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オーソモレキュラー療法がノーベル賞ダブル受賞者が生み出したトンデモである理由。

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オーソモレキュラー療法というニセ医学がはびこっています。この分子整合栄養医学とも呼ばれるオーソモレキュラー療法のたちが悪い点は考案者がノーベル賞をダブル受賞した天才的な化学者であることです。

まっとうな医学からはかけ離れたオーソモレキュラーの歴史をお伝えしながら、関わるべきでないニセ医学であることを繰り返しお伝えします。

分子整合栄養医学(Orthomolecular medicine)の祖ライナス・ポーリングは間違いなく天才❗

天才と聞くとアインシュタインを思い浮かべる人が大多数だと思います。私はトンデモ系ニセ医学である分子整合栄養医学の父とも言える、ライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)氏こそ医学・生物学分野における大天才だと考えています(以下、敬称略)

神が与えた才能と努力に寄ってライナス・ポーリングは1930年代までは分子の結合の仕組みとして当時わかっていた化学結合はイオン結合と共有結合以外の結合があるとの考えを発表しました(かなりマニアックな内容ですが、高校で物理あるは化学を選択した人は聞いたことあるはず)。この業績によって泣く子も黙る世界有数の理系大学であるカルテック(California Institute of Technologyを略してCaltech、日本語だとカリフォルニア工科大学⋯私も若い時に1回訪問させてもらったことがある)の教授に30才で就任した大天才です。1954年に化学結合に関する研究でノーベル化学賞を受賞したのは当然の成り行きです(二度目の受賞は1962年の平和賞)。

ところが何をおもったのかライナス・ポーリングは1949年にScience誌上に「Sickle Cell Anemia, a Molecular Disease」なる論文を投稿しました。

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やっと見つけたぞ!ライナス・ポーリングの「鎌状赤血球、分子病」の原文。

分子栄養学や分子整合栄養医学というトンデモ医学に「分子」が付く理由がこれですっきり。別に化学者なんだから医学に口を出すな、なんて狭量な考えを私は一切持ちません。とにかくライナス・ポーリングは間違いなく大天才なんですから。

トンデモさんが医学を量子力学で説明したがる根源もライナス・ポーリングの可能性が

天才ライナス・ポーリングの化学結合の研究はそれまでの化学の考え方を量子力学と結びつけたものでもあります。それでまたトンデモニセ医学である波動さん達がトンデモ理論を量子力学で説明したがるのとも大いに関係があると思わます(なお、トンデモ波動の信奉者のうちで量子力学をまともに理解できている人がいるとは思えないけどね)。

トンデモ医学であると断言できる分子整合栄養医学(オーソモレキュラー)もメタトロンとかの疑似科学を使い回す波動系ニセ医学が親和性が高いのも、大天才ライナス・ポーリングの影響であることがわかります。

DNAは三重らせん構造???と言い出したあたりからかなり怪しげな方向に

ライナス・ポーリングはたんぱく質の構造の研究をしています。なんと「DNAは三重らせん構造である」とライナス・ポーリングは言い出しちゃいました。

「A Proposed Structure For The Nucleic Acids」[2](PMID: 16578429)によるとDNAの構造はこんな形であるとライナス・ポーリングは予想しちゃいました。

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どう見ても我々が知るDNAの構造である二重らせん構造じゃないよね。

ちなみにワトソンとクリックによってDNAの構造が発見されたのはが1953年、でもワトソンとクリックがDNAの構造を考える上でライナス・ポーリングの研究は間違いなく大きな影響を及ぼしているます。とにかくライナス・ポーリングは大天才なんです。

とうとうオーソモレキュラーと言い出しちゃった大天才

トンデモ系ニセ医学であるオーソモレキュラー、英語だとOrthomolecular medicine、このOrthomolecularは「ortho」と「molecular」を合体させたライナス・ポーリングの造語です。

ライナス・ポーリングは1968年に「Orthomolecular psychiatry. Varying the concentrations of substances normally present in the human body may control mental disease」[3](PMID: 5641253)という論文をScienceに投稿しています。

この論文でライナス・ポーリングはいくつかの精神系の疾患は体内のビタミンのバランスが原因であると述べています。やはり発達障害や統合失調はオーソモレキュラー療法で治療可能であるとのトンデモ医師の書籍の元も大天才ライナス・ポーリングだったようです。

ライナス・ポーリングの大勘違いがオーソモレキュラーというニセ医学を生み出した

先日、ブログ記事でライナス・ポーリングが開拓した分子生物学からオーソモレキュラー療法やメガビタミン療法などのニセ医学が派生したことをお伝えしました。

分子栄養学の分派メガビタミン療法のトンデモ加減に驚いた❗オーソモレキュラーに惑わされないための基礎知識。

分子栄養学の分派メガビタミン療法のトンデモ加減に驚いた❗オーソモレキュラーに惑わされないための基礎知識。

高濃度ビタミンC注射に代表されるメガビタミン療法を信じますか?ビタミン不足で体調が悪くなることはあっても、大量に取ればあらゆる不調・病気が治るわけがないことは、世の中の多くの人はわかってはいるはずです。メガビタミン療法というニセ医学がなぜここまで広まってしまったのか?その歴史を振り返ります。

ノーベル賞ダブル受賞の大天才であるライナス・ポーリングはとにかくビタミンCを摂取すれば健康になれる、病気を治せるとの考えに固執するようになり、効果が無いのはビタミンCの量が足りないからだとの主張するようになりました。

ライナス・ポーリングのオーソモレキュラーにしろメガビタミン療法にしろ、医学分野での研究手法で大きな間違いを犯していたのです。というのはライナス・ポーリングの研究はあくまで個人の感想ですレベルの集積。化学の天才である彼がなぜそのような第三者の検証が不可能な手法でオーソモレキュラー療法の効果を主張しようとしたのかは謎です。

そこでメイヨー・クリニック( Mayo Clinic、米国ミネソタ州にある総合病院)の研究者たちは1979年に「Failure of High-Dose Vitamin C (Ascorbic Acid) Therapy to Benefit Patients with Advanced Cancer — A Controlled Trial」[4](PMID: 384241)という論文を発表しました。

この研究は150人のがん患者さんに対して、一方のグループには10000mgのビタミンC、もう一方のグループにはビタミンCは投与していません。高濃度のビタミンCを投与してもがん治療には全く役立っていない結果になっています。

これ以降も高濃度のビタミンCをがん患者さんに投与する多数研究は行われており、1985年に発表された「High-dose vitamin C versus placebo in the treatment of patients with advanced cancer who have had no prior chemotherapy. A randomized double-blind comparison」[5](PMID: 3880867)はランダム化二重盲検の手法が使われおり、高濃度ビタミンCががん治療には全く役立たないことが科学的手法によって明確になっています。

20世紀後半には医学的に否定されたオーソモレキュラー療法やメガビタミン療法をなぜいまさら持ち出し、日々の治療に使っている医師が多数いるのか私にはまったく理解できません。

何度でも繰り返します、トンデモ系ニセ医学に振り回されることは、まっとうな治療を受ける機会を失うことになります。精神系の疾患からがんまで治しちゃうと主張する医師への批判はねちっこく継続します。

参考文献

  1. Sickle Cell Anemia, a Molecular Disease. BY LINUS PAULING, HARVEY A. ITANO, S. J. SINGER, IBERT C. WELLS:Science 25 Nov 1949:Vol. 110, Issue 2865, pp. 543-548
  2. Pauling L, Corey RB. A Proposed Structure For The Nucleic Acids. Proc Natl Acad Sci U S A. 1953 Feb;39(2):84-97. doi: 10.1073/pnas.39.2.84. PMID: 16578429; PMCID: PMC1063734.
  3. Pauling L. Orthomolecular psychiatry. Varying the concentrations of substances normally present in the human body may control mental disease. Science. 1968 Apr 19;160(3825):265-71. doi: 10.1126/science.160.3825.265. PMID: 5641253.
  4. Creagan ET, Moertel CG, O’Fallon JR, Schutt AJ, O’Connell MJ, Rubin J, Frytak S. Failure of high-dose vitamin C (ascorbic acid) therapy to benefit patients with advanced cancer. A controlled trial. N Engl J Med. 1979 Sep 27;301(13):687-90. doi: 10.1056/NEJM197909273011303. PMID: 384241.
  5. Moertel CG, Fleming TR, Creagan ET, Rubin J, O’Connell MJ, Ames MM. High-dose vitamin C versus placebo in the treatment of patients with advanced cancer who have had no prior chemotherapy. A randomized double-blind comparison. N Engl J Med. 1985 Jan 17;312(3):137-41. doi: 10.1056/NEJM198501173120301. PMID: 3880867.
  6. Pandora’s Lab: Seven Stories of Science Gone Wrong :National Geographic 2017/4/4 ISBN-10: ‎9781426217982
  7. ポーリング化学結合論入門: 共立出版 1968年12月発行 ISBN-10: ‎4320040392

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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