「プラズマ乳酸菌」ってスッゲー強そうだけど、免疫力がアップする効果は本当??

更新日:

ウイルスに強い・花粉症対策に、と毎年、冬から春にかけてヨーグルトコーナーが大賑わいです。アルファベットと数字とカタカナが散りばめられた、いかにもカラダによさそうな「機能性」ヨーグルトとされる商品がズラーっと並びます。

そんな中、プラズマ乳酸菌なるニューカマーが。

なんだかよくわからないけどすごい強そうなプラズマ乳酸菌。プラズマって液体・気体・個体のどれでもない第4の状態です。医師だからこそ、とても気になったので早速調査してみました❗

乳製品に含まれる謎の成分「プラズマ乳酸菌」、本当の効果あるのかねえ?

見かけによらず「お腹が弱い」のが、子供の時から弱点である私は乳酸菌という言葉に強い魅力を感じてしまいます。ヤクルト、ジョアに始まりプロビオヨーグルトR-1など、歳と共に手を出す乳酸菌飲料は変わってきましたが、先日スーパーで見かけた

「プラズマ乳酸菌 飲むヨーグルト」こりゃ効きそうだぞ❗

脊髄反射的に購入いたしました。なんでもこのプラズマ乳酸菌は免疫力をアップする力があるそうで、お腹の調子を整える以外の働きもするそうです⋯ホントかよ⁉

%e5%86%99%e7%9c%9f_-_google_%e3%83%95%e3%82%a9%e3%83%88

プラズマ乳酸菌の後ろの本は気にしないでね、商売道具ですから(笑)。

数々の乳酸菌飲料を試しつつ「なんだ、こんな程度ね」と長続きしません。しかし「プラズマ乳酸菌」との名前、大槻教授の顔が一瞬浮かびましたが(大槻教授については各自お調べください、結構笑えます)。「守る力 プラズマ乳酸菌」からイメージできるのは、腸内細菌叢を改善すると免疫力がアップするとちょっとニセ医学的な匂い。強そうな名前の「プラズマ乳酸菌」ってなんだ?に素朴な疑問を抱いて、早速調べましたよ。

メチャクチャ説得力のあるプラズマ乳酸菌の理論

お味の方はごくごく普通の乳酸菌飲料ですが、今回購入した小岩井のプラズマ乳酸菌の商品説明サイトは「キリン株式会社と小岩井乳業が共同研究している」と書かれていました(http://www.koiwaimilk.com/pick_up/)。もちろんキリンのサイトを探しました。それがこれ❗

%e3%83%95%e3%82%9a%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%82%99%e3%83%9e%e4%b9%b3%e9%85%b8%e8%8f%8c%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f%ef%bd%9c%e3%83%95%e3%82%9a%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%82%99%e3%83%9e%e4%b9%b3%e9%85%b8%e8%8f%8c

なんとなくうるさ型のオッサン向けではなく、お母さんやお子様を対象にしたように見受けられるプラズマ乳酸菌の説明サイトです(http://health.kirin.co.jp/about/)。下の方へスクロールすると説明図に医学系科学系論文と思われる文字を発見。早速わずかな手がかりを元に論文捜査を開始して見つけましたあ❗キリンさんもわざわざ調べるヤツがいるとは思っていなかったでしょうけどね。

  1. 「Spherical Lactic Acid Bacteria Activate Plasmacytoid Dendritic Cells Immunomodulatory Function via TLR9-Dependent Crosstalk with Myeloid Dendritic Cells」(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0032588
  2. 「Immunomodulatory effect of Lactococcus lactis JCM5805 on human plasmacytoid dendritic cells.」(Clin Immunol. 2013 Dec;149 (3) :509-18.

この二本の論文でプラズマ乳酸菌の効果が実証されているはずです。

プラズマ乳酸菌はインターフェロンαの産生量を増やす❗

泌尿器科が専門の私はインターフェロンって言葉に非常に弱いのです、ふた昔前は夢のような効果があるとインターフェロンをメチャ高額なのに使いまくっていたからです。

PloS Oneに掲載された1の論文によると、このインターフェロンの産生をこのプラズマ乳酸菌さまは増やしてくれるのです。プラズマ乳酸菌に含まれる「pDC」は免疫細胞であり「プラズマサイトイド樹状細胞」を略した言葉です。さらに詳しく言えば「JCM5805株」がプラズマ乳酸菌の正式名称であり、JCM5805がpDCを活性化することを発見して論文にしたということになります。まあ、「世界で初めて発見しました」と威張りたくなる気持ちもわかります。キリンのサイト(http://health.kirin.co.jp/about/)では「ウイルス感染防御システムの司令塔pDCを強くするだだ一つの乳酸菌です」と力んだ表現もあながち間違いではありませんし、誇大表現でもありません。

ただ、一点ケチをつけるとしたら実験は「in vitro」、試験官内での効果を観察したものであり、その効果がそのまま人体に適応できるかです。あと⋯PLOS ONEは厳格な査読を経ないでも掲載されるとの噂もあることはあります。

プラズマ乳酸菌はpDCの活性効果を人でも発揮したぞ❗

2の論文は発表の日付から見ると、1の研究が終了した後に書かれたものです。ついに人体に対して免疫力を強めるかの考察が行われています。pDCがインターフェロンの産生を促すことを二重盲検法を使って調べている、科学的な手法が取られた医学的にも信頼度の高い論文です。

プラズマ乳酸菌JCM5805を作られたヨーグルトと乳酸菌飲料に似せたものを実際に被験者に食べてもらって免疫力がアップしたかを調べています。免疫力自体を直接測定・判定することは難しいので、MHC classll (免疫反応に関連したタンパク質の遺伝情報が詰まった遺伝子)とCD86(マクロファージに関わる遺伝子)の量で免疫力アップを検証しています。

immunomodulatory_effect_of_lactococcus_lactis_jcm5805_on_human_plasmacytoid_dendritic_cells_-_clinicalkey

CD86がプラセボより高くなっていることがわかるグラフですね。

プラズマ乳酸菌、本当に免疫力がついたか、どうやったらわかるんだろう?

試験管レベル、人体レベルにおいて免疫系の重要なファクターを増加させる効果があるプラズマ乳酸菌。でも、この乳製品を飲み続けることで、多くの方が期待するのは「インフルエンザに罹らないかなあ」「ノロウイルスに感染しないかなあ」なんじゃないでしょうか?

私の場合、インフルエンザの予防接種はとっくに済ませていますので、ノロウイルスへの感染を意に反して心待ちにするしかありません。でも、実際にノロウイルスに感染したと予想される患者さんに接する時は、インフルエンザよりも感染予防に気を使いますし⋯我が身を犠牲にして、ノロウイルスに感染した方に積極的に移してもらう以外方法がありません。それで良い結果が出たとしても「体験者による談」の域は超えませんし、「あくまで個人差があります」的な表現にしかなりません。これさえ飲めばインフルエンザもヘッチャラってわけではありませんのでご注意くださいね。

しかし、かなり効果の期待できる日本で発見された乳酸菌であるプラズマ乳酸菌ではありました(机上の空論と言わないでね)。なんだか素直になってしまった私、転向したわけでも日和ったわけでもないですよ❗

追記:その後、こんなのもの書きました。

東洋経済vs医事新報「プラズマ乳酸菌は免疫力をアップするか?」論争勃発⁉

東洋経済vs医事新報「プラズマ乳酸菌は免疫力をアップするか?」論争勃発⁉

医事新報社は大正10年に設立された医師向け、特に開業医向けに特化した医学系雑誌・書籍の出版社です。東洋経済新報社は明治28年に設立された由緒ある古い古い会社ですが東洋経済オンラインは右肩上がりで読者を増やしています。私は医事新報の取材を受けてキリンホールディングのプラズマ乳酸菌食品に関して厳しい意見を述べました。

私のプラズマ乳酸菌などの乳酸菌に対する立ち位置がよくわかっていただけると思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・形成外科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
木・日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック