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朝日新聞さま「B型インフルエンザは高熱がでない」はエビデンスがあるのでしょうか?

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毎年風邪のシーズンになると「今年の風邪はのどに来るのよね~」とか「今年の風邪、ほんとうに咳がしつっこくて」的な会話を耳にします。

カルテを見ながら「この患者さん、去年もおんなじこと言ってたけど」なんて思っても「そうですね、風邪のウイルスって100種類以上あるからね」と返答している毎日です。

今シーズン猛威をふるうインフルエンザ、B型は熱が出ないと巷で噂ですけど本当?

この朝日新聞の記事はちょっと待って!

B型インフルエンザは高熱が出ない、そんなエビデンスあるの?

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https://www.asahi.com/articles/ASL28566WL28ULBJ00Z.html

この「インフル患者最多更新 B型流行、高熱出ず気付かぬ例も」と題された記事には以下の記載があります。

B型は高熱が出なかったり、下痢など消化器症状が多かったりすることがあるという。インフルエンザと思わずに学校や職場に行き、感染を広げてしまう恐れがある。

医療情報であるためか慎重を期して、医師の発言として扱ってさらに「多かったりすることがあるという」と断定は避けています。

確かに巷で「今年のインフルエンザはあまり熱がでないよね」「B型インフルエンザって熱がでないらしいから」って言われています。でも、これってエビデンスのある話なの?

A型であろうと、B型であろうと症状に変わりはない、とのエビデンスありますぜ

本年2018年に爆発的にインフルエンザが流行した一つの原因として季節外れのB型インフルエンザの感染拡大があります。通常A型インフルエンザが先行して流行して、ちょっと時期が遅れてからB型インフルエンザが、というパターンが多かったのに、今年はA型B型が同時に感染が拡大しています。

呼吸器科専門ではない当院であっても本年高熱と全身倦怠感の症状の患者さんに対して検査キット使用して確定診断したところ、B型インフルエンザの方が多くて驚いています。呼吸器を専門としない私レベルの町医者としては、A型インフルエンザとB型インフルエンザの臨床症状に違いはないと考えていたのですけど、世の中では「B型インフルエンザは高熱が出ない」と言われていて、さらに朝日新聞が前掲のように記事にしたのですけど⋯

<h3<◎A型だろうとB型だろうと症状に違いはない、ってエビデンスがあります❗それはこれ❗「Clinical Characteristics Are Similar across Type A and B Influenza Virus Infections」(PLoS One. 2015 Sep 1;10 (9) )。PLoS Oneという科学専門誌はメチャクチャ権威あるとは言い切れませんけど、それなりの信頼度はあります。この医学論文ではA型インフルエンザとB型インフルエンザの臨床症状は似通っていて、特徴的な違いは無しとの結論になっています。A型でも高熱が出ない場合もあるし、B型も同様ってことになります。今後、今回のインフルエンザの症状の特徴の研究がおこなわれる可能性もありますが、巷の「今シーズンのB型インフルエンザって熱が出にくいのよね~」は今の段階ではエビデンスなしです。

朝日新聞の記事を書かれた方は医学専門の記者さんでなくても、科学専門の記者さんでなくても簡単なキーワードでこの論文を見つけることができるのにね。

A型であろうと、B型であろうと基本的な治療方法は同じ

A型であろうとB型であろうとインフルエンザに罹ってしまった場合、処方に大きな違いはありません。基本的な治療は対症療法であり、必要に応じてタミフル、リレンザ、イナビルなどの抗インフルエンザ薬を処方します。今ではインフルエンザのウイルスを数分で判定できる検査キットが普及しています。

これを使用する大きな理由は風邪様の症状はインフルエンザが原因なのか、それほど重症化することが無い他のウイルスによるものかを見分けることです。インフルエンザは遺伝子の違いによってA型、B型、C型に分類されています。

検査キットで見分けることができるのはA型とB型。じゃあ、臨床症状に違いがなく、薬にも大きな違いがないインフルエンザをA型、B型と見分ける必要があるのでしょうか、なんでだろう??この件は宿題とさせていただきます。

インフルエンザは空気感染しないよ、って書いちゃいましたけど⋯反省

先日ブログでインフルエンザは空気感染しないよ、と書きました(加湿器はインフルエンザ感染予防に効果があるか?と素朴な疑問)⋯これ猛省しなければなりません。というのもその後、ブログを読んでいただいた方からこんな論文を教えてもらいました。「Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community」(PNAS 2018; published ahead of print January 18)、この医学論文が掲載されたPNASは日本のメディアでは米国科学アカデミー紀要によれば、などの形で報道されることの多い権威ある科学雑誌です。

この研究は呼気中に含まれるインフルエンザウイルスの感染力や量を調べたものであり、いわゆる空気感染の可能性を示唆しています。朝日新聞の記者さんに文句言っている私、ブーメランでした(涙)。

言い訳:私がインフルエンザは空気感染しないよ、ってブログを書いたのは1月20日、PNASに空気感染の可能性があるとの論文が掲載されたのが1月18日。医学情報って日進月歩なんで常に知識をブラッシュアップしなければと猛省いたしました。

追記:2017年2月10日 1:20
ひょっとしてインフルエンザB型の場合、熱が出にくい等の特徴があるエビデンスがあるのかもしれないと、朝日新聞にお尋ねしました。その経緯はこれです → 大流行中のB型インフルエンザ関連記事、朝日新聞に電凸しました❗その結果は⋯

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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