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食事でがんを治す方法は怪しすぎ。健康に良い野菜を食べてもがん治療効果は無い可能性が大。

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がんにならない食生活や食材があっても、がん治療ができる食事や食材はありません。身体に良さそうな野菜を食べても、残念ながら、がんを治すことはできません。がんは治せなくても、精神的なストレスの解放には繋がるかもしれません。それが体調にも影響することはあるでしょう。

世の中にはがんを食べ物で治した、がんと診断されたらこのような食材を積極的に治したという情報が溢れかえっています。しかし、がん治療における標準治療はエリート中のエリートで選びぬかれた治療方法です。いろいろな理由があるとは考えられますが、がんを食事で治すことは不可能です。

体に良いと思われる野菜を食べてもがんを治すことは不可能

がんにならない食事、がんになりにくい食材に関して世界中の医師・研究者が可能性を模索して、それなりに質の高いエビデンスも出てきています。

しかし、人体の仕組みは遺伝子が解明された今でも複雑怪奇であり、生活背景や社会的背景によって、ある人にとってはがん予防効果がある食材であっても他の人にとってやがん発症を防ぐことができないことも多いのです。

疫学という学問は統計学的に処理するために、全体像はわかっても個々にとっては「all or nothing」になってしまいます。

がんと診断されたら、誰でも今までの生活を振り返って、悪い点を改善しようと試みるのは人間としては当然のことです。

なんらかの食材・食事方法によって、がんを治す、がんを治療する、がんを消す、ことを主張する一般書籍が出回っています。

がんを食事で治す、とのニセ医学本は多数

書店にはこのような感じの、食事やサプリメントでがんを治す系の一般書籍が大量に陳列されています。

もちろんウェブサイトでもがんを治す食事法を伝授するものがありますが、食事でがんを治すことは現時点では標準治療とは言えません(これは断言します)。

論文野菜を積極的に食べても、がんの進行には無関係

このような医学論文が発表されました。

「Effect of a Behavioral Intervention to Increase Vegetable Consumption on Cancer Progression Among Men With Early-Stage Prostate Cancer: The MEAL Randomized Clinical Trial.」(PMID: 31935026)の内容を一言でまとめると

野菜を積極的に食べても、がんの進行には無関係

という結果になっています。

がんと診断されても、がんの進行さえ抑える食材は無い

私が専門としている泌尿器科領域のがんで前立腺がんは特殊なものかもしれません。PSA検査(prostate specific antigenの略で前立腺特異抗原という意味)は現時点では前立腺がんを早期発見するための最も有用な検査方法です。

このPSA検査の問題点は臨床上は患者さんの生命に影響を及ぼさない前立腺がんの存在さえ発見してしまうことであり、がん検診の方法として採用することに対しはいまだに賛否両論があります。

もちろん泌尿器的な症状が出ている方にとっては有用な検査方法であることは揺らぎません。

PSAが高値であり、前立腺の針生検によって、病理検査で前立腺がんであると確定診断されても、積極的な治療を必要としない場合があります。

今回の食事でがん治療は効果なし、との結論に至った医学系研究論文は早期発見された前立腺がんの患者さんへの、食事の影響、体に良いと考えられている野菜の摂取とがんの進行に関して調べたのもです。

●対象者は前立腺がんと確定診断された50歳から80歳の478名

●237名に対して、積極的に野菜を食べるように電話で指示した

●野菜は体に良いと考えられているトマトやニンジン(カロチノイドが多いから)やおなじみのブロッコリーなどであった

●追跡調査した期間は24週

●検証方法はランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial 略してRCT)であり、エビデンスの質は高いものであった

結果として

監視療法の対象となった早期の前立腺がん患者さんに

積極的に野菜を食べてもらっても前立腺がんの進行を抑えることはできなかった

との意外な結論になっています。

この結果から、がんを食事療法で治す、と称する医学健康関連情報の怪しさがさらに増した、と私は判断します。

がんと診断された、野菜を食べてもなんの役にも立たない、との考えは間違い

ここで注意が必要です。私が生のトマトが大嫌いで、ブロッコリーも大っ嫌いであることは家族はもちろん古くからの友人、そしてSNSのフォロワーの方もご存知です。だからと言って、好き勝手な食事が健康に良いはずはありません。

例えば、トマトやブロッコリーを毎日の食事に取り入れることは、がん以外の病気のリスクを下げることは多くの研究で深い関係がある、と認められています。

さらに健康的な食生活を送ることは、がん治療に際しての全体の健康状態の向上に役立つと考えられるためには必要です。

ここまでの話を整理します。

●がんにならない食事や食材はあるが、人間の体の仕組みは複雑であるために、この食材さえ食べればがんにならないは間違い。

●がんを治す食材や食事は今のところは残念ながら無い。

●がんと診断されたら、特定の食材・食事に拘らないで治療を受けられる体を作るための食材・食事を摂るべきである。

このように考えられると思います。

がんを治す、と称するサプリメントには特に注意を

サプリメントは医薬品では無いために、がんを治す、との表現を用いた広告やセールスは禁じられています。

しかし、広告を法律に抵触しないように工夫をして、いかにもがんを治すようにユーザーが受け止めるような表現テクニックはかなり巧妙になってます。

がん、特に私たち泌尿器科医も前立腺がんに対してなんらかの良い影響があることを模索していたブロッコリーを原料としたサプリメントがあり、私はこれを猛烈に批判しました。

ブロッコリーから作った特許取得サプリで、がんは治るのか??

ブロッコリーから作った特許取得サプリで、がんは治るのか??

数ある野菜の中で、たびたび健康にすごいいいとしてもてはやされるブロッコリー。ブロッコリー自体になんの罪はないのですが、●●を食べてがん予防・●●食べ続けていたらガンが消えていたといった健康食品詐欺に利用されている模様です。なぜブロッコリーの成分がガンに効くかのように宣伝されるのか検証してみました。

さらに、権威に弱い傾向のある人に対してこのようなメッセージを送りました。

医療業界の権威が薦めるブロッコリーのサプリ⋯本当に効果があるの?

医療業界の権威が薦めるブロッコリーのサプリ⋯本当に効果があるの?

がんと診断されて、通常の精神状態でない人を惑わす手法です。

私はサプリメントに頼ってしまう気持ちも十分理解しています。がんの標準治療を受けていても、標準より上のプレミアム的な治療方法があるのではないかと積極的に医学健康関連情報を収集する気持ちもわかります。

しかし、こんなことさえあるのです。

抗酸化サプリの代表「ビタミンE」、肺がん治療には逆効果の可能性が高い。

抗酸化サプリの代表「ビタミンE」、肺がん治療には逆効果の可能性が高い。

権威ある医学専門誌にビタミンEサプリメントを服用していると肺がんの転移リスクが高まるとの論文が掲載されました。標準医療を拒んで代替医療を選択してビタミン類を摂取、あるいは標準医療を受けながら周囲にすすめられたビタミンEを服用することはがん治療の邪魔をするだけではなく悲劇的な結果になりかねません。

「サプリだから服用していても大丈夫。効果が無くても悪さはしないだろうから」と考える医師も中にはいるはずです。

標準治療は治療の可能性がある薬剤や数多の物質に対して研究に研究を重ねて、勝ち残ったエリート中のエリート治療とお考えください。

ちょっとした思いつきやひょっとして効果があるんじゃないの、との治療方法であっても研究に研究を重ねるうちにほとんどは脱落していくのです(確率的には数千分の1と言われています)。

今回の早期前立腺がんに対する、体に良いと判断して間違い野菜類であってさえ、がんを退治することに絞って考えると効果はありません。

がんを悪化する傾向も認められてはいませんので、治療の際に全体的な健康を維持する効果を狙って野菜を摂取することの意味はあります。

がんと診断されて自分では信頼できる情報を見つけられない、見つけたけど信用できるのか、などにお悩みの方はぜひこのような支援サービスを利用してください。

全国のがん支援センター

「がん相談支援センターを探す」(https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/fTopSoudan?OpenForm)より

食生活に関してはこのような情報があります。

国立がん研究センター「食事でがんは治せない」

国立がん研究センター がん情報サービス「食事と栄養のヒント」(https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/hikkei_03-02-02.html)より

がんに関する不確かな情報、効果のない治療法、不安を煽るだけの情報が一般書籍やネット上に多数存在します。くれぐれもご注意いだだけるようお願いいたします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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