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男性ホルモンと感染症の関係、感染してもテストステロンが多いと重症化しにくい。

男性は女性より寿命が短いのが当たり前

世界中、どの国であってもどの民族であっても寿命は男性の方が女性より短いのが常識です。そんな傾向を受けて男性ホルモンの大家である元札幌医科大学教授だった熊本悦明先生は「男は女より短命か テストステロン低下症がが引き起こす男の動脈硬化・メタボリック症候群」という書籍を2013年に出版しています。(※熊本先生、私の高校の大先輩であり、日本における男性のホルモン関連研究の元祖であり、私が無条件で服従する数少ない大御所)。

現在世界中を厄介な感染症が席巻していますが、男性ホルモン(プロっぽくいうとアンドロゲン「androgen」)の一種類であるテストステロン(testosterone)の値が高いと、この感染症に感染しても重症化しないとの医学論文があります。

テストステロンと感染症の関連性⋯重症化しにくい説

JAMAにこんな論文が掲載されました。

JAMA  感染症の重症化リスクとテストステロンの関係

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2780135

この論文の内容はテストステロンの値が低いと感染した場合に重症化しやすい、との結論になっています。

JAMAという一流医学専門誌に掲載された論文ですから信頼度は高いものと一般的には解釈されています。

逆にテストステロンが低いと感染しにくい、との論文もあります。

泌尿器科領域のがん治療で男性ホルモンを低下させるものがあり、アンドロゲン遮断療法(androgen deprivation therapy略して「ADT」)と呼ばれています。

このADTを行なっている患者さんの場合、世界中に蔓延している感染症に罹りにくいとの論文が存在します。

アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者は感染しにくい

https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534%2820%2939797-0/fulltext

近年、男性の更年期障害 (Late onset hypogonadism symdrome,略して「LOH」)が注目されています。なんとなーく体調が悪い、疲れが取れない、頭の中が整理できないといった今までは心療内科医の領域とされた症状を私達泌尿器科医が診察・治療する機会が増えています。

詳しくは「男性更年期障害(LOH症候群)とは」をどーぞ。

ADTは男性ホルモンつまりテストステロンが前立腺がんに及ぼす悪い影響を遮断するための治療であり、当然その患者さんのテストステロンの値は低下します。ということは、一番はじめにお伝えしたテストステロンの値が低いと感染しちゃうと重症化しやすい説となんとなーく矛盾しているように思われませんか?

あれ、あれっ、ADTを受けていても感染リスクとは関係ない説もあるぞ

ちょっと前にテストステロンを遮断する治療を受けている患者さんは感染しにくいとの医学論文があると伝えたのに、舌の根も乾かぬうち今度は、テストステロンの値と感染リスクは関係ねーよとの結論に至った医学論文があります。

ADTは前立腺癌の男性の感染リスクを下げない

Urology Times Journal, Vol 49 No 02, Volume 49, Issue 02

感染症と男性ホルモンの関係のまとめ

LOHでテストステロン補充療法を行うときに前もって前立腺がんの腫瘍マーカーを調べる必要があります。これを端折って前立腺がんの初期にテストステロン補充療法を行うと前立腺がんの栄養を補充することになってしまいかなりリスキーなことであることが今では常識となっています。

前立腺がんの腫瘍マーカーについては「当院における前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAに対する考え方」をお読み下さい。

しかーし、前立腺がんがかなり進行してしまっている場合には逆にテストステロンを定期的に補充することによって生存期間が長くなることも最近の研究ではわかってきています。

  • テストステロンの値が低いと感染しやすい。
  • テストステロンの値と感染のしやすさは関係ない。

矛盾する研究結果が現時点では存在します。そして、

テストステロンの値が低いと感染した場合に重症化しやすい。

との論文が出てきているのです。もしも感染した場合にテストステロン補充療法を行えば重症化を防ぐこともできるんじゃないのか、と考えることももできます。このテストステロン高けりゃ感染しても大丈夫だぞ説もそのうちに否定する内容の論文が登場することが大いに予想されます。

結論:現段階でどんどこ拡大している病気について、「エビデンスがあります!!」と言っている人がいたとしても、そのエビデンスが多くの人達の目に晒されて検証されているのかをじっくり吟味しましょう。新説は覆されることは医学では珍しいことではありませんので。

画期的な医学情報が大々的メディアが取り上げたとしても、可能な限り自分で一次ソースを確認して、できればそのトピックスとは逆の結果になっている情報も探してみましょう⋯特に医療関係者はね

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

詳しいプロフィール

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