加湿器はインフルエンザ感染予防に効果あるの❓と素朴な疑問?

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ウイルス対策と称した商品がインフルエンザ流行の時期に目につきます。ウイルスは乾燥に弱いから、乾燥しやすい冬場は加湿器が必要❗暖房つけると乾燥するから加湿器はマストというわけで、加湿器を何個も設置するご家庭も少なくありません。加湿機能付きエアコンも登場しています。

ところで、本当に加湿器がインフルエンザ感染予防対策になるのでしょうか?毎年ワクチン打ってるし加湿器もガンガン使ってるのに、かかってしまった⋯そんな方いらっしゃいませんか?ワクチンは重症化を防ぐためのものです。流行する前に打つのが効果的です。今回は加湿器のお話です。

まずは「インフルエンザは空気感染しないよ❗」が大前提

ヘンテコで不正確な健康医療情報がいまだにネット上にはびこっているようです。

例えば「インフルエンザの予防方法:3つの感染経路をおさえよう!」とタイトル書かれている記事(感染経路をしることは予防する上では重要ではあります)を目にしてざっくり読んだところ、残念ながら監修している医師がインフルエンザをどうも空気感染すると思い込んでいる様子。

感染症の感染経路として

  1. 接触感染
  2. 飛沫感染
  3. 空気感染

の3つが知られていますが、

インフルエンザウイルスは空気感染しませんぜ❗

接触感染・飛沫感染・空気感染の詳細については今回は端折ります。

空気感染はウイルスが空気中をふわふわ漂って、それを吸い込むことで病気に感染するイメージで大きな間違いはありません。

でもインフルエンザの感染経路は飛沫感染です。冬の空気が乾燥した時期にインフルエンザに感染しない様に加湿器を❗は空気感染を防ぐ目的じゃな無いよ❗

じゃあ、なんで今の時期になると、インフルエンザの予防に的に加湿器のCMが増えるのか?そのあたりについてうんちくを述べてまいります。

画像

東京都福祉局「冬季における有効な加湿方法」より  この図だと確かにインフルエンザの生存率は湿度に強く左右されています。

2019年12月1日追記
インフルエンザが空気感染のリスクもあり得るとの論文がありました。
「Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community.」(PMCID: PMC5798362 )によれば、インフルエンザに感染した人の吐く息を吸い込んだだけで、同じ部屋にいた人が感染する可能性が示唆されています。言い訳ではないけど、この論文が発表されたのはブログを書いた後日です。

インフルエンザの予防に確かに湿度は重要だけど

プラズマなんチャラなんてネーミングの加湿器のインフォマーシャルがバンバン流れてきます、特にCS。

個人的にはトーカ堂の北社長のが好きなんだあ、あの情熱的な表現に釣られてついつい「うなぎ蒲焼カット50g×10パック、うなぎ蒲焼キザミ50g×10パック」なんてものを購入しちゃった私です。

話を戻します、冬の空気が乾燥している時期に加湿器はそれなりの効果をインフルエンザ感染予防に果たすことは間違いありません。でもそれは厳密な意味での空気感染を防ぐわけじゃないです。

咽頭や気管支などの呼吸器系粘膜は乾燥していると働きが悪くなるからなんです

そんなことは知ってたよ、って方はここまでお付き合いありがとうございました (笑)。

加湿器のCMや空気感染についてあまりご存じないと思われる、私がちょっと気になった医師は

ウイルスが加湿器の水滴と合体して重くなり、空気中を漂えなくなるから

なんて感じの説明をしています。これ空気感染しないインフルエンザウイルス対策としてはちょっとヘン。

加湿器を使用して室内の湿度を高めに設定する目的は

ウイルスは比較的乾燥に強いことが知られています。また、乾燥状態が続くと、のどや気管支は防御機能が低下するため、インフルエンザウイルスによる感染が起こりやすくなります。そのため、乾燥しやすくなる冬季にウイルスによる感染を防ぐ方法の一つとして、室内では加湿器を上手に利用し、適正な湿度(概ね相対湿度40%以上)を保つことが重要だと言われています。

と東京都健康安全研究センターも述べています(http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/webversion/web15.html)。

確かプラズマなんちゃら加湿器の花粉症対策向けCMでは、花粉に水滴が付着して、室内を漂うことができなくなり床に落下するイメージ動画があったような気がします。

花粉症対策の説明としては〇、でも空気感染しないインフルエンザ感染経路とゴッチャになっている人が多いんじゃないでしょうか?

インフルエンザウイルスが乾燥した環境では生き延びやすく、室内の湿度を一定以上に保つことによって、ウイルスの活動を抑えることはそれなりの効果は期待できます。

でも、基本的には空気感染はしないと考えると加湿効果の目的は粘膜の活動レベルを下げないためです。

マスクが効果を発揮するのも理由は粘膜保護

インフルエンザに感染して苦しまないための基本中の基本はインフルエンザワクチン予防接種と手洗いです。

数年前から公的機関のインフルエンザ情報サイトでも「マスクによる予防効果は限定的です」「うがいの効果はエビデンスがありません」などと記載されるようになってきました。

マスクの効果は他人様にインフルエンザを感染させない(これは飛沫感染ルート対策)であり、自分を感染から守る働きに関しては、あまり期待できません。この時期にマスク姿の人を多数街中で目撃しますけど、

マスクの役目は咽頭や気管支の粘膜を乾燥から守ることなんです。

マスクがフィルターの働きをして、ウイルスが体内に侵入するを防いでいるわけではないことにご注意くださいませ。

ところで加湿器のメインテナンス行っていますか?

レジオネラ菌により集団感染する、「在郷軍人病」というのがあります。1976年米国で開催された在郷軍人大会で集団感染が確認されたためにそのような病名が付けられています。

これと類似した集団感染が時々日本でも報道されています。たとえば本年も

レジオネラ菌3人感染 高齢男性1人死亡 国東の施設(https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2018/01/20/JD0056540572

が報道されています。米国の集団感染は空調設備からレジオネラ菌が飛散したことが原因と考えられています。この感染経路を十分認識していたと思われる大分の高齢者施設はタンクの水は毎日交換していましたし、週に1度は本体も清掃していた様ですが、残念ながら集団感染は起きてしまいました。

この施設で使用されていた加湿器は超音波式のために、加熱式と違いいくら掃除を丁寧に行っていたとしても、レジオネラ菌が増殖したのではないでしょうか?

超音波式(プラズマなんチャラもこれ)で加湿を行うのであれば、加湿器用殺菌剤の使用を検討しても良いと思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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