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BCGワクチンからヒ素検出報道、ご心配されている子育て中のママやパパへ。追記あり

更新日:

BCGは結核の予防として法律で接種することが決められ市区町村が実施する定期接種です。予防接種には定期接種の他には希望者が受けられる任意接種があります。BCGは定期接種であるために、基本的には受けなければなりません。

BCGワクチンから猛毒として知られるヒ素が検出、この報道を受けてパニックにならないようにご注意ください

ワクチンを拒否する方が一定数残念なことにいることを考えると、私の書き方に難癖を付けられる可能性があるので、正確にはお役所言葉的に結核に感染しないように、BCG予防接種は受けるように務めなければならない、のです。

ほとんどの親御さんが安心して受けているBCGに関して、こんな衝撃的な報道が先日ありました。

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これは産経新聞2018年11月3日の記事 小さな記事なんで気がつかなかった方も多いかもしれません。ネット上ではこんな感じの記事が多数掲載されています。

BCGワクチン出荷停止 ヒ素検出、安全性問題なし
日経新聞

特定のロットのBCGワクチンにヒ素が混入していたのです。

この記事をネットなのか新聞なのかで読んだ

反ワクチン派と呼ばれている人は鬼の首を取ったようにSNSで騒いでいます

まあNHKの報道記事のタイトル「BCGワクチンの溶液の一部から基準超のヒ素検出」を流し読みした人は

うわっ、自分の子供が受けたBCGに基準越えのヒ素が入っていたのかも?

と感じてしまうのも当然と言えば当然です。ご自分のお子さんが打ったワクチンが安全であるかを確認する方法があるので、これは後半にお伝えします。

報道されたヒ素が混入していたBCGについてまとめてみると

・BCGワクチンにヒ素が混入していた。

・BCGワクチン自体にヒ素が混入していたのではなく、ワクチンを溶かす生理食塩水にヒ素が混入していた。

・ヒ素が混入していたためにBCGワクチン製造会社は出荷を停止している

・厚生労働省のBCGワクチンのヒ素含有の基準値は0.1ppm、今回のワクチンでは0.26ppm検出

・混入していたヒ素は微量であり、人体を害する量ではなかった。安全である。

ということになります。

安全性に問題ないと言われても、ヒ素が混じっていたのだから怖い❗と考える方へ

反ワクチン派と言われている方々の中には

ヒ素って猛毒ですよね、人が死にますよね❗

との投稿がSNSにあったようです(残念ながら多くのワクチン嫌いの方々に私はツイッターでブロックされているために現物をお見せすることができません)。特に気をつけなければならないワクチンに異物が混入していたことは大問題です。安全だよ、と言われても安心できない方のために

今回BCGワクチンに混入していたヒ素が本当に安全なのか計算してみます

今回のヒ素混入BCGワクチンを製造した日本ビーシージー製造株式会社のBCGの添付文書を参考に計算しますね。

BCGワクチンはワクチン本体と生理食塩水が一緒のパッケージに入っています。この生理食塩水1ミリリットルでワクチンを溶かします。TBSの報道によると検出されたヒ素の量は0.26ppm。このピーピーエムは100万分の1と言う意味ですから、0.26ミリグラムのヒ素が1リットルの生理食塩水に混入していたと言うことになります。1リットルは1000ミリリットル。1ミリグラムは0.001グラム。生理食塩水1ミリリットルを1グラムと考え、単位を揃えるために重量換算でppmを当てはめて考えると

今回の問題となったBCGに含まれるヒ素は0.000026ミリグラムというごくごく少量

だったのです(ここの計算間違うとヤバいので数回検算してあります、大丈夫だよね)。

追記:単純にppmは100万分の1なので、ヒ素の含有量を100万分の0.26と考えた方が簡単かも。0.26÷100万=0.00000026グラム=0.00026ミリグラム。実際に使用する生理食塩水は0.1グラムなので接種されたヒ素の量はさらに1/10になり0・000000026グラム=0.000026ミリグラム

次にヒ素の許容量(人体に安全な量)を調べてみます。飲料水の場合は1リットル中にヒ素が0.01ミリグラムまでは許容されていて(厚生労働省 水質基準 根拠資料一覧)これは0.01ppmになります。BCGワクチンの許容量の0.01ppmより厳しい基準になっているのはもちろん水の場合は毎日それなりの量を飲むからですね。追記:ワクチンの許容量ゼロが一個多かったです。正しくは0.1ppmです。ご指摘いただいた方に感謝いたします。

一般的にヒ素の毒性は体重1キロあたりにつき成人の場合は2-3ミリグラム総量にして100ー300ミリグラムと考えられています(人体実験できないので、きっちり正確なデータがないので愛知県衛生研究所などの資料を参考にしました)。

飲料水の場合だと

基準値のヒ素入り飲料水を10000リットル飲むと死にますのでご注意くださいね

その前に溺れます。飲食物のヒ素と注射のヒ素、特にワクチンに含まれたヒ素じゃあ、体に対する作用が全然違うじゃん❗とお考えの方もいらしゃると思われます。

もともと人の血液中にはヒ素が10~590ng/ml程度含まれています

日本中毒学会(http://jsct-web.umin.jp/shiryou/archive2/no14/)にはこのように記載されています。ngはナノグラムと読み、10億分の1グラムです。今回BCGに含まれていたヒ素は0.26ppmで、これは総量は0.0000026ミリグラムであり、26ナノグラムということになります。万が一、ヒ素が混入していたBCGワクチンの全てが血管内に入ったとしても、もともと人体に含まれているヒ素の量と比較して大きな変化を起こすほどのものではありません。

成人の血液量は5リットル程度であり、日本中毒学会の数字に当てはめると誰でも最低でも体全体で50000ナノグラムつまり0.05ミリグラムのヒ素が混じっていることになりますよね。今回のBCGに混入していたヒ素の量がごくごく少量であるということにこれでご理解いただけたと思います。

BCGワクチンは生後1歳までに接種することになっています。赤ちゃんと成人の毒物に対する影響はもちろん大きく違っているとは考えられます。しかし、今回のヒ素混入、許されることではないにしろ、接種を受けたことに関して必要以上の心配をすることは無い、と断言いたします。

それでも心配な方は国立感染症研究所のサイトでBCGワクチンのロット番号ご覧ください

いくら私たちや公的機関がごくごく微量のヒ素であり、人体に影響はないと伝えても心配してしまうのは当然です。

そんな方は国立感染症研究所のこのサイトをご参照ください。ワクチンの検定合格情報を見ることができます

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ここには検定を合格したワクチンの製造番号が書かれていますので、ご確認を。

もしも、お子様が接種したBCGワクチンのロット番号(母子手帳に貼っているはず)が見当たらない場合はお近くの保健所等の公的機関にお問い合わせください。これによって当局の仕事が増えたとしてもそれは自業自得。私が探した限りでは今回のヒ素が混入したと報道されたBCGワクチンのロット番号はどこにも掲載されていません。

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日本ビーシージー製造株式会社サイト

さらに、これちょっと問題だと思うのですが、ヒ素が混入してしまったBCGワクチン製造業者のサイトにはこの件は一切掲載されていません。

つい先日、美容皮膚科で使用されるプラセンタと肝炎の関係が取りざされていました。プラセンタ製造会社の対応に不信感を抱き当院では永久にプラセンタを使用することを辞めました。

緊急事態発生❗プラセンタ注射「ラエンネック」でB型肝炎感染の疑い⁉

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これと今回のBCGワクチンヒ素混入問題はレベルが違います。命に関わる感染症を予防するためのワクチンなのですから、行政もメーカーも素早く正しい声明をしっかり誰でもがわかるようにインフォメーションするべきです。じゃないと、反ワクチン派と言われる人々がどんどんお仲間を獲得してしまいますよ❗

追記:記載間違いがありました。ヒ素の量を0.00026ミリグラムと0.000026ミリグラムと1桁違いで何箇所か記載していたところがありました。今回BCGに含まれていたヒ素の量は正しくは0.000026ミリグラムです(小数点以下ゼロが4つ)。

追記:11月8日付けでやっと日本ビーシージー製造株式会社からヒ素が混入していたワクチンのロット番号が公表されました。

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該当ロットに関する情報

問題のBCGワクチンロット番号はKH099 ~ KH278で出荷時期は2009年から2018年までとなっています。ここで問題が生じます。前掲の国立感染症研究所の検定合格情報にこのロットは入っています。これはどうしてなのでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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