即刻、「無料PCR検査所」の廃止を私が求める理由はこれ‼

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発熱外来対応でクッタクタの日々を送っている医療関係者も多いと思われます。私は朝っぱらにこのようなツイートを目撃して白目になって泡吹く寸前になりました。

PCR等検査無料化事業

無料PCR検査がどれだけ医療の現場に混乱を招いているのかを実際の経験に基づいてご説明します。

そもそも無料PCR検査は感染拡大を抑止しているのか?

新型コロナ感染症に対して、検査を繰り返せば感染拡大を抑止することにならないことは世界中の各国の対策の結果として答えが出ていると考えられます。

しかし、なぜか日本では街中で無料PCR検査所が大賑わいです。私のクリニックでは微力ながら、ボチボチと発熱外来を行なっていてここ数週間、気になって気になって仕方のないのが無料PCR検査所で陽性と判定された方の受診が急増していることです。

無料PCR検査所で陽性と判定されても、ほとんどの検査所は「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER-SYS、ハーシス)に登録することはありませんし、できません。つまり、感染していても厚生労働省及び所轄の保健所に陽性者として認識されないのです。そのため、無料PCR検査所は、「陽性の場合は医療機関を受診してください」と促します。

つまり、無料PCR検査で陽性だったら医療機関を受診する必要がある、ということなのです。

無料PCR検査所を追い求めて街中を彷徨う人々

家族が感染した、会食をした友だちが感染した、感染したような気がするなどの理由で無料PCR検査所で検査を受ける方がいます。念のために検査をする、とのお考えだと思います。濃厚接触の定義として、

マスクをしないで感染者と1メートル以内の距離で15分以上一緒であった

が一番の目安です。

あるいは、以下のような場合が目安となっています。

  • 感染者と同居している
  • 感染者の唾やくしゃみに接触した、あるいは付着したものに触った

このような条件に思い当たるときは東京都の場合は「東京都発熱相談センター」に相談するのが基本的な行動指針です。

都の認可を受けた発熱外来は検査以外に関しては有料です。しかし、無料検査所と勘違いしている方も少なくはないようで、つい最近このようなことを私は経験しました。

【実録】発熱外来24時‼こんな患者さんあるある集

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あちこちに無料のPCR検査やってますという検査所はありますが、あくまでも無症状の人を対象にしたものです。症状がある人は医療機関を受診するのが基本です。医療機関といっても発熱外来をやっていないところが多く、感染が拡大すると発熱外来難民が発生します。なぜ発熱外来が少ないのでしょうか?その理由について考察してみました。

感染したけど、保健所から連絡が無いので発熱外来を受診しました!?

ここ数週間、患者さんの訴えとして、「無料PCR検査所で陽性と言われたけど、保健所から連絡が無いのです」が目立ちます。

そりゃそうですよ、無料PCR検査所のほとんどが検査はやりっぱなしであり、保健所に発生届(HER-SYS)を出しませんから。

中には無料PCR検査を受けたけど、数日経っても結果が届かないので発熱外来を受診した、という方もいます・・・当然、この方々は抗原検査でしっかり陽性だったりします。

結果に納得がいかないので複数の検査所で検査をする!?

ある検査所で検査を受けて、陰性判定が出ました。でも自分はしっかりと濃厚接触していると記憶しているために、他の無料検査所で複数回検査をして、やっと陽性判定が出たために当院の発熱外来を受診した方もいました。

今回流行している新型コロナ感染症のウイルスの特徴として、感染力が強いことが懸念されています。この検査結果に納得がいかなかったと考えた方は感染しているにも関わらず、都内を彷徨っていたことになります・・・って、ことは感染を拡散しているじゃん!!

逆の例もありました。無料PCRの呼び込みに誘導されて、ふらふらとなんの気無しに検査を受けたところ、検査結果は陽性。ひょっとして検査結果は間違いでは無いかと考えて他の無料PCR検査所で検査を受けて、やっぱり陽性判定。やっと納得して、当院の発熱外来を受診して抗原検査で速攻陽性、即時にHER-SYS登録になった症例もありました。

医療機関の負担を軽減して、逼迫状態を防ぐ親心が裏目に出ているのでは?

当院が設置している発熱外来とはそもそもは、2003年のSARS発生及び2009年の新型インフルエンザ流行に備えてのものでした。

今回の新型コロナウイルス感染症は大流行しなかったSARSや新型インフルエンザのようには残念ながらなりませんでした。国や自治体は医療崩壊、医療現場の過負荷を防ぐために無料PCR検査所を設けたと善意に解釈することもできます。

さらにこの施策が医療現場に大ダメージを与えています。

無料検査キット配布のお知らせ

https://tokyo-testkit.jp/

配布された抗原検査キットで陽性と判定された方が都が認可した発熱外来を受診するという流れが実行されれば、医療現場の混乱は回避できる可能性があります。

しかし、正しい運営ができているとは思えません。そもそも、不安心理を抑えるために検査をする、それも無料であることによって検査が濫用されており、発熱外来では一刻も早く感染の有無を判定するために必要な抗原検査キットでさえ供給が制限されてしまい、納品予定が未定となっています。

科学的な理由がない限り、無料PCR検査所は廃止するべきである

ひょっとして感染しちゃったかも、念のために無料PCR検査を受けておきたい、との心理は十分に理解できます。しかし、それは無料である必要があるのでしょうか?政治家や行政の担当者としては、人心の安寧を求めるためには無料検査は必要である、と判断しているのかも知れませんね。

しかし、検査を行うことによって感染拡大を抑え込むことはできなかった事実は繰り返しになりますが、各国の例が示しています。

私はスタッフや入所者を対象として医療機関や高齢者施設でスクリーニング的に抗原検査やPCR検査を行うことに関してはまだまだ議論の余地はあるかと現時点で判断しています。

しかし、どうしても無料PCR検査所の設置意義が見出せないのです。どなたか科学的思考に基づいて無料PCR検査所の必要性をご説明いだだけないでしょうか?

追記:某無料PCR検査所を解説している某医療機関で陽性と判定された方がいました。なぜか保健所から連絡が無いために、当院を受診して抗原検査で陽性であったためHER-SYSにアクセスしたところ、その方は某医療機関から発生届は出ていませんでした。

おまけ:無料PCR会場クラスター発生予防の為に事前にPCRを受けた方が良い可能性あるような気がしないでもないです。まだ保健所は確認していないだろうけど、実は同じ検査所で検査してその場では陰性だったけど、翌日に発症している人もいますぜ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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