軽い尿もれ自己診断を試してみたら、尿もれの原因がかなり微妙かつ強引かも(笑)。

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若い女性にとっておしっこが漏れる(尿失禁)問題は、予想以上に生活の質が低くなることは間違いないはずです。大手衛生用品メーカーのサイトでも尿もれ・尿失禁の解説ページがあります。

一般の方向けのセルフチェックリストには、かなりこじつけ的な若い女性の尿もれ原因の説明があったので、泌尿器科医として検証してみました。

若い女性の軽い尿もれの原因を一般的にはどのように考えているのか?

年を取ればおしっこが近くなったり、たまにはおしっこがもれたりするのはしかたない、と考えている人は少なくありません。夜におしっこに起きるのは年を取ったんだから当然、と言い切る人もいなくはありません。しかし、おしっこが漏れたり、おしっこが近かったり、おしっこで夜トイレに行くことは生活の質(QOL、Quality of Life)を悪くすることは間違いありません。

先日このようなブログ記事を書きました。

学会の公式見解より多い女性の尿失禁問題。当然、治るものなら治療したほうが良い。

学会の公式見解より多い女性の尿失禁問題。当然、治るものなら治療したほうが良い。

生活の質を落としてしまう尿失禁(尿もれ)。学会が把握してる尿失禁患者さんの数と民間企業の調査結果が大きく違っていることに気がつきました。さらに20歳代であっても、尿失禁を主訴として泌尿器科を受診する患者さんはいたとしても、6割の女性が尿失禁を経験しているとの、泌尿器科医の予想を大きく上回る調査結果があります。

若い女性にとっておしっこが漏れる(尿失禁)問題は、予想以上に生活の質が低くなることは間違いないはず、と考えていくつかの一般向け健康情報(素人ライターの手によるものでは無いと考えられるまっとうな記事)に目を通してみました。そこでこの花王のウェブサイトを元にして、女性の尿もれ問題についてさらなる検証をこころみました。

前掲のブログ記事で引用したP&Gの調査結果にはなかった「軽い尿もれ」問題の原因を花王が一般向けにどのように説明しているのか、泌尿器科医とチェックさせていただきます。

「軽い尿もれ」とは、定義はどうなっているのか

尿もれで「軽い尿もれ」があるのであれば、当然「重い尿もれ」もあるでしょうし「普通あるいは中程度の尿もれ」もあるはずです。

花王のサイトではこのようにして軽い尿もれをチェックするようになっています。

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https://www.kao.co.jp/laurier/health/021/より
  1. 出産経験は尿もれの原因になる⋯でも、最近は出産年齢は上がっているからなあ。
  2. 生活が不規則だと尿もれになる⋯これはちょっと謎。
  3. 疲れがたまっているから尿もれになる⋯私はこれエピソードとして経験しています。
  4. 普段からトイレが近いと尿もれ⋯たぶん、過活動膀胱が原因の尿もれのことと予想。
  5. ストレスが尿もれの原因⋯なんでもかんでも原因をストレスとすると医師としては楽なんだけどなあ。
  6. 肥満だと尿もれしやすい⋯これは重要なので医学的説明を加えたくなります。
  7. 便秘だと尿もれする⋯ちょっと意味不明だなあ。
  8. 水分を飲まないと尿もれしやすい⋯風が吹けば桶屋が儲かる的に説明は可能かもしれないけど。
  9. 運動不足で尿もれになる⋯不要不急の外出を控えた結果、軽い尿もれになった、との患者さんは今ところ経験していないよ。

残念ながら軽い尿もれの定義について花王のサイトには書かれていません。

尿もれ(失禁)に関して、前回ブログ記事を書いたらいくつかの質問が来ていたいので、花王の若い女性の尿もれに関して、チェックリストを参考に原因と解決方法や治療方法をお伝えします。

出産が軽い尿もれの原因となる

飛んだりはねたり、くしゃみをするとおしっこが漏れてしまうことがあります。出産の時に産道が開き、この時に骨盤底筋群全体が緩むことがあり、これが尿もれの原因になるのです。

しかし、前回のブログ記事で取り上げたのは20歳代の女性に多いとの結果になったP&Gの調査によると、なんと20歳代であっても6割近くが尿もれを経験しているとのこと。

20歳代で出産している人は今の日本では稀。平成28年の第一子出産年齢は30.7歳です(内閣府の平成30年版「少子化社会対策白書」による)。

出産以外が原因となって20歳代の女性の軽い尿もれが生じている可能性が高いと思われます。

不規則な生活を送ると、軽い尿もれの原因になる

これ非常に難問です。生活が不規則だと美容面でも良いことはなさそうだし、当然健康面でも良くはないでしょう。でも、軽い尿もれにしろ、大量の尿もれにしろその原因が不規則な生活である、と第一選択する泌尿器科医は稀だと思います(※なかには変わった思考をもった医師もいるけどね)。

花王の軽い尿もれ記事をよくよく読んでみると、続く設問に「疲れがたまっている」「ストレスがたまっている」「便秘がちである」「運動をしない」などがあります。規則正しい生活を送っていれば疲れもたまらないし、ストレスもたまらないし、便秘も解消するし、当然運動も規則正しい生活に組み込みましょう、ってことになるのかな?ちょっと小学校の先生的指導で、違和感が無いわけじゃないです。

疲れがたまっていると軽い尿もれの原因になる

こんな話がありました。めちゃくちゃ疲れているのに付き合いで一緒に飲みたくも無い相手と飲酒して、つまらないから大酒してしまった。

帰宅後化粧も落とさず、着の身着のままでベッドに倒れ込んで寝てしまったら、次の日、びっしゃびしゃの洋服と冷たいシーツに気がついて起きてしまった⋯これは軽い尿もれじゃなくて、おねしょ、それも下手すりゃ急性アルコール中毒に伴う失禁だった可能性さえあります。

疲れによる軽い尿もれは、たぶんあとに続く「ストレスがたまっている」から軽い尿もれになるという難問と関連性があるのかもしれません。

トイレが近いと軽い尿もれの原因になる

トイレが近い原因として、膀胱炎と過活動膀胱の2つが代表的な原因疾患です。膀胱炎で頻尿になるとおしっこが漏れてしまうことはあります。また、過活動膀胱の一つの症状として強い尿意、普段とは違った尿意があります。

でも、過活動膀胱のガイドラインでは失禁、つまり尿もれは過活動膀胱と診断する上でマストな条件ではないと書かれているのです。

もちろん過活動膀胱で切迫性尿失禁がともなうことも珍しくはありません。しかし、尿もれは必要条件では無いです。

膀胱炎にともなって軽い尿もれが起きることを意味したものと過活動膀胱に伴っておきる切迫性尿失禁のことをなんでしょうね。

ストレスがあると軽い尿もれの原因になる

ストレスが原因です、と医師が患者さんに告げると、患者さんが妙に納得してしまう場合があります。私は診療時になるべくストレスが原因である、とは言いません。だって、ストレスの定義自体があやふやだし、完璧にストレスフリーの人なんているはずないもん。

緊張すると尿意を感じることがあります。

尿意を感じても、状況によってはトイレにすぐにいけない場合もあります。

ストレスが原因となって軽い尿もれが起きることもこの流れとしてはありうるのですが、先程の生活の乱れが軽い尿もれの原因になるというロジックから強引にとってつけたストレス尿もれ原因説のような気がしないでもないです。

肥満だと軽い尿もれの原因になる

たぶんこれは腹圧性尿失禁のことを言っているのだと思います。肥満が原因となって骨盤底筋群が緩む、そのようなことなんでしょうね。でも、若い女性の場合、ちょっと太ったくらいで骨盤底筋群が緩むとは思えないけどね。

余計なお世話かもしれないけど、花王の尿もれ肥満原因説を一泌尿器科医として擁護しちゃうと、過活動膀胱のリスクファクターとして肥満があります。過活動膀胱だと先程も書いたけど尿もれすることがあるから、肥満が原因で軽い尿もれが起きる、と判断することも可能です。

便秘で軽い尿もれの原因になる

便秘が原因となって尿もれが起きる、これもちょっと難問です。便秘でトイレで必要以上の力を入れてしまうことによって、骨盤底筋群が緩んで尿もれになる、あるいは頻回の排便のためにトイレに行くために、膀胱炎になってその結果軽い尿もれが生ずる。

ちょっとこじつけっぽい話だと感じちゃいました。

水分を控えると軽い尿もれの原因になる

これは水分が少ないと尿量が少なくなって膀胱炎になりやすい、ということ以外に解釈は無いと思われます。

こじつければ過活動膀胱がベースにあって、頻尿の原因が水分摂取量にあると考えた若い女性が水分を控えた。でも、軽い尿もれになってしまう、もあり得ます。でも花王のサイトからそこまで読み取る一般人はいないでしょうから、膀胱炎が原因となって軽い尿もれになるよ、ってことだと思います。

運動不足だと軽い尿もれの原因になる

2020年は不要不急の外出を控えたために、運動不足になった方も多いかと思われます。となると、泌尿器科は軽い尿もれ患者さんで溢れていることになりそうですけど、おかげさまでというか、悲しいことにというかそのような話を耳にしたことは今のところはありません。

当然、当院としても軽い尿もれを主訴とした若い女性患者さんで待合室が大混乱なんてことには全くなっていません。

ありえる可能性としては運動不足のために、骨盤底筋群が弱くなって尿もれの原因となってしまうことです。でもさあ、若い女性が運動不足くらいで骨盤底筋群が尿もれするほど弱まるかねえ。

セルフチェック式の診断、最終的には自社の製品に誘導されちゃうのね

ねっとであるあるのセルフチェック式の病状診断、尿もれや過活動膀胱が治療可能であることを知るきっかけとなってくれると、泌尿器科医の端くれ的には好感度の高いものになるのですが、花王としては

安心して気持ちよく過ごすためには、水分も吸収できる尿もれ専用のパッドやライナーがおすすめです。

に誘導したいのでしょうね。

そうなると町の泌尿器科医としてはこの2つに強引にもっていきたくなります(ブーメランとの批判は受け付けないよ)。

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

過活動膀胱へのボツリヌス毒素を膀胱内に注入する治療は保険適用(2020年4月より)です。過活動膀胱は突然トイレに行きたくなり、我慢が難しい尿意切迫感や我慢できずにお漏らししてしまう切迫性尿失禁や頻尿です。ボトックス注射を使った過活動膀胱治療は、どこの泌尿器科でも受けられる治療ではありません。詳しく解説します。

過活動膀胱が主原因の軽い尿もれには薬剤の効果的ですが、それでも改善しない人はこれがおすすめです。

レーザーを使った尿失禁治療、保険適用では無いけど効果は期待できそうです。

レーザーを使った尿失禁治療、保険適用では無いけど効果は期待できそうです。

尿失禁の悩みは、恥ずかしいから友達にも家族にも相談できず医療機関を受診することはさらに恥ずかしいと考えている方は少なくありません。薬や体操で失禁を改善するケースもありますが手術ではないと治療できないこともあります。手術といっても尿失禁治療は日帰りで手術できます。レーザーを使った尿失禁治療をご紹介します。  

レーザーを使用した治療はガイドライン外であり、保険診療適用ではありませんのでご注意ください。

どちらも日帰りで治療可能です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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