【文春vs現代】線虫がん検査は有用なのか、ポンコツなのか❓雑で盛る傾向があるのは間違い無いけどね。

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巣ごもりムードが高まっているため「がん検診のひとつ」として個人的に期待していたのがN-NOSEの線虫がん検査。定点観測をしていたところ新たなプレスリリースがありました。

雑すぎるHIROTSUバイオサイエンスのプレスリリース

プレスリリース「線虫がん検査 N-NOSE の技術検証および再現性の確認について」

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)や複数の海外研究機関が、技術的効果の検証、また技術の再現に取り組む研究 「追試」を行いました。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構が線虫がん検査の追試を行なったことを伝えていますよね。つまり線虫がん検査に関してその感度や特異度、さらに再現性があるかということが文春砲が報じる以前から私は気にしていたのです。その再検証を国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構が行なったとなると、線虫がん検査はこれからいわゆるリキッドバイオプシーの一つとしてめちゃくちゃ有用性が高いものになることが大いに期待できるんじゃないかなあ。

ところがここの関連施設は私の専門とする前立腺がんに対して重粒子線がん治療をおこなっているので、たまーにウェブサイトを見たりするので、椅子から転げ落ちてしまったんだな。

前掲のHIROTSUバイオサイエンスのニュースは2021年12月31日現在では削除されたのか、見ることはできない様子。以前スクショしたものを掲載しました。

なんじゃこりゃ!?「検証しました」とHIROTSUバイオサイエンス。「いやいや検証どころか関わったことないよ」とQST。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、長いから略称のQST)のウェブサイトでは、線虫がん検査「N-NOSE」に関してこのような怒りに溢れた声明が掲載されています。

HIROTSUバイオサイエンスのニュース記事についてQSTの声明

https://www.qst.go.jp/soshiki/4/20211224.html
  • QSTはHIROTSUバイオサイエンスの線虫がん検査には関わっていないよ!
  • そもそもQSTはN-NOSEの線虫がん検査の技術に関して知るわけないじゃん!!
  •  
  • だーかーらー、QSTは追試なんてしていないよ!!!

QSTはN-NOSEの線虫がん検査に関して一切関知していないの、キーっ(怒)

ってことですよね。なぜHIROTSUバイオサイエンスは線虫がん検査が第三者研究機関によって検証され、科学的根拠を持って信頼性が証明されている、なんてことを言い出したんでしょうか。線虫がん検査に対して若干ながら期待をしていた私はかなり不信感を抱いてしまいます。

文春砲VS現代ビジネス

週刊文春が取り上げる、やりすぎ感も時々あるスキャンダル記事は、「文春砲」と呼ばれて久しいです。私は先日文春が線虫の件を取り上げたため、このようなブログ記事を書きました。

【文春砲】「尿一滴でわかる線虫がんを使ったがん検査」の問題点

【文春砲】「尿一滴でわかる線虫がんを使ったがん検査」の問題点

がんの予防に効果あるとすることをいくら実践してもかかる人はかかります。がんになっていないことの安心感と早期発見のためには健診・検査しかないわけですが、尿一滴で精度の高いがん検査が本当に可能なら多くの人が飛びつくのは必至ですし、医療する側も大助かりなわけですが、果たして本当にそんな検査は可能なのでしょうか?

画期的ながん検査となりうる可能性を秘めた線虫くんたち期待をしつつ、文春砲が報じる内容が正しいものであるのなら以前から定点観測していた線虫くんたちを懲らしめないと。まるで恋心を抱いていた相手が二面性のある大嘘つきだったかのようなお手紙を以前その付き合っていた人から頂いたかのような気持ちになってしまいました。

私は文春砲記事の元従業員の証言の真偽に関しては知りようがない立場ので、広津氏と仲違いため感情的になった内容である可能性もあるし(辞めた従業員が会社に対して悪口を言いがちなことは良くあること)、現代ビジネスが週刊文春の記事のN-NOSEを受けて陰性判定されたのに実は乳がんだったと方の証言も感度は100%じゃないから仕方ないじゃん、とも解釈することもできます。

現代ビジネスの記事を書いた医療ジャーナリストさんは私の母校である横浜市立大学のペインクリニック内科と共同で仕事をしている実績がある方であることは確認しています。

&慢性痛~知っておきたい慢性痛のホント(横浜市立大学ペインクリニック内科との協働制作

https://diamond.jp/ud/authors/58abbd727765611bd0e60400

「&」???「協働」???とこちらも雑!!(笑)

そもそも早期発見をすればがんは治るのか?

日本で国が奨励しているがん検診は「胃がん」「子宮頸がん」「肺がん」「乳がん」「大腸がん」と、たったの5種類のがんなのです。私が専門としている前立腺がんに関しては、国と日本泌尿器科学会の考え方に相違があることは以前お伝えしました。

「前立腺がん検診」有効、有効じゃない論争に幕?意外な結果が出ました❗

「前立腺がん検診」有効、有効じゃない論争に幕?意外な結果が出ました❗

日本泌尿器科学会は国民の健康増進に寄与するべく、前立腺がん検診を適切に普及・推進する立場ですが、厚生省はPSAによる前立腺がん検診の有効性について異を唱えています。さらにヨーロッパは賛成の立場なのにアメリカでは反対だったりもします。複雑そうに見えて意外とシンプルなこの構造について解説します。

がん検診の目的はがんを早期発見して治療することによって亡くなる方を減らすことです。人間ドックなどで実施される腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査によってがんを早期発見することの有用性というか有効性は乏しいと解釈することが一般的です。

検診を受ける方の身体に全く負担を与えない尿検査によってがんが見つかる手法は素晴らしいものであったとしても、早期発見をしても実際には治療する必要性の無いがんを見つけてしまうリスクが伴うことにしては、PSA関連で複数回書いてきましたし、福島の原発事故後に行われた甲状腺がんを見つけるためのエコー検査の危うさもお伝えしました。

なぜ子供への甲状腺エコー検査が批判されるのか?その理由はコレ❗

なぜ子供への甲状腺エコー検査が批判されるのか?その理由はコレ❗

福島原発事故以降、放射性物質による健康被害を心配する人に寄り添っているようにみえて実は全然寄り添っていない活動が蔓延っています。そのひとつにエコーを使った子供に対する甲状腺検査があります。普通の人は何が悪いの?と思うかもしれません。子供への甲状腺検査は過剰診断・過剰治療の温床になるのです。その理由を説明します。

がん検診において有用性が認められているのは、胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がんの5種類の癌のみであり、必要の無いがん検査は過剰診断の温床となる可能性は多くの医師によって指摘されています。

占いやおみくじのように線虫がん検査を行うメリットとデメリットをよーく考えてみてくださいね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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