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血糖値、血圧を下げる「酢タマネギ+納豆」。なんで混ぜなきゃいけないの?

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健康に良さそうな食べ物・食材は気になります。酢もタマネギも納豆もカラダに良さそうなイメージが強い食べ物ですよね。

カラダによさそうだからといって、なんでもかんでも混ぜれば効果は高まるのでしょうか?

「医師が教える健康な食事」と言っても、n=1じゃあ説得力無いぞ

私のような不健康を絵に書いたような生活をする医師がいる一方で、ストイックに健康的な生活を送る医師もいます。健康的な生活を送っている医師は使命感なのか余計なお世話的に自分が実践している健康法を人々に伝授したくなるようです。

例えばこのような記事を目にしました。

医師が教える「酢タマネギ納豆に血流改善、高血圧抑制の効果」女性自身 2021/06/23

酢タマネギ納豆の血流改善、高血圧抑制の効果

https://jisin.jp/life/health/1991749/

酢タマネギ+納豆の驚くべき効果(笑)は、

  • 血糖値が下がる
  • 血圧が下がる
  • 血液がサラサラになる
  • 便秘が改善する
  • ダイエット効果

という、心の底から驚くべき効果があり、誰もが魅了されてしまうカラダに良い食材のようですねえ(棒)。

これらの食材は本当にカラダに良く、混ぜ合わせればその効果はさらに増強されるものなんでしょうか?薬だってポリファーマシーは控えるべきだと思うんですけどねえ・・・。

やっぱり自分の経験から導き出された、n=1の健康法じゃん❗

エビデンス、エビデンスとエビデンスの安売り状態が気になる今日このごろです。一時期私もネット上ではエビデンス棒を振り回すエビデンス警察的な扱いをされたこともあったっけなあ。エビデンスと言ってもエビデンスにも信頼度の高低があります。

となりのおばちゃんが言ってた健康法より、お医者さんが言っていた、あるいは実践している健康法の方が若干エビデンスレベルは高いように一般的には受け止められますよね。

「酢タマネギ+納豆」健康法について創始者兼実践者と思われるお医者さんはつぎのように述べています。

私は20年来、酢タマネギを毎日食べ続けて、その健康効果を広めてきました。酢タマネギは血糖値を下げるだけでなく、血圧を下げ、しかも血管をしなやかにする効果があり、まさに血液サラサラ食材なんですよ。あるとき、酢を入れて納豆を食べると血糖値を下げると聞き、これは合わせて食べればいいじゃないかと発案

医師が教える「酢タマネギ納豆に血流改善、高血圧抑制の効果」

この発言の真偽を確かめることは可能なのでしょうか?なんども私のブログ記事で取り上げている「医学は科学ではない」との批判をもろに浴びてしまう言質なんじゃないでしょうか?

お医者さんが「私が20年来実践している」と言っても第三者の検証は不可能

酢タマネギをこのお医者さんは20年毎日食べ続けているそ~です。本当に20年間毎日食べ続けているのでしょうか?息抜きに家族で出かけた温泉旅館でも家から持参した酢タマネギを食べていたの?海外に行ったとき、どのような方法で酢タマネギを運搬し、ホテルの朝食を食べるときも酢タマネギを食べていたの?なんて感じの疑問が湧き出てきます。

小学生時代にがほしい文房具があるときに、「クラスのみんなが持っているから買ってよ」と駄々をこねて、「みんなってクラスの何人なのよ」と親にからかわれたことを思い出しました。

少なくとも「毎日食べ続けて」を第三者によって検証することは無理だと思うのですけど。

自分が良いと思ったことをついつい第三者にすすめてしまう人間の性

健康に対してのアドバイスは隣のおばさんやおじさんのものより、かかりつけ医のアドバイスのほうが信頼度は当然高まりますよね。このお医者さんは酢タマネギによって血糖値が下がり、血圧も下がり、さらには血管がしなやかにする効果や血液サラサラ効果を唱えています。

タマネギには、血管内で血が固まるのを防ぎ、血管を広げて血流をよくする硫化アリルやケルセチンが豊富。そのうえ、血中の余分な糖や脂質を減らす効果も知られているんです

医師が教える「酢タマネギ納豆に血流改善、高血圧抑制の効果」

硫化アリル(Diallyl Sulfide)はタマネギを切った時に涙が出ちゃう原因物質として知られています。硫化アリルはわさびやラッキョウにも含まれているけど、大量摂取のためか嗜好のためか、このお医者さんはとにかくタマネギを勧めていることに関しては深追いしません。

このお医者さんが食している酢タマネギに含まれる硫化アリルの総量がどのくらいになるのか不明ながら、「Diallyl Sulfide: Potential Use in Novel Therapeutic Interventions in Alcohol, Drugs, and Disease Mediated Cellular Toxicity by Targeting Cytochrome P450 2E1」[1](PMID: 26264202)という医学論文は硫化アリルの危険性を伝えています。

However, DAS has shown appreciable allergic reactions and toxicity, as they can also affect normal cells. (しかしながら、DASは正常な細胞にも影響を与えるため、アレルギー反応や毒性が認められています。)

PMID: 26264202

と書かれていますので、薬を同じように効果があればそれなりの副作用もあるでしょうし、服用時じゃなかった摂取量も守る必要がありそうですね。

納豆をトッピングする理由があるのか?

酢タマネギが血糖を下げ、血圧を下げる効果があるとしましょう。でも私に理解できないのは、なんで納豆を混ぜ込む必然性が出てきちゃったのか、です。

あるとき、酢を入れて納豆を食べると血糖値を下げると聞き

医師が教える「酢タマネギ納豆に血流改善、高血圧抑制の効果」

と、このお医者さんは語っています。誰に聞いたのか、血糖値を下げる効果を医師なんだから論文ベースで確認したのかなんてこともかなり気にはなります。

納豆に含まれるナットウキナーゼはたしかに血液が固まることを防ぐ効果があります。でもさあ、納豆に含まれるナットウキナーゼが納豆を食べてことによって体内に吸収されるの???ナットウキナーゼはその名前から理解できるように酵素の一種類です。いままで繰り返しブログ記事にしてきましたが、食物に含まれる酵素がそのまま腸管で吸収されて血液内に入り混んで、血液をサラサラにする効果を発揮することはありえません。

【悲報】納豆は脳梗塞の予防になる⁉⋯えっ、エビデンスないじゃん‼

【悲報】納豆は脳梗塞の予防になる⁉⋯えっ、エビデンスないじゃん‼

血流をサラサラにして脳卒中対策している中高年の方の多くは納豆を積極的にとっていらっしゃると思われます。納豆は健康食品であることは間違いないとして本当に脳梗塞の予防になるのか調べてみたところ、なんとエビデンスがないことがわかりびっくりしました。納豆あるいはナットウキナーゼが血液をサラサラにすることは明確になっていません。

納豆は美味しいから食べる、それでいいんじゃないのと思ってしまう私がまちがっているのでしょうか?

納豆に多くの健康効果を期待するのは、納豆も迷惑がっているかも(笑)。

納豆に多くの健康効果を期待するのは、納豆も迷惑がっているかも(笑)。

昔から納豆は体に良い食品として日本人に愛されてきました。たぶん、納豆も自分の特徴ある香りにコンプレックスというか負い目を感じていて、そんな自分を愛する納豆LOVEの人々に感謝の気持ちを伝えるため、一生懸命納豆なりに健康面でプラスになる効果を実力以上に頑張って発揮する努力をしていたのではないでしょうか?

結論:「酢+タマネギ+納豆」のトリプル効果を期待するなら混ぜること無いじゃん❗

酢に血管を広げる効果があり、タマネギに血糖を下げる効果があり、納豆に血液をサラサラ似する効果があったとしても、なぜ「酢タマネギ納豆」という一品に仕上げる必然性があるのか?タマネギはタマネギ、納豆は納豆、そして味付けとして酢を垂らす食べ方ではこのお医者さんが伝えるところの健康効果は期待できないのでしょうか?

薬は飲み合わせによって思わぬ副作用が起きてしまう可能性があります。

当院でも近いうちに個別のワクチン接種を開始するのですけど、

コロナワクチン問診票

とありますので「酢タマネギ+納豆」を摂取していますか?を追記したほうがいいのか悩んでしまう、医師が教える「タマネギと酢と納豆のトリプル血液サラサラ効果」問題でした。

引用文献

  1. Rao PS, Midde NM, Miller DD, Chauhan S, Kumar A, Kumar S. Diallyl Sulfide: Potential Use in Novel Therapeutic Interventions in Alcohol, Drugs, and Disease Mediated Cellular Toxicity by Targeting Cytochrome P450 2E1. Curr Drug Metab. 2015;16(6):486-503. doi: 10.2174/1389200216666150812123554. PMID: 26264202; PMCID: PMC4663692.

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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