小林製薬さま、これはちょっとやり過ぎなのではないでしょうか?

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傷跡を目立たなくさせる「アットノン」、シミを消すように思わせる「ケシミン」、お腹のガスを抑える「ガスピタン」、胃酸の逆流を抑える「ギャクリア」などの効果・効能をイメージさせるネーミングでCMを大量出稿している小林製薬。

まあ、既存の成分の薬をネーミングでカバーするビジネスモデルはそれなりに評価されるとは思います。

しかし、ネット上に現れる小林製薬のある広告にはいち医師として苦言を呈さずにはいられません。

抜群のネーミングセンスと広告手法を誇る小林製薬

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この広告は「シイタゲン-α」というシイタケ菌糸体を主成分とした健康食品のものです。昨年末くらいから健康関連情報サイトを見ると現れるこの広告に対して、「なぜこの女性は帽子を被っているのだろう」と思っていました。時期が冬であったからでしょうか?ところが今年の春を過ぎてもこの帽子を被った女性の広告が現れてきます⋯そうなんで、見る人が見れば、これは抗がん剤治療を受けて副作用で毛髪が抜けてしまったイメージを惹起させるものなんです。

それを裏付けるように「あきらめない」とのキャチコピーと共にご丁寧に「真剣に取り組む方のために」とのサブコピーも添えられています。

猛然と小林製薬に立ち向かったがんサバイバーの女性がいます❗

この広告が目立ち出した時期、私は例のインチキ健康情報サイトの件でてんてこ舞いでした。そんな時にある女性がんサバイバーの方からこんなツイートをいただきました。

ハチドリちゃんというがんサバイバーの方からのものです。ハチドリちゃんが書いたブログには私が疑問を抱いていた小林製薬の帽子の女性のCMで誘導される健康食品「シイタゲン-α」に関する素人とは思えない詳細な調査が書かれていました。

【冗談は製品名だけにして】企業倫理ナシの小林製薬【違法ビジネス】

本当はもっと早くハチドリちゃんの主張を多くの方に知ってもらいたかったのですが、抗がん剤使用による脱毛のために帽子を被っていると考えても「季節が冬なんだから、別に不自然じゃないじゃん」との意見も出るかと思いつつ、春を過ぎても相変わらず帽子の女性が出てくるのでやっとブログを書くことにしました。ところが小林製薬のシイタゲンの効果を検証し終わった頃からハチドリちゃんのツイートを見かけなくなり、ひょっとしたらと思いこんなツイートをしました。

これでハチドリちゃんが元気に過ごしていることが確認できて安心しました。それでは小林製薬のシイタゲン-αについてやっと本題に入ります。

シイタゲン-α、何にどんな効果があるの?

シイタゲン-αについて小林製薬の詳細な説明はこのようなページにありました。

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https://www.ganmen-kobayashi.jp/result_02_01.html

これはどう見てもシイタケ菌糸体が、がんの治療に役立つと表現している以外の捉え方はできませんよね?

がん治療の一つとして昨年オプジーボ(一般名:ニボルマブ)が免疫チェックポイント阻害剤として話題になり、そのネーミングの悪さ(?)から「がんの免疫治療」があたかも現時点で大きな効果を発揮しているかと錯覚している方が多いと思われます。

オプジーボの効果は一般の方が考えるような免疫力をアップするのとは違うのです。詳細はこちらをお読みいただけると助かります。

高額がん治療薬「オプジーボ」、普通の人にもわかりやすいように問題点を解説します。

小林製薬のシイタゲンの効果は、免疫抑制細胞の増加が抑制されて免疫機能が回復したとのマウスの実験によるものだけがエビデンスです。小林製薬ががんの研究を行なっていることは嘘ではありません。しかし、その研究論文が掲載されている医学系専門誌が必ずしもクオリティが高く、厳しい査読が行われているものばかりではないのです。

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https://www.ganmen-kobayashi.jp/result_02_03.html より

がんに対する免疫療法とオブシーボのようながんに対する免疫チェックポイント阻害剤とは大違いです。

例えば「様々な治療背景を持つがん患者(多がん種)68名に対して、各治療と並行してシイタケ菌糸体エキス (1200mg/日)を4週間併用した」と書かれている報告と記されている「日本補完代替医療学会誌」の詳細をクリックすると、こんなページが現れます。

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https://www.ganmen-kobayashi.jp/wp-content/themes/ganmen/pdf/shiitake_lem_201701.pdf

この研究は効果を確認するために最低限行われるべき二重盲検法が取られていません。これではたんなる症例報告、あるいはケースシリーズ・症例集積レベルであり治療効果の信頼度としてはほとんど価値がありません。

小林製薬さま、もう少し研究は慎重にお願いできないでしょうか?

小林製薬が研究をしていることは認めます。しかし、シイタゲンががんの治療中の方に対して本当に免疫力を高めていることのエビデンスは非常に弱いものだと考えます。例えば小林製薬が医学用語ではない「血糖スパイク」にフォーカスした「サラシア」の研究成果としてプレスリリースしたものもこんな感じです。

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http://www.news2u.net/releases/153972/items/3/ より

このグラフは一見「サラシアってすごい効果あるじゃん」と思わせるのですが⋯対象はたったの6名です❗もう少し症例を増やしてからプレスリリースした方が少なくとも医療関係者の同意を得られるはずなんですが、なぜこんなに積極的に研究結果をインフォメーションするのか、「あったらいいなをカタチにする」企業体質なんでしょうね。

「ギャクリア」という胃薬は効果よりマーケティング手法がすごい⁉

「ギャクリア」という胃薬は効果よりマーケティング手法がすごい⁉

胃酸の逆流等で鳩尾がつっかえる症状を緩和する六君子湯(リックンシトウ)という漢方薬があり、それを主成分にしたギャクリアという小林製薬の薬があります。効果よりもインパクト重視なネーミング至上主義的なイメージがつきまとう小林製薬のラインナップの中でもひときわ目立つギャクリアの宣伝手法を医師の視点で掘り下げてみます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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