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飲尿療法に代表される尿療法は、本当に健康に良いの?さまざまな病気を治すの?泌尿器科医が解説します。

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鳴りを潜めたと思われていた「尿療法」が地味に浸透しているようです。

自分のおしっこを飲むことによって健康を維持したり、病気を治すと信じてられている尿療法、果たして本当に効果があるのでしょうか?

私の専門は泌尿器科なので尿にはちょっと煩いです(笑)。

芸能人でも実行している人が多いらしい、「尿療法」

「飲尿健康法」とか「尿療法」とか呼ばれている、つまり自分のおしっこを飲む健康法をいまだに実行している人達がいるそうです。

私は某医療機関の院長先生がこの尿療法を信奉していたために、テレビ取材時に我慢しておしっこを飲む風景を撮らされた看護師さんにお話を以前お聞きしたことがあります。その感想は、「尿を飲む姿が放送されてしまったので、病気になるわけにはいかない」でした(笑)。

今まならパワハラ認定確実な尿療法ですが、本当に健康に良く、なんらかの病気を治してしまうのであれば尿療法が再び脚光を浴びても良いとは思います。以前から非常に気になっていたトンデモ系ニセ医学と強く疑っている某なんちゃらしきゲルソン療法をガンガン中高年向け週刊誌で広告している某医師の著作を読んでいたら、まず効果が期待出来ない、なんちゃら式を実践させられた上に尿まで飲むことを推奨されていることに驚き、思わず失禁しそうになった私です。

さらにこのなんちゃら式ゲルソン療法を実践させているお医者さんの著作中の症例写真がこれですから⋯。

インチキCT画像

治療前後のCT、治療前は造影剤を使用して治療後は造影剤を使用していない疑惑発生。

尿療法、確かに論文になっているので信頼度が高い⁉

エビデンスという言葉をよく目にするようになりましたけど、エビデンスがあると言ってもエビデンスにも色々なものがあります。論文になっていようが、学会で発表していようが、特許を取得していていようが、どこかの教授が推薦していようがトンデモ系ニセ医学が混入する余地はガバガバにあります。

CiNii(NII学術情報ナビゲータの略称)では論文を中心とした国内の学術情報を得ることができます。実はこのデータベースに「尿療法」に関する学術情報が掲載されているのです。

画像

タイトルから予想して、一般書籍であり学術的な専門誌に掲載された論文ではありませんね。ちなみに拙著“意識高い系”がハマるニセ医学が危ない!もCiNiiに掲載されています(笑)。

尿療法を信奉している人は、「自分のおしっこを飲む健康法は本にもなっているし、国立情報学研究所(National Institute of Informatics、略してNII)のデータベースにもあるのよ〜」と虎の意を借る狐的針小棒大式の説明をすることが予想されます。

尿療法に対する真っ当な医学の現時点での評価

現在、一般的に両論併記が求められているそーです。まあ、尿療法に対する効果に対して両論併記もないじゃんとあしらっていると、将来的にザマーミロと言われかねないので、尿療法の効果としてプラセボレベルでは効果がある可能性がある、とひとまず結論してきます。

両論併記を意識して尿療法が効果が無いことを示す医学論文をベースとしたデータ類は多数用意してはあるのですが、長文になることを避けたいので簡単に説明しますね。

まず、尿療法が健康に良い、なんらかの病気を治した、との症例は論文であろうと一般書籍であろうと、ほとんどが個人の体験談であり、第三者がその効果を再検証することが不可能な状況です。つまり科学的に考察をすることが出来ないのです。UFOを目撃したことがある人には個人的にぜひお会いして様子を伺いたいと常々考えている私ですが、お会いできてもそれはUFOを目撃したとの個人的体験を言葉で聞くだけであり検証をすることが出来ないのと同じです。

もしもUFOが突然夜空に出現したとしたら、目撃者はもっと多数のはずなんじゃないかな。中には宇宙人に会ったと証言する人もいるけど、なぜか皆さん絵心が無くて残念。

UFOの画像があったとしても、前掲のCTのようなこともありますしね。となると、尿療法で健康になったり、病気が治った人々をある一定数以上集めた複数の症例が必要になります。さらに本当に尿療法の効果を判定するためには尿と偽薬を使用した研究も必要となりますし、できれば大掛かりなダブルブラインドによる検証も必要となります。

確かに尿には電解質や血栓を溶かすウロキナーゼ(urokinase)や血液を作り出すエリスロポエチン(erythropoietin) が含まれているけど、その量では何も効果は期待出来ないレベル。だからこそ、薬としてウロキナーゼやエリスロポエチンが製造されて点滴薬として日々医療現場で役立っているのです。

もしも尿を点滴したら、多分病気は悪化します。

尿を飲み続けて3年、その効果はこんなもんじゃん❗

「The Sun」という英国の東スポとも呼ばれる新聞があります。このウェブ版でこのような記事を見つけました。

飲尿療法

https://www.thesun.co.uk/news/12572199/man-drinks-seven-pints-pee-every-day-through-eyes-nose-ears/

このオッさん、元気よく自分のおしっこを毎日3~7パイント(2〜4ℓかよ❗)飲んでいるそうです。さらに目、鼻、耳、皮膚にも尿を取り入れていると書かれています。多分、尿を体中に塗りたくっているんでしょうね。

もともと、うつ病の治療のために尿療法を始めたようですが、今ではうつ的な症状を彼からうかがうことはできないくらいに病状は回復しているようです(本当のうつ病であったのかは不明。これがこんな感じの個人の体験による民間療法が第三者の検証が出来ない理由のひとつでもあるんだけどね)。

尿療法、自分で効果を信じてはじめるのは勝手じゃん、でも第三者にはすすめないでね、で終わろうとしたのですが、体中に尿を塗りこめているヘビーユーザーがいるとなると、周囲の方のご迷惑になると思うので、できれば尿療法以外の健康法をお願いしたいと存じます?

おしっこ飲みながらEM菌をばらまきホメオパシーしながら酵素風呂に浸かっちゃうお医者さん。その1

おしっこ飲みながらEM菌をばらまきホメオパシーしながら酵素風呂に浸かっちゃうお医者さん。その1

おしっこを飲むと健康にいいと言われても、本気にする人はほとんどいないはずです。ですが、なぜか信じちゃう人がいます。おしっこが飲めてしまう人というより、身体に良いと思ってしまう根拠はなんなのでしょうか?悲しいことに飲尿療法を薦める医師は存在します。そんな医師が他に薦める治療法ももれなくトンデモです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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