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コロナ後遺症?「おしっこの出が悪くなりました」を経験しての感想と考察

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新型コロナ感染症感染症(へんてこな感染症) の蔓延とともに感染後の後遺症についての報道が目立ってきているように感じています。

先日、実際に信じられないような、今まだ聞いたことのない新型コロナ感染症の後遺症を主訴とした患者さんの診察をしました。

最終的に新型コロナ感染症の後遺症と思われた症状の原因は、患者さんの医療に関する認識の緩さと医療サイド、特に医師の不注意だと考えられました。新型コロナ感染後の後遺症と思われる症例の顛末をご紹介します。

おしっこが近いのは新型コロナ感染症の後遺症?

私は泌尿器科を専門として住宅街でクリニックを営んでいます。今回の世の中を騒がせている感染症の疑いのある患者さんもかかりつけ医として対応しています。そんな私のクリニックに、「おしっこが出が悪くなった」ことを主訴として7月に当院を初めて受診した患者さんがいました。

その方は5月中は新型コロナ感染症感染者として、2週間程度他県の病院に入院していたとのこと。患者さん曰く、「おしっこが近くなって、夜中もしょっちゅうおしっこに起きるようになった」が主訴であり、「新型コロナ感染症で入院する前はそんなことは無かった」とのこと。

ちょうどその頃は、メディアが新型コロナ感染症の後遺症について報道を繰り返していた時期です。その患者さん(70才台 男性)も頻尿及夜間頻尿の原因は新型コロナ感染症の後遺症ではないか?と考えていました。私もざっくりと、新型コロナ感染症の後遺症に関しての情報は知っていたのですが、「おしっこの出が悪くなった」は目にしたことがありませんでした 。

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https://www.nippon.com/ja/news/fnn2020072767196/より

こんな感じの後遺症の報道が7月頃は目立ちましたよね。

新型コロナ感染症感染の後遺症は多種多様

なんらかの病気になって後遺症を残すことは少なくありません。一方で退院しても数ヶ月残る症状を後遺症と呼ぶか、後遺症の定義は何か等については今回は触れません。

当時の新型コロナ感染症の後遺症報道の中では、「本当かよ?」と思わざるえないようなものも混入していたとしても、目の前に実際に新型コロナ感染症感染で入院して、無事に退院できても後遺症と考えられる「おしっこの出が悪くなった。」を主訴としている患者さんがいるのです。

既往歴としては高血圧・高脂血症が問診で得ることができました。服用している薬を確認するために、お薬手帳をチェックすると、いわゆる退院処方が記されていて、内容としては高血圧・高脂血症の薬と去痰剤と痛み止めでした。

頻尿の原因を検査してみると⋯

尿検査では白血球も赤血球も認められなく、膀胱炎等の感染症による頻尿では無いとその時点では診断しました。新型コロナ感染症で入院していて、無事退院できたとしても頻尿はひょっとしたら後遺症かもしれませんし、治療中に使用した薬の副作用の可能性もあります。

入院中にどのような治療をしたのかをお尋ねしても、「いやー、入院中はそれどころじゃ無かったよ〜❗」とのこと。勤務先で新型コロナ感染症の濃厚接触者として自宅から遠く離れた職場近くの病院を受診したところ肺炎疑いでその場で入院させられ、PCRで陽性判定されたとのこと(このあたりの時系列、ご本人もあまりよく憶えていないとのことでした)。

入院した病院にどのような治療をしたのかを問い合わせても、その病院はまだまだ新型コロナ感染症患者さんの対応に追われていて、担当医と話をすることはその時点でかないませんでした。

新型コロナ感染症治療後の後遺症の症状で頻尿は見当たらない

7月当時、新型コロナ感染症感染で退院したけど、後遺症で苦しむ人たちのことがテレビで取り上げられていました。多くは強い疲労感とか呼吸困難など、肺炎罹患後に見受けられる症状が主だったと記憶しています。少なくとも「おしっこの出が悪くなった」という後遺症は無かったはずです。

7月当時に私が信頼できるとして目を通していた後遺症に関しての医学論文は「Persistent Symptoms in Patients After Acute へんてこな感染症」(JAMA 2020;324 (6) :603-605. doi:10.1001/jama.2020.12603) です。この論文では87.4%に後遺症と思われる症状が一つはあったこと、特に多いのが倦怠感と呼吸困難であり、一般的な市中肺炎退院後に残る症状と大差は無いと考えられます。しかし退院後の病状観察は重要であると書かれています。

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どこをどう見てもおしっこの出が悪くなったことに伴う症状である「頻尿(pollakiuria)」「夜間頻尿(nocturia)」「排尿困難(dysuria)」あるいは「下部尿路障害(LUTS)」なんて書かれていないよね。

ついに頻尿と新型コロナ感染症感染症の関係が判明

患者さんに以前、つまり入院前に使用していたお薬手帳をお持ちかお尋ねすると家にあるとのこと。当日は処方しないで、翌日におしっこをある程度ためて、膀胱と腎臓と前立腺のエコー検査をすることを伝え、以前使用していたお薬手帳もお持ちいただくようにしました。

翌日エコーをしてみると、「ええっ、前立腺がかなりでっかいじゃん❗」。更にお薬手帳に、「しっかり前立腺肥大症の薬が入院前にしっかり処方されているじゃん❗」という驚きの結果になりました。

患者さんにお尋ねしたところ、そういえば以前おしっこが近いことがあったけど、入院前はほとんど気にならない状態になっていたとのこと。血圧の薬として入院前に処方されていたのが「αブロッカー」と呼ばれる血管を拡張する効果と尿道や前立腺の平滑筋を緩める作用があるものでした。その方のお薬手帳には「血圧の薬」と書かれていたけど、前立腺肥大の薬とは書かれていませんでした。退院処方の血圧の薬はαブロッカーではなく、カルシウム拮抗剤というカテゴリの高血圧の薬。

その後、血圧にあまり影響を及ぼさない前立腺肥大に伴う排尿困難、「おっしこの出が悪くなった」症状を改善する薬を私は処方して現在は新型コロナ感染症の後遺症もなく、おしっこの出も改善しています。

医療に携わるものとしての反省:患者さんの今の主訴だけではなく、既往歴やどのような薬を服用していたかは、どんな時でも患者さんの話だけではなく、前医に情報提供を求めるとともにお薬手帳等で確実に把握するべきである。

患者さんにお願い:薬の服用歴はしっかりとお薬手帳で管理して、医療機関受診時には必ず持参してくださいね。

注意:患者さんにはブログにすることは事前にお伝えしてあります。尚、個人が特定されないように詳細な表現はあえて避けました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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