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「発達障害をオーガニックな食事で改善する」はトンデモさんに操られているのです❗

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発達障害は広く知られるようになったものの、まだまだ研究途上の分野であり、現時点では明確な診断基準はありません。

しかし、メディアでやたらと「食育」との言葉を見かけるようになり、この流れをガッチリ掴んだトンデモさんが跋扈しています。発達障害を食育で治す、あるいは改善するとのニセ医学を主張する医師もいますし、ヘンテコなトンデモ医師に影響された教育者もいます。

「奇跡の食育」シリーズの新刊を入手したので、トンデモ系ニセ医学というような可愛げが全く感じられない食育に関わる怪しい一般書籍の医学的に間違っている点を指摘させていただきます。

発達障害の子供を救う目的で施設を作っても、発達障害の知識があまりにも乏しい保育士さん

発達障害は症状さえも、個人差の大きなものであり、残念ながら明確な原因と治療方法は確立されていないことが医学の大前提です。

さまざまな医学的なアプローチがなされていても、現時点でわかっていることは、

  • 生まれつき脳の発達に障害があることを発達障害と呼ぶ
  • 分類としては自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder、略してASD)、注意欠陥・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder、略してADHD)、学習障害(LD)など
  • 根本的な治療法は確立されていないために、対症療法が現時点でも医学的限界

以上のように真っ当な医師は考えるはずですし、発達障害のお子さんをお持ちの保護者も理解しているはずです(「発達障害時児のアセスメント」愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (2) , 79-86, 2012-03、「発達障害の理解と援助」小児耳鼻咽喉科 32 (3) , 310-316, 2011-12-01 などによる)。

しかし、「奇跡の食育」シリーズの第4弾をお書きになった、保育士である前島由美園長(ゆめの森こども園)氏は良い環境と良い食事で発達障害の救いになると述べています。藁にも縋る思いで、離乳食(補完食)を変えるだけで、障害が治るかもしれない、できることは全部やってみる、というお子様を思う気持ちはよくわかりますが、そこにつけこんだ怪しげなビジネスが多いのもまた現実なのです。

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漫画の転載等は著作権などを侵害する可能性があるので、漫画の最後にある「おわりに」中の言質に触れながらトンデモと呼ぶ可愛さとはかけ離れた大きな勘違いというか知識不足に満ち溢れたこの書籍を手にする危険性をお伝えします。

発達障害の特性は感覚過敏なのか?

前島氏は発達障害の特徴として感覚過敏を挙げています。その中で友達の視線が怖くなったことが原因となる不登校が多い、と述べています。しかし、文部科学省によれば不登校の要因や背景として「不安などの情緒的混乱」「複合的な理由」「無気力」があり、学習障害(LD) や注意欠陥多動性障害(ADHD) なども考慮に入れる必要とされています(「不登校の現状に関する認識」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf)。

前島氏はどのような研究や論文やデータによって、友達の視線が怖いことが原因となる不登校が増加していると述べているのか甚だ疑問です。ひょっとしてご自分の経験談だけで、発達障害と決めつけてそれをご自分が設立した施設で対応しようと試みているのでしょうか?

繰り返します、発達障害の原因はまだ明確には解明されていませんし、診断基準も定まっていません。素人判断あるいは素人診断はかなりリスキーだと心得てくださいませ。

発達障害の原因は遺伝性と言い切ってしまう素人の怖さ

前島氏は発達障害の子供たちの役に立ちたいために、全国の研修会(セミナーっぽいけど)で発達障害の原因は遺伝性としか教えてもらえなかったとのこと。そもそも、出席する研修会のチョイスを間違えている可能性もあります。私が知る限りで発達障害の原因は「遺伝的要因」と「環境的要因」です。

遺伝的要因とは生まれつきの素質や遺伝子の問題、あるいは胎児期の感染症が原因となったもので、先天的なものを意味して、医師であったらそれを「遺伝性」とは言わないはずです。

遺伝性との言葉を使って説明すると、一般の方が受け止めるニュアンスは原因は発達障害児をお持ちの両親から伝わった障害であり、両親を責め立てているようになってしまいます。「発達障害は遺伝である」が決め台詞になっているのかもしれませんね。

しつこいけど繰り返します。発達障害は先天的に脳の機能の一部に障害があることが原因と考えられ、その原因はほとんどが不明です。ご両親の遺伝子が関係する遺伝性の疾患との考え方は一般的ではありません。

オーガニックな社会を築けば発達障害は治るのか?

前島氏をはじめこのヘンテコな本を監修した真弓定夫医師の周囲にはやたらとオーガニックをありがたがる人々が集まってきています。

そもそもこの方達はオーガニックの定義をご存知なのか、と言う素朴な疑問も出てはくるのですけど、今回は端折ります。オーガニック食品を食べることが、なんらかの病気になることを防ぐことを明らかにした医学論文はごくごく一部の病気以外にはありません(真っ当じゃ無い論文にはあるかもね)。さらにオーガニック食品の代表である有機野菜に関してさえ、

有機野菜の品質を慣行栽培野菜と比較した研究例は多いにもかかわらず,国内外を問わず論文となっているものは非常に少ない.

「Current Problems and Future Prospects of Research on the Quality Evaluation of Organic Vegetable」園芸学研究 5 (1) , 1-5, 2006-04-01

なのです。

つまり、前島氏をはじめオーガニック信奉者は化学物質を嫌うがゆえに自然派と呼ばれる一団を作り、病気や非行問題や発達障害を解決する手段として「奇跡の食育シリーズ」をその後も出し続けるのでしょうね。

「食育」は怪しげな雰囲気が充満しているのか?トンデモ案件多発中❗

「食育」は怪しげな雰囲気が充満しているのか?トンデモ案件多発中❗

食育基本法ができたもののその精神・概念を曲解して教育現場で実践する教育者がいます。結果として痛ましい事件が起こってしまっています。子供に好きじゃないものを無理やり食べさせるのは食育でもなければ教育でもありません。給食関連のトンデモ食育を取り上げます。

これは食育で非行問題を解決した学校の先生のお話。

食育を拗らせた幼稚園ではこんなことも。

「冷凍食品禁止❗」幼稚園のお弁当問題を考える⋯食育とは違うんじゃないの??

「冷凍食品禁止❗」幼稚園のお弁当問題を考える⋯食育とは違うんじゃないの??

子供の健康・精神面の問題はすべてママにあると決めつけ、子育て中のママの精神を蝕み追い込む食の評論家(自称)たちがいます。今回取り上げるのは「幼稚園のお弁当冷凍食品禁止令」というトンデモ案件です。定番の食品添加物は危険という非科学的な根拠をベースにしたトンデモ理論についてツッコミをさせていただきます。

私が食育という言葉に敏感に反応してしまう理由はこれ。

お国に擦り寄るトンデモ案件にご注意を❗トンデモを国が推進しているように思われるぞ❗

お国に擦り寄るトンデモ案件にご注意を❗トンデモを国が推進しているように思われるぞ❗

有名人や権力者には多くのいろんな人が集まってきます。「昔の日本は良かった」と懐古する一派による、親学なる子育てのために、親が学ばねばならない、親が変われば、子どもも変わると主張する勢力があります。この親学推進は国が推し進める食育にも絡み、国の後押しがあるかのようなイメージ戦略をとっているように見受けられます。

非常に個人的な意見ですが、「食育」って安倍前政権が残した厄介なムーブメントと受け止めています。

前島氏の夢として障害児の就労支援をすることによって、1人10万円の月収が実現することによって誰もが納税者になることがあるようです。これは間違いなく良いことであるのに、なぜかヘンテコな人々の影響を受けたためにトンデモの道をまっしぐら。前島さん、早く軌道修正をするべきであることに気がついて欲しいです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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