女性の夜間頻尿とは?

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健康のために睡眠が注目されています。ぐっすり充実した睡眠を得るための枕やベッド、マットレスの広告をテレビや雑誌、新聞で多く見かけます。いくら枕やベッドやマットレスを変えても泌尿器系の病気があると睡眠中におしっこに起きてしまうため、良い睡眠を得ることは難しくなります。

女性の夜間頻尿について、解説しますね。

女性の7割近くが、おしっこの問題を抱えている

泌尿器科というと、中高年男性が受診する科と考えている方が少なくは無いと思います。ところが泌尿器科医が把握している過活動膀胱の男女比は6:4程度と考えられています。痛みや血尿を伴わない場合は多くの女性が排尿に何らかの問題を抱えていても、「歳のせいだから仕方ない」「恥ずかしいから泌尿器科を受診しないで、様子をみよう」と判断してしまう方が多いようです。

世界中の大規模な疫学調査によれば、18歳以上の女性の66.6%が何らかの泌尿器科領域の症状があると判断されています(「Population-based survey of urinary incontinence, overactive bladder, and other lower urinary tract symptoms in five countries: results of the EPIC study」PMID: 17049716」)。

女性の泌尿器科の病気の症状

排尿時の問題点として、考えられている症状は下記の8つです。

  1. 昼間頻尿
  2. 夜間頻尿
  3. 尿勢低下
  4. 残尿感
  5. 尿意切迫感
  6. 切迫性尿失禁
  7. 腹圧性尿失禁
  8. 膀胱痛

これらの症状がオーバーラップしている方も少なくはありませんが、わかりやすくするために「女性の夜間頻尿」に絞って解説を続けます。

女性の夜間頻尿はQOLを下げるだけではなく、寿命にもマイナスの影響を与える

寝ている間に尿意を感じて起きてしまうことを、夜間頻尿と呼びます。夜間頻尿はおしっこのために睡眠を邪魔してしまうのは当然であり、熟睡感が得られないために昼間に眠くなったり、日中の活動を妨げたり、不眠の原因にさえなってしまいます。

夜間頻尿はQOLを大きく左右するだけではなく、寿命にさえ悪い影響を及ぼすことが明らかになっています。

日本における調査によれば、睡眠中に2回以上おしっこに起きる人は死亡率が1.98倍にもなってしまうことが報告されています(「Impact of nocturia on bone fracture and mortality in older individuals: a Japanese longitudinal cohort study」PMID: 20727545)。

女性の夜間頻尿の治療

下部尿路は誰でもが知っているように男女で見た目も違っていますし、前立腺という臓器は男性にしかありません。女性のおしっこに関する病気・症状は多岐に渡っていて一般の医師でも混乱することがあるため、しつこいようですが今回は女性の夜間頻尿に絞って治療方法を解説します。

日本に限って見ると、少し古いデータによると睡眠中に3回以上おしっこに起きている女性は391万人と推定されています(「排尿に関する疫学的研究」日本排尿機能学会誌 14 (2) 266-277, 2003.)。

治療方法として、行動療法・骨盤底筋訓練が推奨されていますが、今回は下部尿路障害の症状の一つである「夜間頻尿」に対する、もう少し積極的な「薬物療法」「手術療法」についてお伝えします。

夜間頻尿の薬物療法

夜間頻尿の原因の一つである病気として「過活動膀胱」があります。過活動膀胱による夜間頻尿に対しては、代表的なものは以下になります。

  • 抗コリン薬
  • β3アドレナリン受容体作動薬
  • 抗利尿ホルモン

上記3つが有効であることが知られています。その他、漢方薬やホルモン剤がありますが、実際の臨床の場面で処方されているのは、抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬です。抗利尿ホルモンによる夜間頻尿治療は抜群の効果を発揮することが世界的に知られています。しかし、なぜか日本では治験によって女性への投与による効果は問題含みであり、保険適用外となってしまっています。→【日本だけ?】夜間頻尿治療薬のミニリンメルトが成人女性には処方できない理由

抗コリン薬はオキシブチニン・オキシブチニン経皮吸収型・プロピベリン・トルテロジン・ソリフェナシン・イミダフェナシン・フェソテロジン・プロパンテリンが夜間頻尿に有効かつ保険適用となっています。

β3アドレナリン受容体作動薬はミラベグロン・ビベグロンが抗コリン薬と同じく有効かつ保険適用となっています。

手術治療としては膀胱鏡下ボツリヌス毒素注入手術がやっと日本でも承認され、保険適用となっています。

夜間頻尿の自己採点

夜間頻尿疾患特異的QOL質問票(Nocturia Quality of Life Questionnaire)というものがあります。

オリジナルは英語版でしたが、2009年に日本語版が作られたのでご紹介します。

質問は以下のようになっています。

  1. 翌日,ものごとに集中することが難しかった
  2. 翌日,全般的に活力の低下を感じた
  3. 日中,昼寝が必要であった
  4. 翌日,ものごとがはかどらなかった
  5. 楽しい活動(余暇活動など)に参加することが減った
  6. 水分をいつ,どれくらい飲むかについて気を使わなければならなくなった
  7. 夜,十分な睡眠をとることが難しかった
  8. 夜間,尿をするために起きなければならないので,家族や同居者に迷惑をかけているのではないかと気になった
  9. 夜間,尿をするために起きなければならないことで,頭がいっぱいになった
  10. 今後,この状態がさらに悪くなることが心配だった
  11. この状態(夜間,尿をするために起きなければならないこと)に対する有効な治療法がないことが心配だった
  12. 全体として,この 4 週間に,夜間,尿をするために起きなければならないことは,どれくらい煩わしかったですか
  13. 全体として,夜間,尿をするために起きなければならないことは,どれくらい日常生活を妨げていますか

1から7までは睡眠や活力が中心の質問になっていて、6から12までは悩みや心配事についての質問になっています。13は総合的な健康感を問うもので、QOLを中心とした質問票としては、かなり患者さんサイドに立ったものだと考えられます。

女性でも夜間頻尿で悩んでいる方も多いはずです。お近くの泌尿器科にご相談することを強くお勧めいたします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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