のP&Gの正式名称)の調査は20歳代から60歳代の女性4万人を対象とした、かなり大掛かりな調査の結果です(日本泌尿器科学会のデータは実は⋯以下自粛)。

体感的には尿もれで当院を受診する女性は中高齢者が多いことは多いけど、若くても尿もれに悩んで受診する女性も少なくない、でした。しかし、20歳代でも2人に1人が尿失禁(尿もれ)を経験しているとは予想をはるかに超えた数です。

日本人女性20歳代の尿失禁の原因は何?

私が日常の診察で尿もれを主訴とする患者さんの男女比は大体半々。男性の場合は前立腺肥大症が現任となった尿もれが多くを占めるため(前立腺は男性のみにある臓器)、女性の尿失禁に限定して話をすすめます。

尿失禁の分類としては泌尿器科学会的には

●腹圧性尿失禁●切迫性尿失禁●溢流性尿失禁●機能性尿失禁、としています。

腹圧性尿失禁は飛んだりはねたりすることによって尿もれする病態で、特に出産経験者に多いと考えられています。

切迫性尿失禁は過活動膀胱の症状の一つというか、過活動膀胱と診断する上で重要な症状であり、突然尿をしたい感覚があらわれトイレに飛び込んでしまっても結局は尿を漏らしてしまう状態です。

溢流性尿失禁は膀胱が様々な原因によって収縮できないことによって、尿が溢れ出てしまう状態(overflow)による尿もれ。

機能性尿失禁は高齢者に多いトイレまでたどり着けないで尿を漏らしてしまう、あるいはトイレで尿をする行為ができないで尿もれしてしまう病態です。

溢流性尿失禁と機能性尿失禁は20歳代の女性の場合は当然少ないと考えられますので、P&Gの衝撃的な結果は腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が中心になっていることが予想できます。

20歳代女性の尿失禁の対策と治療についての傾向

P&Gはオムツや尿もれパッドを取り扱っている会社なので、女性の尿失禁患者さんが泌尿器科を受診しない自社製品で尿もれ対策をカバーできるのかの市場規模を把握するための調査であったと予想されます。

先程述べたように20歳代の女性が尿失禁を主訴として泌尿器科を受診することは稀ではなくても、多いとは言えないと私は感じています。P&Gは貴重なデータを私達泌尿器科医に提供してくれていました。

  1. どの年齢の女性も6割前後は尿失禁を経験している
  2. 20歳代の女性で尿失禁を経験している人の63.4%は出産経験が無い❗
  3. 女性尿失禁患者さんの57.6%は相談していない(当然、泌尿器科は受診していない)
  4. 尿もれパッドは使用率は21.9%

P&Gの調査が正確なものであるならば、20歳代の女性の約6割が尿失禁を経験していて、そのうち約6割が出産経験が無い、さらに尿失禁経験があっても約6割は未治療であり、ドラッグストアなどで入手可能な尿もれ対策グッズを約8割が使用していないことになります。

20歳代の女性が1000人いたとします。上記の数値を整理すると

600人が尿失禁を経験

相談していないを泌尿器科を受診していないと仮に解釈すると600人 ✕ 4割 =240人が尿失禁の原因を特定していない

尿もれ対策グッズを使用していている人は泌尿器科医で治療していないと仮定すると、600人 ✕ 8割 =480人は尿失禁状態を放置

以上のようになります(めちゃくちゃバイアスかかりまくりね)。

泌尿器科で治療中でも尿もれパッドを使用している人はいます。

尿失禁の経験の有無だけの調査なのでジェットコースターに乗ってちびってしまった20歳代女性も含まれている可能性もあります。

この調査はインターネットを使って行われているので、もともとバイアスがかかっている可能性があります。

画像

20歳代の女性の人口は582万7000人、尿もれ経験者は349万6000人、尿もれを放置している人は279万7000人という驚くべき数字が導きだされてしまうのです(えーっと、P&Gの調査データをもとに、公表されている詳細からの分析であり、あくまで※個人の計算ですという点に注意してね)。

P&Gの調査結果は日本泌尿器科学会が把握している、尿失禁患者さんの予想数とはかなり乖離していますので、P&Gにお願いして調査の詳細を教えてもらうように奮闘努力をしてみる予定です。

最後に一言:女性の尿失禁は現在は服薬や手術で多くの場合は改善できる病気・病態です。一方で日本のガイドラインでは他国では標準治療に準ずると考えられているのにガイドラインにも掲載されていなかったり、保険診療ではできない治療がいくつかあります。

本年2020年4月にやっとボツリヌス毒素を用いた過活動膀胱の治療が保険診療の対象になりました。

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

過活動膀胱へのボツリヌス毒素を膀胱内に注入する治療は保険適用(2020年4月より)です。過活動膀胱は突然トイレに行きたくなり、我慢が難しい尿意切迫感や我慢できずにお漏らししてしまう切迫性尿失禁や頻尿です。ボトックス注射を使った過活動膀胱治療は、どこの泌尿器科でも受けられる治療ではありません。詳しく解説します。

尿失禁に限ればこのような治療方法もあります。

レーザーを使った尿失禁治療、保険適用では無いけど効果は期待できそうです。

レーザーを使った尿失禁治療、保険適用では無いけど効果は期待できそうです。

尿失禁の悩みは、恥ずかしいから友達にも家族にも相談できず医療機関を受診することはさらに恥ずかしいと考えている方は少なくありません。薬や体操で失禁を改善するケースもありますが手術ではないと治療できないこともあります。手術といっても尿失禁治療は日帰りで手術できます。レーザーを使った尿失禁治療をご紹介します。  

どちらの治療も当院でも日帰りで行なっています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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