免疫力を高めろ❗と健康雑誌は言うけど、「免疫力」ってなんだい??

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健康誌って「こんなことすれば免疫力アップ」とか「長生きするためには免疫力を」とか「免疫力アップでがんも消失」って感じのタイトルがずらりと並んでいますよね。そもそも彼らの言うところの「免疫力」って何を基準としているのか、どんな測定方法で「免疫力」がアップしていることを把握しているのか、非常に興味のあるところです。

生き物にとって免疫力は必要だけど、工夫して力がアップするものなんだろう??

スタンダードな医療でもがん治療の場合、インターフェロンに始まり、インターロイキンなどがあり、今一番ホットな研究は「免疫チェックポイント阻害療法」です。世界中のがん治療専門家が研究中の「免疫療法」がそうやすやすと日本の民間療法に先を越されるとは考えにくいのです。中には民間の医療機関で通常の大学病院でさえ経験していない「数万人を超える治療実績」を誇るところさえあるんです(笑)。明らかないインチキ医療機関を冷ややかな目で見守る&自分の患者さんが藁をも掴む気持ちで受診しないことを祈ります。

一番見かける「体を温めると免疫力がアップして、万病が治る」系の考え方です。じゃあ、どうすればどんなメカニズムで免疫力が上がるのか?民間療法で拡散されている考え方を検討してみます。

ニセ医学だよね、「冷えとり」のために、なんで靴下だけ重ねばきをするの??❗

免疫力って体を温めたくらいでアップするんでしょうか?

自称か他称かは不明ですが「免疫学の権威」とされている方は「体を温めて寝ていりゃ、インフルエンザなんか自然と治っちゃう」と主張されています。成人で持病のない方の場合は、確かに十分な水分補給と安静で多くのインフルエンザは自然治癒します。しかし、健康雑誌って読者のほとんどは高齢者であって、体調の不調や持病を持っているはずです。スタンダードな医学に対して多分、検査の多さや処方薬の安全性に対する疑問を持っているために、なんかを食べるとひょっとして高血圧が治るんじゃないか?糖尿病が治るんじゃないか?と期待して健康雑誌を買っているはずです。

某先生によれば「人間は病気を防いで治す免疫力を備えてるから、薬なんかで病気を治すのはトンデモない」的な理論がほとんどの著作で記されています。病原菌に感染して体温が上がる、というのは病原菌の増殖に対する人体の自然な反応です。体温が上昇することによって病原菌の多くは増殖することができなくなるのは医学的に確立されている考え方です。

しかーし「子供も積極的にインフルエンザに感染して、抗体を作るべきである」とのお考えはマズいんじゃないでしょうか?基礎体力自体が備わっていない子供はインフルエンザに感染すると、肺炎を引き起こし、最悪の場合は死に至る可能性もあります。高齢者もそうです、過去に同じ遺伝子を持ったインフルエンザに感染していたので「抗体」を持っていると言っても、基礎体力自体が衰えているでしょうし、持病もあるために肺炎の合併症になるリスクがうーんと高くなってしまいます。

病原体に感染した → 発熱する → 病原体が増殖しにくい

これは自然に備わった免疫システムの一つです。

しかし、

体温を上げる → 免疫力がアップする → インフルエンザが治る

との考え方は原因と結果の履き違えなんじゃないの?面白いことに「体温を上げると免疫力アップ」派の支持者の多くは「ワクチン否定派」なんですね、ワクチンって抗体を作り出して免疫力をアップさせる基本中の基本の予防医学なんですけど⋯。

じゃあ、どうやって免疫力を測定するのか?

免疫システムは白血球やリンパ球がになっています。血液検査をすることによってリンパ球の中のT細胞、CD4、CD8、B細胞をカウントします。さらにT細胞が作り出すサイトカインの量を測定します。これで免疫力を判断することがある程度(ここのところ注意 あくまである程度です)測定することは可能です。特にNK細胞という自然免疫系で大活躍するリンパ球の一種はがんに対してがん細胞だけを攻撃して、正常な細胞は攻撃しない点が注目されています。

それにまつわるキーワードとして「サイトカイン」「マクロファージ」「「キラーT細胞」乗っような専門家でないと十分に理解でない免疫システムが健康雑誌では魔法の言葉のように多用されています。このメカニズムを十分理解するためには、医学教科書を数冊読み込まないと無理です、多分。これをメチャ砕いて免疫力を説明する健康雑誌の著者って素晴らしい才能の持ち主であることは間違いありません⋯内容が間違っていても、多くの人は「免疫学の権威」が池上彰さんのように説明していくれるんですから(笑)。

体温上げて免疫力アップ信仰の危険性・・無理やり体温を上げると乳幼児突然死症候群を起こしちゃう

適切な運動や笑うことで免疫力を示す因子が増加した、との医学論文は存在します。しかし、適切な運動などを行う生活習慣によって、非健康的な生活から、規則正しい生活になって、食事も気をつけるようになるし、外から帰って来たらしっかりと手洗いもするようになってなどの因子も病気になりにくくなることに大きく貢献しているはずです。

SIDSのメカニズム

http://www.s-kubota.net/main/sids3.htm

単に体を温めて万病を防ぐだけでなく、万病を治すという考え方が、あのニセ医学「冷えとり」を生み出したのかもしれません。ちなみに冷えとり一派は赤ちゃんにも靴下4枚履きを薦めていますが、赤ちゃんの突然死は「着せすぎ、温めすぎ」が原因とされています。子育てに敏感な母親を明らかに間違った指導をしている「冷えとり」さんたちはどうやって責任を取るんでしょうか???

「冷えとり」体験レポート1/3ニセ医学御用達の好転反応「めんげん」は本当か??

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芸能人が使っているから効果ありと思ってしまったり、テレビで紹介された飲食店に実際いってみたらたいしたことなかったという経験は誰にでもあるはずです。でも、たまに当たりもあるから、どうせ宣伝とわかっていてもあえて失敗を繰り返してしまうのが私達です。でもニセ医学に騙されて失敗はしたくないはずです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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