fbpx

抗体があっても感染するし、予防接種で抗体が出来ないこともあるけど、ワクチンが重要である理由。

更新日:

ワクチンで防げる感染症は、とにかくワクチン接種を受けることが推奨されます。

日本で接種可能なワクチンはざっと20種類以上。感染することを防ぐ、あるいは感染しても重症化を予防できる、人類の英知の結晶ともいえるワクチンではあっても、残念ながら効果を発揮する抗体が十分に出来ない場合もあります。

B型肝炎予防ワクチンを複数回接種しても、抗体が出来ない私のワクチンに対する考え方をお伝えします。

予防接種のワクチンをうっても抗体ができない❗

私はワクチンを打っても抗体が出来ない、という大問題に悩まされています。私の場合、なぜか繰り返しB型肝炎ワクチンを接種しているのに、ウイルス感染予防を発揮する抗体ができないのです。

医師の場合、一般の方より感染症に感染するリスクは高く、特に主に針刺し事故による血液を介したB型肝炎感染は劇症肝炎となって最悪の場合は死に至ります。私は泌尿器を専門としています。泌尿器科は手術もしますので、血液による感染症は防げるものなら防ぎたいですし、ワクチンがあるのであれば積極的にワクチン接種を受けています。

しかし、ここ数十年間定期的にB型肝炎ワクチン接種をしているのに、抗体ができないのです。

ワクチン接種で抗体ができると、どうなるか?

研修医の時に、針刺し事故で劇症肝炎となった他科の先輩医師がいたことをきっかけに、日本でB型肝炎ワクチンが承認されて以来、かなりの回数ワクチン接種を繰り返しているのに抗体がつかないのです。

ワクチンは原因となる毒性を弱めた病原体や感染能力を失わせた(不活化と呼びます)病原体を体内に入れ込むことで、病原体に対する抗体を作ることで感染予防効果を発揮します。ワクチン接種によって抗体ができる仕組みは、獲得免疫と呼ばれていて、感染してない状態ではもともとは人体には備わっていない病原体の抗原に特異的に反応する抗体を人工的に作り上げるものです。

抗体を作るためには、病原体に感染するかワクチン接種をするしか方法がありません。

医師の針刺し事故は増加している、との報告もあります。

医師の針刺し事故が増加している件

https://medical-tribune.co.jp/news/2016/0312500443/

経験の浅い医師ほど針刺し事故を起こしています。しかし、近年は私のような医師になって20年以上の針刺し事故は年々増加傾向にあります。

私の場合、自らの不注意によって手術中あるいは採血中などに患者さんの血液が体内に入ってしまい、その患者さんがアクティブなB型肝炎ウイルスを保持していた場合の結果はかなりシビアとなります。

B型肝炎の場合、針刺し事故によって感染が成立する割合は10〜60%(職業感染制御 研究会資料や大阪大学医学部等による)、劇症肝炎になった場合の致死率は急性だと60%近くになっています(岐阜大学肝疾患診療支援センター等による)。

開業医生活を20年以上経験していると、恥ずかしながら自分で患者さんに使用した針を刺してしまったことが3回ほどあります。その場合は患者さんの承諾を得て肝炎ウイルスの検査をさせていただきました。その患者さんがB型肝炎の病原体を保持していなかったのは不幸中の幸いです(自分の不注意が原因であり、自己責任100%だけど)。

なぜワクチンを接種しても抗体がつかないのか?

B型肝炎ワクチンは3回接種する必要があります。もしも、3回接種しても抗体が出来ていない場合は、もうワンクール接種をすることの検討が必要なのですが⋯私の場合、たぶん5クール以上はワクチン接種をしているはずなんだけど、まだ抗体が出来ていません。

なぜこのようなことになってしまっているのでしょうか?ワクチン注射をするとBとTの2種類のリンパ球(B細胞、T細胞)のうち、B細胞が抗原に刺激されて増殖し抗体を作り出します。B細胞はそもそも様々な抗原に反応する細かい種類があると考えられていて、抗原、私の場合はB型肝炎ウイルスの抗原に対応することができるB細胞が少ない、あるいは抗体を作る機能が鈍いかサボっている可能性があります。

どのようなワクチンであっても、せっかく接種しても抗体がつかない場合があることは知っておいて損はない豆知識だと思います。

私のようになぜか予防接種をしても効果が期待できない人が針刺し事故を起こしてしまった場合の対応策は次のように考えられます。

針刺し事故 → ただちに流水等で手洗いをするか、イソジンやアルコールで消毒 → 対象となる患者さんがB型肝炎に感染していないかの検査を依頼 → 自分自身の血液検査を行って、感染の有無を調べる

との流れに。

さらに、もしも対象となった患者さんがB型肝炎に感染していた時は抗HBs人免疫グロブリンという注射薬を24時間以内に投与する必要があります。この時にさらにB型肝炎ワクチンの接種も必要です。

ワクチン接種によって抗体がついていれはちょっとは安心できます。でも、抗体が十分でないことも考えられるのでワクチンは必要とされるのです。

抗体ができても感染してしまう可能性は排除できない

ワクチンの予防接種をしたからといって100%感染しないと言い切ることは出来ません。インフルエンザの予防接種をしたのにインフルエンザになった、ワクチンなんて効果ないじゃん❗との話は珍しくありません。

例えば風疹の場合、予防接種をしていても、風疹に感染したことがあっても、一定量の抗体が無いと予防効果を発揮しません。十分な抗体ができているかは、「抗体価」を検査することによってわかります。

画像

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11921000-Kodomokateikyoku-Soumuka/13.pdfより

厚生労働省によれば、風疹の場合は1回予防接種をすれば95%が免疫を獲得し、2回の接種で99%が免疫獲得できます。

話は変わります、今回は本当は以下の内容を伝えたかったのです。

画像

新型コロナ(ヘンテコなウイルス)による感染で入院していた患者さんの退院後の抗体検査の結果です。感染初期に増加するIgMは当然陰性の結果になっていて、感染した既往があることを示すIgGは陽性と判定されています。

ちなみに私がたまたま持っていたヘンテコなウイルスの抗体検査キットはソフトバンクが使用したものと同一です。

新型コロナ感染症(へんてこな感染症)の場合、1回感染して抗体が作られたからといって、2回感染しないということを言い切るのは危険です。さらにワクチンが出来たとしても、十分な抗体を作ることが出来ない可能性もあります。

参考までに、ワクチン接種の効果持続期間を調べた、信頼度の高い論文をご紹介します。

「Duration of Humoral Immunity to Common Viral and Vaccine Antigens」(PMID: 17989383) では、水ぼうそうのワクチンの持続効果は50年、麻しんはなんと200年とワクチンの有用性を強く支持する結果を伝えています。毎年接種する必要のあるインフルエンザワクチンは効果持続期間は5ヶ月程度、BCGは15年程度です。

新型コロナはまだまだ未知の存在であり、全貌は全く解明されていないとお考えください。もしも感染しても2度目の感染が無いとは言い切れませんし、ワクチンが開発されても100%の方に効果があるとは限りません。

ワクチンは絶対では無いけど、感染症予防効果が最も期待できる人類の英知だとの考え方は揺らぎません。

画像

今回こそは、と考えて再度B型肝炎ワクチンを昨日接種しました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック