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医学情報は両論併記するべきか?たとえば「糖質制限ダイエット」

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メディアは両論併記するべきである、が常識となっています。しかし、医学健康関連記事の場合にも両論併記する必要はあるのでしょうか?

医師の間で論争のある、「糖質制限ダイエット」に関して私も参入したことがあります。「お医者さんによって、言っていることが違う〜❗」との患者さんの声を聞くことも少なくはありません。

医療における両論併記問題について少々考察してみます。

医学は科学ではない、ゆえに両論併記も許される?

いままで複数回引用してきた哲学者カール・ポパー(Karl Raimund Poppe)が「医学は科学ではない」と語ったとされています(原典は未確認)。カール・ポパーが言いたかったことは医学は反証可能が困難な学問であり、科学は反証が可能でなくてはいけない、だから「医学は科学ではない」と解釈されています。

医学は理系と考えられますので、科学じゃないと言われたら町のお医者さんから、基礎の研究者まで、「君たちがやっていることは科学じゃないよ〜っと!」と言われたら自分たちは何をやっているのかと自問自答に苦しむはずです。

一時期ブームになり、いまでも数々の脱落者を出しながらもそれなりに支持されているダイエット方法として「糖質制限ダイエット」があります。

糖質制限ダイエットに批判的な医師と糖質制限を推奨する医師がいたら混乱するのはユーザーというか患者さんです。

糖質制限を推奨しない医師たちの考え方

かなり以前、2013年に私はこのようなブログ記事を書きました。

【結論】糖質制限ダイエットは死亡リスクが高まります

【結論】糖質制限ダイエットは死亡リスクが高まります

炭水化物を抜く糖質制限ダイエットがブームになっていますが、糖質制限ダイエットは糖尿病でない人の死亡するリスクを高めます。一部の有名人の極端な食生活を真似しないでください。人にはそれぞれ適切な食事があります。糖質制限のリスクはすでにアメリカで報告されています。炭水化物は人間が生きていく上で必須の栄養素です。

その後、津川友介医師が書いて2018年にベストセラーになった「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」では、糖質制限ダイエットでは総論的には否定的な記述と私は解釈しつつ、多くの読者が混乱した「白い炭水化物はカラダに悪く、茶色い炭水化物は良い」といった表現がありました。

そこで私はこのように解釈しました(津川先生としては迷惑だったかもしれないけどね)。

https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/1203/

そんなこんなの津川友介先生がこのような記事を書いていることに気が付きました。

「糖質制限ダイエット」を勧めない理由

https://toyokeizai.net/articles/-/429882

一方で、「いやいや、糖質制限ダイエットは体重も減るし、カラダにもいいんだよ」と主張する書籍も多数あります。医学における両論併記が今回のテーマですから、そちらのご意見も見てみましょう。

糖質制限ダイエットは老化防止にも効果がある?

この記事を書いた方が医師ではないからダメ、とは考えません。医師でもダメな人もいなくはないですからね。

ライターさんは牧田善二医師の大ベストセラーである2017年に出版された「医者が教える食事術 最強の教科書」や「医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70」に基づいて記事を書いています。

ラーメンのスープを全部飲んでも太らない理由として、

インタビューのために牧田先生を訪問した際、私の姿をひとめ見て「実践して、本当にダイエットの効果が出ている、『生きた証拠』ですね」と喜んでいただけたのはうれしかった。確かに、減量には成功しているし、そのために別段不健康になっているわけでもない。

https://diamond.jp/articles/-/214577?page=2

この場合はあくまでn=1(nは母数である研究対象者の数を示すもので、サンプルサイズと統計学では呼ばれています)。お客様の個人的感想レベルになってしまいます。だからカール・ポパーに医学はいじめられちゃうんじゃん。

牧田医師はAGE(Advanced Glycation End Products)と糖質の関係から健康や老化をアプローチしています。。それをこのライターさんは

AGEは身体で作られる以外に、食品にも含まれ、特に高温で調理したものに多い

だから高温で調理していないものならカラダに良いと解釈しているようですが、そもそも食べ物のAGEが腸管から吸収されて体内を駆け巡るのでしょうか?といった疑問が出てきます。

糖質ダイエット推進派の医師をもうひとりご紹介

権威のない私と権威のある津川先生の2人は糖質制限ダイエットはカラダに良くないよ派。牧田先生は糖質制限ダイエットはカラダに良いよ派。2対1はよろしくないので、最近見かけた糖質制限ダイエット推進派の医師でこんな方がいます。

糖質の教科書

残念ながらこの本は購入していないし、たぶん購入する予定も無いのでネット情報から、もうひとりの糖質制限ダイエット推進派医師の主張を探ってみます。

前川医師は糖質制限による肥満治療を1000人以上に行い、100%の人を減量に導いてきました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000029007.html

えーっと、これはあくまでこの医師の体験談であり、統計学的にはn=1です。1000人以上の肥満の人たちに対して100%ダイエットに成功したと語っても、だーれも再検証できません。サンプルサイズが小さい上に、反証不可能です。

糖質制限ダイエットに対する現時点でわかっていること

2018年にこんなブログ記事を書きました。

賛否両論の糖質制限ダイエット論争に幕はちょっと早すぎるような⋯。

賛否両論の糖質制限ダイエット論争に幕はちょっと早すぎるような⋯。

糖質制限ダイエットに関して両論併記するとしたら、

糖質制限ダイエットは寿命を短くする可能性があるけど、カラダの調子は良くなって体重は減るし、長寿になる可能性もあるよ!

と、いった支離滅裂なことになってしまうのです。それゆえ、「先生によって言っていることが違う❗」と患者さんに指摘されるという無限ループが日々の診療現場では生じています。

この時期、厄介かつヘンテコな感染症に対する予防接種に関しても諸説入り乱れています(まあ、ヘンテコな意見は普通に考えればヘンテコなことは十分理解できるはずなんだけどね)。医学に関して研究レベルで両論併記はありでも、臨床となるとやはりガイドラインに則った標準医療に基づいた標準治療を選択するのが正解だと判断して良いと考えています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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